表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
対魔師  作者: 魚右左羊
21/27

20、カミキリ

「綾音!」

 源蔵の声よりも早く車から飛び出て悲鳴の聞こえた方へ駆け出す。

「おい無事か?」

「梨沙姉さん!」

 非常階段の踊り場で気を失う梨沙に寄り添う森本を見降ろす一つの影。

 190㎝を超す痩駆。シミ一つない白い肌。自然のウェーブが掛かった長髪に隠れる美形。今流行りの服装を着こなすその者は今巷を騒がすイケメン俳優と遜色なし。

 そしてその者から発せられる荒々しい霊力と手にする三日月の鎌が放つ瘴気を見て、目的の人物―――カミキリだと認識。

「オマエがカミキリだな。」

 源蔵の問いにカミキリは踵をひる返して跳躍。その場から逃げ去る。

「綾音、追え!」

「はい!」

 返事と同時に駆け出す。

 源蔵は持久力には自信がある反面、巨漢の体形からスピードには難がありカミキリの跳躍速度から自分では追いつけない、と瞬時に判断。人命を優先し、自分より速い綾音に追跡を任せることにしたのだ。

「待ちなさい!」

 屋根や壁を利用して逃げるカミキリ。

 人では絶対に出来ない方法で宙を駆けるカミキリに対して綾音は足に纏わせた炎をエンジン代わりにして追跡。

(あの跳躍力から次に足を突かせる場所は・・・あそこ!)

 カミキリが次に着地するであろう箇所に向かって全力疾走。負ける劣らずの跳躍力で急接近。

「そこ!!」

 炎の拳を繰り出す。

「!!」

 攻撃が届くとは全く予想していなかったのだろう。カミキリは驚き、慌てて三日月の鎌で防御。

 拳と鎌がぶつかったその時、歪な霊力の衝撃波が二人の間から発生。お互い吹き飛ばされる。

「!!!??!?!」

「っ!!」

(「コレはコレは。」)

 その時、エコー気味の見知らぬ声が脳内に反響。

 その雑音に気を取られてしまい、そのせいでカミキリを見失ってしまった。

「あ~~~、もう!」

 悔しさが込められた叫びはそのまま夜空へ吸い込まれた。


「やはり接触してきたか。」

「面目ない、綾音に追いかけさせたが取り逃がした。」

 再び合流した夢為人に先程起きた出来事を報告。

「梨沙に怪我はない。無事でよかったよ。」

「マネージャーさんがいち早く発見してくれたおかげよ。」

「果たしてどうだろうね?」

 意味深な発言をする夢為人。

「何が言いたいのよ!」

 つい喧嘩腰なるのを源蔵が横から入って止まる。

「それよりも夢為人、オマエは何を調べに行ったんだ?」

「ちょっとね。」

 それ以上何も語らない。

「何よ、この秘密主義者。」

「まぁまぁ綾音、落ち着けよ。何、夢為人は話すべきかどうか迷っているのさ、そうだろう?」

「まだ確証は得てない。不確定な情報を与えてまた暴走されては困るからな。」

「本当にアンタって人をイラつかせる天才ね。」

「つまり確証を得るまでは話せない、と。オマエさんの考えはわかった。だがな夢為人、今この任務はオマエさん一人で行なっている訳ではない。ワシ達三人で行っている。情報を共有し、手分けしてやる方が効率良いとは思わんかね。」

「・・・・・・。」

「オマエさんが他人を信用しない理由は重々承知だ。そしてこの任務はオマエさん一人でこなせる事も。だけどな、それではダメなことぐらい賢いオマエさんならわかっているだろう。」

「だけど・・・・・。」

 ふと脳裏に過ぎる、過去の出来事。

 不確定の情報に踊らされて罠にかかり、そのせいで風音と一騎を死なせてしまった、あの日の事を。

「安心しろ!夢為人。ワシはそう簡単に死なんぞ。オマエさんのミスなんぞ全部吹き飛ばしてくれるわ。」

 丸太のような腕を夢為人の首に絡ませて、発破をかける源蔵。

「さぁ話せ!それに言うだろう、三人よれば文殊の知恵、とな。」

「・・・、わかった。」

 大きく息を吐き、夢為人はどこに行っていたかを白状した。

「俺は弾ノ内可奈、ていう人に会っていた。」

「何でアンタが可奈先輩の事を知っているのよ。」

「学園長から紹介してもらった。」

「と言う事はあれか?あの写真についてか?」

「ああ、俺の考えを話したらその可能性は充分あり得ると。今は彼女の解析待ちだ。」

「(だから、考えを話さなかったのね。)」

「よし、わかった。今後は夢為人の線を追うぞ。」

「いや待って。人の話を聞いてた?まだ確定ではない―――。」

「心配するな。オマエさんを信じれば大丈夫だとワシの勘言っておる。幾多の死線を潜り抜けてきたワシの勘がな。」

 ガッハッハ!と胸を張って大笑いする源蔵に対して二人の白い目が突き刺さる。

「さぁ話せ。」

「わかったよ。清河梨沙だけど、彼女は呪いをかけられていた可能性がある。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ