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対魔師  作者: 魚右左羊
22/27

21、呪う者、呪われる者

「どうしたの綾ちゃん。いきなり。」

「ごめんね梨沙姉さん、仕事中に突然尋ねて。」

「お二方とも一体何事ですか?」

 数日後、撮影終了のタイミングで梨沙と森本に突撃訪問。

「実は梨沙さんに少しお尋ねしたい事がありまして。」

「私に?」

 夢為人の視線を引き継ぎ、梨沙に確信めいた質問を投げかけた。

「ねえ梨沙姉さん、本当の事を教えて。カミキリは今どこにいるの?」

「え?何を言っているのか綾音ちゃん。」

 口調はいつもと変わらないが視線が一瞬、泳いだのを見逃さなかった。

「梨沙姉さんはカミキリの居場所を知っている。そうなんでしょ。」

「ちょっと何を根拠に。」

「その前に一つ、報告する事がある。」

とここで夢為人が口を挟む。

「梨沙にかけられていた呪いについてだ。」

「の、呪い?」

「そうです森本マネージャー。彼女はこの半年間、呪いをかけられていた。そして彼女はその事に気づいていた。ですよね?」

「トリセンジャーに選ばせた時、何度か対魔師の方を招いて講習を受けた事があります。知識はあったはずです。そうだよね梨沙姉さん。」

 トリセンジャーの戦隊役に選ばせた俳優達は何の因果か全員霊感が強く、現役の対魔師を呼び何度か研修を行った経緯があるのだ。

「確証はなかったけど薄々。」

「やっぱり。」

「もしかして、ストーカーが付き纏っているのはその呪いのせいで。」

「当たらずも遠からず。」

「???どう言う事ですか?」

 首を傾げる森本マネージャーに真相を明かす。

「カミキリは呪いを打ち消すために梨沙姉さんに接触してきたのです。」

「俺達が撮ったこの写真。黒い渦の中にある幾つもの白い線。これは呪いを断ち切った跡です。三日月の鎌は怨み憎しみを吸収する性質を持っている。呪いはそれに準じたモノ。カミキリは梨沙を呪いから守る為に山を降り近づいた。そうですよね梨沙さん。」

「カミキリが着ていた服、アレは今トレンドになっている服ばかりでした。モデル出身の梨沙姉さんが彼の服を用意した物ですよね?」

「ええ、そうよ。」

 言い逃れができないと判断した梨沙が白旗をあげる。

「さてここで問題なのは誰が梨沙に呪いをかけたか?」

 心当たりがあるか?の質問に対して首を横に振る梨沙。

「考えられるのは主役の座を奪われたライバルによる犯行。しかし今回のドラマに関しては梨沙姉さんが主役として持ち込まれた企画。そうですね森本マネージャー。」

「あ、ああ、そうだけど。」

「そして今回のドラマが完成に至らないと事務所が巨額の借金を背負う。そうですよね。」

この事実に驚きの声をだす梨沙。やはり彼女は何も聞かされていないようだ。

「だけど本当は梨沙姉さんに全ての借金を押し付けるつもり。事務所と結託して。」

「な、何も根拠に。言いがかりだ!」

 狼狽するあまり、言葉遣いが荒くなる森本マネージャーにこの数日調べ上げてきた事を全て公の場に曝け出す。

「梨沙姉さんに呪いをかけたのも森本マネージャー、あなたです。撮影が困難となり、企画中止にして借金を梨沙姉さんに押し付ける。そして借金返済の為に裏ビデオ―――つまりAVデビューさせる。それがあなたと事務所が描いた筋書きです。」

「デ、デタラメだ!何を証拠に!」

「証拠ならここにあるぜ。」

 タイミングを見計らったかのように登場してきた源蔵。両手には蛇の死骸や蝋燭など、呪いに使用されるモノが。

「森本マネージャーさんよ、アンタの家からこんな物が出てきたぜ。どれもこれも呪いに使用する品物ばかり。過去数回呪いを行ったな。」

「な、何のことだ?俺は何も知らない。」

「ならば試してみるか?」

「何?」

 焦る森本に夢為人は液体の入った瓶を見せつける。

「この液体は呪いの追跡を辿る事ができるモノ。これを梨沙にかけて誰が彼女に呪いをかけたかを探ってみようか。」

 夢為人の発言に硬直する森本。

 そして次の瞬間、夢為人が持つ瓶を払う。

 それは呪いを行った事を証明する行動だった。

「森本マネージャー・・・。」

 地面に散らばる瓶の破片と染み渡る透明の液体。

 梨沙は言葉を失う。

「〜〜〜。」

 企みはバレて奥歯を噛み締める森本。

「人へ呪いがけは重罪だ。詳しい話は署で聞かせてもらうぜ。」

 源蔵に引きずられるように連行された森本。

 残された三人。

「さぁ、カミキリの居場所を教えてくれ。」

 しかし梨沙は無言を貫く。

「頼む、教えてくれ。このままではカミキリが暴れて街を襲う。」

「ミカミさんがそんな事するはずないわ!!」

「梨沙姉さん?」

「あの人は私を助ける為に棲家の山を離れて私の所まで来た、争いを好まない心優しい人よ。そんな人が無作為に暴れるはずはないわ。あの人の事を何も知らないのに勝手な事を言わないで!」

「奴が無害な妖魔だという事は知っている。だが奴は三日月の鎌を持っている。その事が危ういのだ。」

「三日月の鎌が危険?どういう事?」

 どうやら梨沙はカミキリから三日月の鎌について聞かされていないようだ。

「三日月の鎌は呪われた武器だ。アレは所持者の意識を乗っ取り無差別に暴れる、危険性がとても高い物。一刻も早くアレを三日月の鎌を破壊しないとカミキリが危ない。」

「そ、そんな・・・。」

「教えてくれ、アイツは今どこにいる?」

 青ざめる梨沙。

 下向く視線。どうするか悩み、そして戸惑いながら言葉を口にする。

「ふ、埠頭。都外の埠頭の貸し倉庫に彼はいるわ。」


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