26、墓参り
ここは世間から忘れられた廃墟と化した村。山間にあるこの廃村の高台で一人何かしらの作業をしている者の姿が。
夢為人である。
一言も発することなく黙々と土を盛り固め、そして朽ち果てた三日月の鎌を突き刺す。
仕上げに懐から竹で作られた水筒を取り出して聖水をかけた後、手を合わせて合掌。
(あと6つか・・・。)
「供養は終わったかい?」
全てが終わったのを見計らい、菊の花束を持った玲華が姿を現す。
「まさかこんな所にあったとはね、あの娘の墓が。」
朽ち果てた武器を墓標とした墓が四つ。
そしてその奥には他に比べて大きな木標が一つ。
その墓の前で花を供え、死者に手を合わせる玲香。
「本当に良かったよ、アンタの墓があって。馬鹿共は自分達の非を隠す為にアンタを完全悪として抹消しようとしていたからね。」
懐から筆を取り出し、何も書かれていない木標に筆を走らせる。
芦屋道世、安らかにここに眠る
達筆な文字でこう記した。
「どうしてここに?」
「アンタが人知れずに三日月の鎌を回収したと聞いてね。尾行させてもらったよ。気付かなかったようだね。どうだい、ワタシもまだまだやるだろう。おっと安心しな。ここの事は誰にも言わないよ。」
夢為人の言葉を先読みする玲華の眼はいつもの厳しさはなく、穏やかでそして少し悲しみが含まれていた。
「ようやく心安らかに眠っているんだ。掘り返すことはない。なぁ道世、もう復讐や憎しみに囚われることはない。愛する旦那と息子の元でゆっくりするんだね。」
木標を優しく撫で、ゆっくり立ち上がる。
「さぁ帰るよ。」
玲華が歩き出すが、夢為人はその場から動かない。
「どうしたんだい?帰るんだよ。」
「俺にはやるべきことがまだ――――。」
「荒身玉帝が作った呪われし武器の回収の事だね。でもそれは一人で抱えてやる事かい?違うだろう。ワタシ達を頼りな。」
「だけど―――。」
「じれったいねアンタも。いい加減過去に囚われるのを辞めな!」
玲華の叱責に口を噤む。
「いいかい?アンタは西社夢為人だ。周りが何を言おうが、0小隊の一員であの時を戦い抜いたワタシ達の仲間だ。」
「・・・・・・。」
「荒身玉帝は自分の愛する旦那や家族、全てを対魔師に奪われ、復讐の鬼とかした。この世界に仇名す為、九個の呪われし武器と妖魔の精子と自分の卵子を掛け合わせ、9人を子供を作った。」
「だけど、生まれた子供は十人。最後に生まれた子供には妖魔の力は一切なかった。だから名前に数字が与えられなかった。不出来者の烙印として・・・。」
「それは違うよ夢為人。アンタが生まれたからこそ、荒身玉帝―――道世は正気を取り戻した。アンタを復讐の道具から切り離す為に敢えて冷たくあしらった。」
「夢幻、偽りの者と名付けられたのに?」
「違う。人の夢の為に生きてほしい。その願いを込めて、夢為人と名付けられたのさ。」
荒身玉帝から直接聞かされた真実を告げる玲華。
「・・・・・・。」
夢為人は何も言わない。
どう気持ちを整理すればいいか、迷っていた。
そんな彼の背中をそっと抱き寄せる。
「安心しな夢為人。お前さんを一人にはさせない。」
その言葉に夢為人の背中を押すきっかけとなった。
無言で頷いた夢為人。
「さぁ、帰るとするよ。」
大きくなった肩を抱き、並んで歩き始める。
ふと、一陣の風が玲華の耳を掠める。
――息子をお願いね、お婆さん――
玲華の耳には確かにそう聞こえた。
「わかっておるよ道世、この子は―――夢為人のことは任せな。命をかけて守ってみせるよ。」
玲華の呟きに木標は安心して眠りに就くのであった。
これにて綾音編は終了です。
続いては新たなヒロインを迎えての章となります。お楽しみに。
因みに更新はいくつかの新作を投稿した後となります。ご了承を。




