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目が覚めたら異世界でした  作者: 弥永昶
プロローグ
2/8

夜明けも日暮れもない1日

たぶん?一夜明けた朝…か昼あたり、サムサという謎の声の主を頼りに周辺を散策する事にした。相変わらず時計の針はくるくると回り続けている。見ているだけで吐き気をもよおすほどに。

「サムサー。いるかー?」

「はい。なんでございましょう?」

「腹減ったから朝メシにしたいんだけど?」

「かしこまりました。それではこちらをどうぞ」

サムサがそう言うと、まるで魔法みたいなキラキラしたモヤのようなものが目の前に広がり、そのもやがすーっと消えると惣菜パンが出てきた。

「…え、まさかの惣菜パン?」

「何かご不便でも?」

「いや〜…なんつーか…全然ファンタジー感なくね?」

「何を仰いますか!異世界とて惣菜パンくらいありますよ!!」

そうサムサに怒鳴られたが、焼きそばパンって、日本だけなのでは?と思ってしまった。


俺は少し考え込んだ。やはり人間というものは満腹感を得る事で思考力が回復するようだ。幸い、スマートフォンのメモ機能が使えるので頭の中を整理するのに役立ちそうだ。

(まずこれまでの事を整理しよう。目が覚めたらドラゴンが上空を飛んでいた。そして大きな木のそばで目覚めた。何故か昼夜が無い。時計は使えない。異世界っぽさがある…。そして謎の声の主、サムサ。さっぱり分からん!)

焼きそばパンをむしゃむしゃと頬張(ほおば)りながらサムサに聞いてみた。

「にぇーふぁむふぁー」

「え、なんです?何語ですかソレ。会話する気ありますか?」

何故か小馬鹿にされたような気がしてきたので口の中にあるものを無くしてから再び聞いてみた。

「サムサ、この世界について詳しく聞かせてほしい」

「良いでしょう」

そう言うとサムサは語り始めた。

「ここは、狭間の世界。まぁある種の異世界の様なものですね。ここで私はあなた方の世界でいう時の番人のような事をしています。」

「狭間の…世界」

「あなたが降りたと感じている事象は全て錯覚であり、どちらかと言うと昇ってきていたんです」

全く訳の分からない事を言う。確かに階段を降りていた。この目でしっかりと見ている。

「一体何を言ってんだ?遺跡っぽい建物をちゃんと降りたぞ?」

即座に反論したが、それを踏まえた上で更に説明が続く。

「はい。だから狭間の世界なのですよ。現に時の流れを掴めないでいるでしょう?」

「ああ…確かに時計の針がくるくる回りっぱなしだけどよ…」

「はい。この世界では、あなた方の世界でいう時間という概念がこちらの世界と少し異なります」

「それはどういう事だ?」

何故か妙な悪寒が走った。どうやら想像していた異世界とはまるで違うらしい。

「そうですね…例えば、この狭間の世界にはそれぞれの国があり、繋がっています。あなた方の世界規準の単位で申し上げるならば、リディア帝国では1日を48時間としています」

「は!?48時間!!?」

「ええ。大国ヴァルギスタス王国は24と1/2が1日とされており、つまり36時間を1日としています」

「うわ…何ソレ…辛すぎる」

「逆に聖ヒューリアス皇国は1日が約12時間ほどですね。あとは…あ!そうそう、小国もありまして、ゼトア公国はあなた方の世界に最も近い1日22時間です。あと残るはヴァンディミオン王国ですが、こちらも1日20時間と比較的近いかと」

「うわー…」

(マジかよ…好きな事に時間を割けるならまだしも労働とかにほとんどの時間を使われたら死ねるぞ!?)

「これがこの狭間の世界に通ずる5つの大陸からなら国ですね」

俺はふと思った。この話の流れからしてどこかの国にとばされるのではないかと。

「おい!まさか俺をこの中のどれかの国に飛ばそうとしてんじゃねーのか?」

「…」

どうやら直感は見事に命中したようだ。

「だまんじゃねー!クソが!!俺を早く元の世界に返せ!!!」

「それは出来ません」

「なっ!!?」

「あなたはどなたかに呼ばれたのです」

「呼ばれた?誰にだよ」

「それは私にも分かりかねます。ですがご安心を!あなたは生死を彷徨っているにすぎません。」

「ん?死んでないのか?」

「ええ。」

「…ふーっ。ちなみにさっき言ってた降りてるのに昇ってるってどういう事なんだ?」

溜め息一つついたあとに疑問をぶつけてみた。

「それは…上下左右が無いということになりますかね〜?」

(上下左右が無い?それは一体どういう事だ!?現に階段を確実に降りたんだぞ!??)

モヤモヤとしてきて考え込んでいたらサムサがそれに答えるように話し始めた。

「あなた方の世界での概念とこちらの概念には異なる点がございます。それは概念です。」

「概念?」

「あなた方の世界では既に確立されている事柄ですが、果たしてそれは最初からあったのでしょうか?いえ、違います。貴方が生まれる前の先人方…所謂祖先ですね。そういった方々が少しずつ探して、見つけてきた…そしてそれらを科学や何らかの学問としている」

「はぁ…まぁ…そうかもな」

(あんま勉強とかしてないからわからん…)

「そしてそういった概念にはどこの世界にも存在しているのです」

「おお…なるほど?」

「本当にご理解いただけてます?ちなみに24時間換算で申し上げるならば、今は大体夜ですよ?」

「は?え!?どゆこと!??」

俺は更に混乱していくが、そんな事を気にせず、そこから更にサムサは、概念や各国についての要約した説明を続ける。


遥か上界側では、柳楽とサムサをずっと見ている者がいた。

「サムサはどうじゃ?しっかりとやっておるかのう」

「何故サムサなのですか!私が…!!」

「お前は…彼の者と関わってはならんえ?」

「お言葉ですが私は…!!」

「お前では無理だのう…」

「くっ……」

「さぁて、呼び寄せられし彼の者は、この世界でどうするか…見ものだのう…」

頬杖をついてフッと鼻で笑いながら下界を見下ろす女。そしてサムサと同じ見た目の者がそこにいた。

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