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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

洋風ボーイズラブまとめ

ゲーム好き男子に王子は似合わないので、親友と逃亡する。

作者: さんっち

趣味は創作小説投稿、さんっちです。ジャンルには広く浅く触れることが多いです。


軽いスランプと私生活の多忙のため、短編を投稿します。親友モノは良いですよね、長いこと抱えてた思いが成就した瞬間が好き。

記憶を持って転生しなきゃ良かった・・・そう考えるのは何度目だよ。あの頃みたく親友と、好きなゲーム片手に駄弁っていたかったのに。互いの就職祝いで、一緒にゲームイベント行こうぜと約束したのに。一緒に乗っていたバスが交通事故に巻き込まれて、強い痛みで意識を失って・・・気付いたら王子様として産まれた。


とある王国の第四王子アルト・ディムド。王子と言っても国王の4人目の妻、しかも侍女との間の息子だから、滅茶苦茶立場は低い。年の離れた兄王子が既に跡継ぎで、他の王子も優れた才能を発揮している。もはや手持ち無沙汰だから、放逐されるとか噂されてる。


正直、その方が良いのかも。「王子として国を支えろ」なーんて、出来るわけない。現代日本のゲーム好き男子大学生だった前世とは、これっぽっちも噛み合わないからだな。でも周囲は「男子だからどこか有力貴族に婿入りさせるべき」みたいな感じで、俺を一応王子教育の道に進めた。6歳になった今は家庭教師もついて、近い年齢の貴族令嬢とも交流している。でも前世の勉強嫌いと女子耐性のなさが祟って、酷い状態が続いていた。


体力も気力も0になる毎日を送っていれば、自然と嫌になるわけで。俺はいつしか毎夜のように、ブツブツ愚痴るようになっていた。自室のベッドでゴロゴロしながら、ボスボスとシーツを叩く。ここでスナック菓子とジュースつまんで、ソシャゲ出来たら最高なのに。あぁ、あの頃に戻りてぇ!!


「あー、もう嫌だ・・・やっぱ俺には才能が無いんだぁ。国の王子なんて荷が重すぎるのに・・・何で俺は王子に産まれたんだよぉ、神様~~」


「アルト王子、出来る出来ないに才能は関係ありませんよ」


そう言って落ち着くためのお茶を用意してくれるのは、最近やって来た同い年の従者ユーディア・プラノ。代々王家に仕える一族らしい。常識人キャラ兼主人公のサポート役で、ガチャだとSRか?なーんて想像している。いやいや、世話してくれる奴になんちゅうことを!俺は気持ちを誤魔化すように、お茶をビールみたくグイッと飲んだ。


「うん・・・分かってる。分かってるんだけどさ、なんか嫌なんだよ。上手く出来なきゃすぐ「お兄様は~」とか、年の離れた母親違いの兄たちを話に出されてさ。あんなのばっか言われたら、やる気無くすぜ」


「きっと期待されてるからだと思いますが・・・確かに言い過ぎですよね。アルト王子は兄王子と違うのですし、出来ることも出来ないことも違うのですから」


そうだよ、その言葉を待ってたんだよ!比べられるのが極端すぎるんだよ、この世界!!何だよ、王族ってどこもこんな感じなのか!?こうして気兼ねなく接してくれるの、コイツだけだし。あぁ、一緒に趣味をする親友のいた前世に戻りたい!!



「あぁ、なんでこんな世界に産まれちまったんだ!あの事故を生き残ってたら、トレモン(ゲーム名)の最新情報満載のゲームイベントに出てたはずなのに!有名ゲーマー同士による、夢の対決が見られたはずなのに!あぁ~、こんな堅っ苦しい世界なんかより、()()と一緒にガチャ回して、レベル上げ周回してぇ~!!」



ん?なんでユーディアの奴、呆気にとられて・・・って!マズい、心の声がうっかり漏れてた!!きっと今のアイツには、意味不明なことが次から次に俺の口から出てたはず。や、ヤベぇ・・・どう言い訳すれば・・・。



「お、お前・・・まさか()()か!?」



・・・え?どうして、俺の前世の名前、を・・・?



「俺だよ、お前とゲームイベント行く約束した()()だよ!!」



ユーディアの態度が急変して敬語を崩し、俺の肩をガッツリ掴んでいるのも気にならなかった。目の前にいる奴は、俺の記憶にいる親友の顔と重なったから。でもすぐに人に触れられるのが嫌いな顔が出て、怖がりつつ手を離すよう言っちまった。うぅ、心苦しい・・・。


「いやー、髪と瞳の色違うけど、なんか愛斗に似てるなぁ~って思ったんだよな」


「全く同じこと考えてた。まさかとは思ったけど、マジで優大なのかよ」


前世の俺、愛斗には優大という親友がいた。共通のゲーム雑誌を通じて仲良くなり、よく一緒にゲームする仲で。小中では携帯ゲーム機を持ち寄ったり、どっちかの家で固定ゲーム機で遊んだり。高校生からソシャゲにハマると、一緒にガチャ回しやステージ周回しまくって。とにかく一緒にゲーム三昧の日々を送っていた。


「本当、愛斗のゲーム好きは凄いよな。嫌いな教科の授業じゃ先生の話ガン無視で、ノートにゲーム攻略メモってたし」


「お前だって大体一緒だったろ!だから勉強はテスト直前に、2人でひぃひぃ言いながらやったよな」


あー、そうだ・・・2人だったから勉強もなんとかやってたのか。そういえば受験も2人で、合格したら新作ゲームやるとかスマホ買ってソシャゲやるって約束して、何とか乗り越えたんだっけ。


「1ヶ月のバイト代、1個のガチャに溶かしたことあるよな?」


「強いキャラ実装されたら、天井しても手に入れるだろ?優大だってそうじゃんか、全然出ねぇってぎゃあぎゃあ言ってたし」


「大学の頃だっけか?新作ゲームを2人で通話しながら夜通しプレイしたら、ストーリークリアまで徹夜したやつ」


「あー、あったあった。眠くなるまでやろうとしたら、気付けば朝だったよな。夜食のポテチってあんな旨いんだな」


目の前にいるのが優大なんて、正直信じられねぇ。でも一緒にいた頃の記憶や思い出がつらつら出るんなら、間違いない。コイツは優大なんだ。あの時、俺と一緒に交通事故に巻き込まれて・・・気付けば従者として産まれたらしい。一族の役割として、同い年の王子(=俺)の使用人になったって。


「変な巡り合わせだな。死んだと思ったら、転生して再会するとは」


「だよなぁ・・・」


前まで親友だってのに、今じゃ王子と使用人。色々複雑なのが本音だ。でも輪廻転生?して、こうして再会できたなら・・・ある意味、結果オーライかも。だって、一緒にいられるんだし。


「髪と瞳の色が違うだけで、ここまで神絵師による神キャラ化するんだな」


「なんだそれ!前世の俺がハズレキャラみたいに言うな!!」


悪い悪いって、悪く思ってねぇだろ!顔が笑ってるぞ、って後ろ向くな!こっそり笑ってるのは分かってるんだぞ・・・。



「お前がハズレなわけないだろ・・・くっそ可愛いくせに」



・・・ん?今、何言った?


「あっ、いや・・・今日はもう遅いし、この辺にしておこうぜ」


あっ、おい!・・・くそっ、逃げられた。まぁ現代日本の6歳児なら、とっくに休む時間か。そう思うと今更欠伸が出てきた。


明かりを消してゆっくり目を閉じれば、ふと優大との思い出がフラッシュバックしてきた。楽しかったなとか思うけど、今の俺は第四王子アルト・ディムド。もうあの頃には戻れないのは分かってるから。これから少しでも、ここでの生活を頑張るしかないか。


転生したばっかの頃は、ただただ自分の出来なさと適応力のなさに泣いてたけど・・・優大がいると何故か、頑張れる。ずっと安心できる、そんな気がした。



ユーディアと出会って・・・いや、優大と再会できて、随分前向きになれた気がする。やっぱ親しい奴がいると、それだけで気分が軽くなるな。何かある度に、アイツが隣にいて励ましてくれた。


貴族学園(12歳以上の貴族息女が通う学校)に入学したら、王族らしく上位に食い込めと圧を掛けられた時は。


「上位とか無理ぃ、もうヤダァ・・・病む・・・」


「ハイハイ泣くな泣くな、まずは教科書開いてみろ。・・・この歴史さ、中学生の頃に遊んだRPGの展開だよな。主人公が濡れ衣着せられて怒りを買ったせいで戦争が勃発したけど、突如現れた中立に見せかけた主人公側のキャラが命落としてまで鎮静させたやつ」


「あ・・・確かに。それで主人公のサポート役が急変して、結局ソイツがラスボスだったんだよな。確かにそう当てはめたら、似てるな。それラスボスが攻略できなくて、最終的には優大の家に泊まって倒したんだっけ」


「あれ楽しかったよな~。同じ布団の中で、親にバレねぇよう夜更かしして。今更思うと、ヤベぇことやってたよな(※顔真っ赤)」


令嬢に関わらず誰かとの交流で、会話どころか目も合わせられないと言えば。


「まぁ現実の人間ってそうだよな。推しみたく遠くで見てりゃ良いわけじゃないし、実際に関わるとなんか違うって感じもして。難しいな」


「だよなぁ・・・だからSRでも性能しっかりしてて安定感あるキャラみたいに、お前みたいな安心できる奴と一緒にいたい」


「おい、俺のことSRキャラだと思ってたのかよ!見た目地味だからだろ」


おっと、つい口に出ちまった。アハハ、悪い悪い・・・。


「・・・いや、隣にいさせてくれるのは嬉しいけど(※超小声)」


ん?最後の方、なんか言ったか?・・・気のせいか。


こうした優大の助けや応援もあって、俺は何とか日々を送っていた。成績も上位、とまではいかないけどそこそこ取れてるし、同級生との会話も流されながら乗り越えている。でも相変わらず優れているところも無く、周囲からは遠巻きにされる始末。前世の弱メンタルが毎日のように発動されるから、毎度毎度、優大に世話になってしまう。


人前では王子と使用人として振る舞いつつ、2人だけの時は親友の感じになれる。ゲーム要素を含めたタメ口の会話は、2人だけの秘密だ。


正直・・・王子に相応しくないと陰口叩かれても、周囲から遠巻きにされても、いずれ放逐されると噂されても平気だった。周囲に1人でも、味方がいるなら。



「・・・・・・は?結婚??」


学園卒業まで半年を過ぎた頃、俺は父親である国王に呼ばれた。で、ハッキリ言われたのが()()の2文字だ。相手は、なんか聞き取りづらい国名と家名のご令嬢。全然流れについて行けねぇし、コッチの意思表示関係なし!?いや、政略結婚なんてそんなモンか・・・。


「でもさぁ、あの国王・・・俺の対人性能の悪さを知らねぇの?絶対交易の役にも立たねぇよ、下手したら戦争になって植民地支配されるんじゃねぇの!?」


「愛斗、それお前がクソゲーって言ってたヤツのストーリーじゃねぇか」


「知ってるから想像できちまうんだって。ろくに出来ることない俺なんか、この国や向こうに都合良く使われるだけに決まってる!」


言論の自由が認められてる世界か分からねぇけど、今はワガママを言いたい。弱音を吐きたい。俺はどういうわけか、隣に恋人がいるビジョンが浮かばないんだよ。というか・・・異性と深い関係築くのに抵抗ある性格だから、正直、気持ち悪い。こんなに苦しんで、2度目の人生を生きるくらいなら・・・。


「前世みてぇに、あっさり死んだ方が・・・」


「じゃあ俺も一緒に死ぬよ」


は!?いや、え・・・あの・・・何か凄いこと言われた気がするんですが。え、こういうときって大抵「死ぬな」って言うもんじゃないの?え?


「いや、優大?前世みたいとは言ったけど、別に全部同じにするわけじゃ」


「お前が死ぬなら俺も死ぬ、それくらいの覚悟はあるぜ?」


ニッと笑いながら、頬を撫でられる。あれ、そういや優大とスキンシップなんて、今までしたこと無かったかも。俺が人に触れられるのが苦手で、会話とゲーム以外の交流を嫌ってたから。でも・・・何故か今は、触れられることが嬉しい。


「な、何言ってんだよ。たかが親友なんかに、そんな・・・」


「命かけるほど好きな奴なんだよ、お前は」


「・・・っ」


・・・あれ?何で俺、泣きそうになってるんだろう。ダメだって、優大にこんなところ見せられない。本当にコイツがいないとダメな奴になっちまうって。人前で泣くなんて恥ずかしい。それにこれ以上、優大を不安にさせるなんて・・・嫌なのに・・・。


「良いんだよ、弱いところ見せても。俺なら全部受け取るから」


1つ、また1つ落ちる涙を拭ってくれる。こんな悪いところばっかの俺を見捨てない、やっぱりコイツは優しすぎる。でも今だけ、今だけは・・・このままの俺を見て欲しかった。



「無理に変わらなくて良いって。俺は今のお前が好きだから、死ぬなら俺も死ぬし・・・まだ生きていたいっていうなら、俺と一緒に生きてほしい」



優大となら、どこへ逃げ出しても生きられる。泣きながら笑って、そんな2人の将来を夢見ていた。






「第四王子アルトがいない!?どういうことだ」


「は、はいっ。いつも通り朝のご支度のため伺ったところ、部屋がもぬけの殻になっておりました。部屋のモノも全てそのままで、まるでご本人だけが消えてしまったかのような・・・」


「そんなバカなことがあるか!すぐに探せ、アイツを逃がすな!あの令嬢の実家は有名な酒蔵だぞ、繋がれば希少な酒がわんさか手に入る。アイツはそれくらいしか使い道が無いんだ、早く探せぇえええ!!!」



酒豪な国王は、そんなコトを言ってる頃かな。ま、アイツの酒欲しさで身売りされるなんてゴメンだ。それに令嬢も男好きだとユーディア、いや優大が調べて教えてくれたからな。むやみやたらに遊ばれて捨てられるのも嫌だ、だからこうして親友と逃げた。夜遅くにザル警備から抜け出し、朝1番の船に乗って、宛のない旅をする。


「モラハラ上司に病んで辞めたって言えば、療養の名で家から出してくれて。これで心おきなく、愛斗とどこへでも行けるな」


やべぇなぁ、まさか駆け落ちみてぇなことするなんて。ま、人生なんて自分中心でやってこそ人生だもんな。行き先なんてこれからいくらでも決められる。


「前世も途中退場だったし、こっちじゃ立場で散々だったもんな。こうして一緒にいられる以上・・・好きなこと、好きなだけやってみようぜ!」


ストーリークリアやコンプリート要素、そして攻略法も無い(ゲーム)の始まり。でも、それで良いんだ。大切な人といられるなら。


fin.

読んでいただきありがとうございます!

楽しんでいただければ幸いです。


アイデアあるのに上手くまとまらない・・・。まぁ美味しいモノ食べつつ、気ままにやってきます。

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