十八話 ペンは疲れを癒したい
「いらっしゃいませー」
俺のバイト先であるコンビニはそれなりに客が多い。近いと言えるほどではないけど、徒歩圏内に駅があることがやはり一番大きいだろうか。
俺はシフトに入ってからというもの、ずっと接客をしている。どれもこれも店員のことを気にかけずに始まったキャンペーンのせいだ。対象商品を三個以上お買い上げで得点が付くキャンペーンは、一回のレジが長くなりやすいので嫌なのだ。
コンビニバイトは忙しくてもそうでなくても貰えるお金が変わらないのでこういうキャンペーンはバイトの敵だと認識している。他のコンビニバイトも同じような意見だと思う。
「夏目くん、代わるからちょっと休憩入りな。フラフラしてるよ」
「助かります店長」
日夜バイトに明け暮れる俺であっても、流石にずっと接客を続けていれば疲れがたまる。仮眠をするほどの休憩時間は貰えないものの、少しでも疲れをとるためには必要な時間だ。
俺は裏の休憩室で椅子の背もたれに体を預ける。
このような休憩が休憩と呼べないほど忙しくなることは、初めての経験ではないのだけど、それでもやはり体に堪える。俺よりも歳が高い店長なんかは体がバキバキになることだろう。
俺はしばしの休憩の後、レジへと戻っていくのだった。
……
家に帰る頃には疲労困憊だ。すぐさま寝たいところだけど、流石に皐月が作ってくれた料理を食べずに寝ることはできない。
そもそも疲れているときに何も食べなければ回復もせずに疲れが溜まっていくのだ。
「…いつにもましてお疲れのようですね」
「ああ…そうだな…」
ただでさえ会話の少ない食卓が更に静かになる。まあ静かな空間に居心地の悪さなどは感じない質なので気にすることはない。
ご飯を食べて、さっとシャワーを浴びて布団へと潜る。皐月はまだ家事をしてくれているが、先に俺は眠らせてもらおう。皐月の後ろ姿を見ながら俺は夢の世界へと旅立った。
………
仁さんはいつもよりも一時間以上早く寝てしまいました。何やらキャンペーンなるものがあったらしく、そのせいで疲労困憊なのだとか。
私の稼ぎは少ないので、この家の出費の多くは仁さんのお金から出ている。
そう考えると私は未だに仁さんに甘えているのではないかと思ってしまう。家事だけでは足りないのではないのかと。
世の中には専業主婦として家事だけをしている女性が多くいる。私もここで色々と家事をするようになって、大変さを思い知った。家事をしてくれることに仁さんはとても感謝してくれているし、家事だけと言ったって疲れるのだから十分だと言う人もいるだろう。
ただ、私は仁さんにとってはイレギュラーなのだ。急に増えた同居人。私が無理を言ったせいで出費が増えていることも明確だ。
「ふぅ…」
洗い物を終えると、既に仁さんは熟睡していた。相当疲れていたのだろう。
ただとても辛そうだ。まだ夏本番ではないにせよ、少しずつ夏が近づくこの季節は、この経年劣化の激しい部屋では少々辛いものがある。
私が仁さんの枕元にしゃがみ込む。
「…おやすみなさい」
…仁さんの頭を撫でた。ちょっとは顔が和らいだ…気がするのは、私の願望だろうか。
「はっ…私は、何を…」
顔が熱くなるのを感じながら風呂場へと走る。
仁さんが寝ているからと言って、無防備な男性の頭を撫でるなんて…私らしくない。
私は火照った顔を鎮めるために、いつもよりも冷たいお湯で体を洗ったのだった。
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