25、終わりに
「カット!!!」
「これで清河梨沙さん、クランアップです。」
パチパチパチパチ。
「ありがとうございました。」
助監督から花束を受取り、何度も深々とお辞儀。
「よかったよ!梨沙ちゃん。最後のシーンは特に!迫真的で別れの悲しみがジンジン伝わってきたよ。」
「ありがとうございます。」
「キミを主役にして本当に良かったよ。それじゃあお疲れさん。また一緒に仕事しようね。」
ひらひらと手を振り立ち去る監督に深くお辞儀。
スタッフから食事会に招待されるも次の予定がある為、丁重に辞退。
駐車場で彼女を待つ新しいマネージャーの元へ駆け足。
「お待たせ。」
「リサ、お疲れ様。疲れハ大丈夫?」
「大丈夫よ。」
「ジャア、次の現場へ向かおう。次ハ週刊誌の写真撮影―――。」
「違うわよ。次は事務所で今回のドラマのインタビュー。写真撮影は明日よ。」
間違いを優しく指摘。
頭を掻くマネージャー。新人の為、この仕事に慣れていないのは仕方のない事だ。
「も、申し訳ない。」
「大丈夫ですよ。少しずつ慣れていきましょう、ミカミさん。」
「どうやら大丈夫のようだな。」
少し離れた所で二人のやりとりをそっと見守っていた源蔵がうんうんと頷く。
「この調子なら保護観察もすぐに解かれる事になるだろうよ。良かったな綾音。」
「そうですね。」
梨沙達が車に乗り込み、走り去るのを見送りながら頷く。
「それにしても人が悪いですね。わざわざあんな風に梨沙姉さんを悲しませるなんて。」
「夢為人を悪く言うな。このような結果になるなんぞ、あの時は分からなかったのだ。変に期待を持たせない、というアイツの気遣いさ。」
夢為人がカミキリを連行してから数日が経過。
棲家を無断で離れ、更に危険な武器を使用したカマキリは本来であれば処刑されるのが通例であった。しかし彼の行動は一人の女性を助ける為だった事を訴えた夢為人が玲華にカミキリの減刑を懇願。
無事に聞き入れられ、保護観察処分となった。
又、梨沙に呪いをかけていた森本マネージャーは逮捕された。
そして事務所ぐるみの犯行だと自供により、事務所社長も逮捕。
それに伴い梨沙は別の事務所へ移籍となった。
「今度の事務所は婆さんの知り合いの所で妖魔に対しても大いに理解がある場所だ。心配はないさ。」
源蔵はこのように話すが、綾音自身は大手を振る事が出来ないでいる。
「安心しろ綾音。今の時代では珍しく思えるかもしれんが、一昔前は人と妖魔が世帯を持つのはごく普通の事だったのだぞ。」
「そうなのですか?!」
「ああ、江戸時代辺りは身近な存在で互いに助け合っていたのだ。関係が拗れたのは第二次世界大戦辺りからだな―――、この内容は学園で既に習っているはずだぞ。」
「・・・すいません。」
「強くなる事ばかり考えるだけではなく、ちゃんと知識を蓄えろよ。」
「頑張ります。」
ありがたい説教を頂き、項垂れると夜叉丸からの追い打ちが。
『全くその通りだね。ちゃんと勉学に励みな、半人前。』
「何で夜叉丸にそんな事言われないといけないのよ。」
『何故ってアタチはアンタの保護者だからさ。』
「何勝手に決めているのよ!」
『ほらほら、またアタチに見捨てられないよう励むんだね。』
「うるさいわね。」
「おい綾音、行くぞ。」
「あ、はい。」
名前を呼ばれたので、相棒との喧嘩は一時中断。源蔵の後に続く。
季節は弥生になったばかり。
春はもうそこまで来ていた。




