5年前のパスワード
スマホを買い替えた。
新しいのと古いのを並べ、わざわざ手入力で連絡先を登録して行く。
「本当に必要な人だけにしたい!!」
手入力はそのバロメーターだ。
やってみると
私の希薄な人生が透けて……
涙が滲む。
それも所詮
自己憐憫。
一行一行消していく作業は
『た』の欄に近づくにつれ“牛歩”となる。
思えばこのスマホを買った5年前
初めて手帳型のスマホケースにして
壁紙をカレとの2ショット写真にした。
パスワードは絶対忘れない
『TAKA40721』
高島くんの誕生日は7月21日で……
初めての2ショット写真はその日に撮った。
カレの呼び名が『幸くん』に代わって
最後に吐き捨てたのは『アンタ』だったけど。
スマホは……
二人のたくさんのメッセや写真や動画を貯め込んだ。
これらを全部捨て去っても
指がパスワードを覚えている。
カレは今でも
私のパスワードを覚えているのだろうか?
私はいつだって!!
カレに見られても構わなかったのに……
カレはそうでは無かった。
私の指はカレのパスワードを知らず
詰まるところ、私はシャットアウトされた。
カレとお別れした後も引きずってしまったパスワードを
古いスマホに残った記憶と共に捨て去ろう。
新しいスマホに誰かとの歴史が紡がれるまでは
自分よがりのぎこちないパスワードに
躓いてばかりだろうけど。
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