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対魔師  作者: 魚右左羊
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2、インターン

「で、今はどこの会社にインターンを受けるか考察中、って訳?」

「ええ。」

「なるほど。授業そっちのけで何かをしていると思えばそういう事か~。」

 昼休み、学園の食堂でどんぶりに溢れる程のうどんを啜りながら「うんうん。」と頷いているのは綾音のクラスメイトで友人の乾ことは。彼女もクラスBを取得している。

 そんな彼女の目の前にはうどんの他にかつ丼やカレー、から揚げなど大量の料理が。

 これらは全てことはが注文したものだ。

 大食いで知られている乾ことは。しかし体型は高校生女子の平均身長程である綾音よりもかなり低い145cm。

 灰色の大きな瞳に焦げ茶色の髪をポニーテールをしているせいで小学生とよく間違われる。

 勢いよく次々と食べ物を口に運ぶことはを尻目に綾音は進路室で貰った資料と睨めっこ。

 インターンは年中行われているが、繫忙期を少し過ぎている為に応募数が少ない。

「本命の対魔課は応募が終わっているし、どこを受けようかしら?」

「ところでインターンって確か、教員から許可書をもらわないといけないよね。誰から貰うの?」

「既に神太麻(こだま)先生から貰っているわ。」

 神太麻先生とは綾音やことはのクラスを受け持つ男性教諭で、入学時から色々と便宜を図ってくれる人物である。

 食堂で注文したサラダサンドを片手に応募をしている会社の資料を凝視。

 食べるよりも資料の睨めっこが多い為に食事が終わる前に昼休みは終了。

 ことはに背中を押され教室へ。

 対魔地理学(たいまちりがく)の授業中も履歴書作成に勤しむ。

「妖魔は突如その場に出現するのではない。出現するには何かしらの理由がある。そして妖魔にはそれぞれ個々があり生息地もそれぞれ違う。対魔士をその事を念頭に置いて行動しなければならない。それはどうしてかわかるかね、神崎(かんざき)君。」

 教師の質問を答える背の高い男子生徒。

 その間も綾音は手を止めない。

 綾音の席は廊下の反対側で奥端から一つ手前。

 真後ろの席は新学期が始まって以降、一度も使われることない空席の為、後ろから覗かれる心配は一切ない。

 結局、綾音は対魔地理学の授業を一切聞かずに履歴書を仕上げた。

「全く授業そっちのけで履歴書作成とは、主席様は余裕だな。」

 そう声をかけてきたのは先程質問に答えた男子生徒、神崎宗司(かんざきそうじ)

 綾音に次ぐ学年次席で彼もクラスBを所持している。

 長身と白金色の短髪をオールバックが特徴的で、とがった眼つきの奥に潜む銀色の瞳が綾音と隣の席のことはを睨みつける。

「もうすぐ学年末試験だぞ。そんなことしている余裕はなるのか?」

 綾音に対して投げかけた言葉をことはが代わりに意地悪く答える。

「次席君には関係ないですよ~~。」

 こめかみに怒りの筋を作る宗司に突如一人の男子生徒、弾ノ内(だんのうち)琢磨(たくま)が仲介に入る。

「宗司、落ち着き~な。ことはも。」

 関西弁と細目で人懐こい顔立ちの琢磨が宗司とことはを宥める。

 聞く話、この三人は幼馴染の関係であるのだが、どうも宗司とことはの仲がすこぶる悪い。

 事ある毎に口喧嘩をし、その度に琢磨が間に入る光景をこの一年間で幾度も見てきた。

 その為、周囲は「ああ、いつもの事か。」と気にも留めない。

「でだ、今からインターンを受けて大丈夫なのか?」

 落ち着きを取り戻した宗司は再度尋ねる。

 意地悪とかではなく純粋に綾音の事を心配しての言葉。

「大丈夫よ。インターンも学年末テストも、そして昇級試験も全て結果を出してみせるから。」

 右手を握りしめ、自信をみせつける綾音。

「神崎君も今度の昇級試験でクラスAを目指すのでしょう。ならインターンを受けてみたら?」

「いやいい。俺は実家の手伝いで賄えてるからな。」

 神崎家は花条院家と並ぶ名家。

 この二つの家は対魔課(たいまか)創設時の中心メンバーであり、多くの対魔師家系と繋がりを持っている。

 宗司はクラスAの不合格を言い渡されて以降、家の伝手(つて)で現場を数多く経験しているのだ。

「綾音。俺は今度の学年末テストと昇級試験、オマエには負けないぞ。」

「ええ、私もよ。」

 二人は高き頂を目指す良きライバル関係であるのだ。

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