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十七話 ペンは占いを試してみる

仁視点、皐月視点に加えてモブ視点があります

 今日は珍しく皐月と一緒に買い物に来た。大学でパソコンを使うこともあるのだが、俺はUSBを持っていなかったのでそれを買いに来たのだ。皐月はいつも通り食料品などを買いに来ている。

 そういう事情もあって今日はいつも食材を買っているスーパーマーケットではなくて大きめの商業施設に来ている。前に皐月の身の回りの色々を買ったところだ。


「先にUSBを買ってしまいましょうか」

「そうだな。皐月は先に食料品売り場に…」

「…いえ、私もついていきます」


 USBなんて特にどれも性能に大きな差はないし、容量だって大きなやつを買うわけではないのでお金の消費は少ないので皐月についてきてもらう理由はないのだけど…

 まあ時間はあるし構わないだろう。今日はバイトのシフトがないオフの日なのだ。


「おぉ…」

「皐月はこういうところは初めてか?」

「そうですね。私はあまり電子機器を使う機会がないので」


 皐月がパソコン売り場を見て目を輝かせた。俺の家にはとてつもなく古いパソコンが一台あるのだが、相当やむをえない時以外は使わないので皐月はパソコンを使ったことがないはずだ。

 皐月は多分タイピングよりもペンで字を書く方が合っているだろうから必要性は感じていない。皐月が欲しがる素振りもないしな。

 俺は柱や天井から吊るされている案内板を見ながらUSB売り場へ。お値段色々見た目も色々容量も色々…適当に文書を保存するだけだろうから4GBのシンプルな柄のUSBでいいかな。

 ふと皐月の方を見ると、何やら一点を見つめている。そこには黒のUSBがあった。


「皐月もUSBが欲しいのか?」

「いえ、ただ、黒っていいですよね」


 皐月の元となったmatendaは真っ黒のペンだ。アクセント的に白が混じってはいるものの、その柄のほとんどは黒で構成されている。そのせいか皐月の服は真っ黒だし、本人も黒が好きなようだ。俺は特に柄にこだわりはないので黒のUSBにしよう。

 USBの代金を支払ったら食料品売り場へ。皐月が少しご機嫌なように見えるのは黒のUSBを俺が買っただろうか。まあ基本的に無表情なのでご機嫌なのかも定かではないけど。


「仁さん、嫌いなものってありますか?」

「今更だな。うーん…特にないな。皐月は?」

「私も特には…でしたら好きに買えますね」


 どうやら嫌いなものを配慮して作ってくれる気だったようだ。なんともよくできた女子だろうか。

 皐月は慣れた手つきでカゴに食料品をいれていく。俺はカゴを持ってそれについていくだけだ。依頼者の夫婦とやらに教わったのかたまに食品を吟味する様子もある。いい嫁になりそうだな。

 買い物が終わる頃にはカゴにはそれなりの量が入っていた。値段もそれなりだが、一体これで何日分の食材なのだろうか。


「袋は持つよ」

「…お願いします」


 結構重そうなので袋は俺が持つ。

 皐月の筋力がどんなもんか知らないけど、あまり運動はしていないようだし元々ペンだし女の子だしということであまり力はないだろう。毎日ペンを握っているので握力だけはありそうだ。

 ここは家から少し離れているので電車で来ることになるのだが、実のところ商業施設から駅までもそれなりに距離がある。駅の近くこそ発展しているとかなんとかって前に地理でやった気がするのだけど…


「…?仁さん、あれは何ですか?」

「あー?なんだ?」


 そこには紫の小さいテントがあった。如何にも怪しい雰囲気だ。

 あまり来ることはない商業施設であっても、道は決まっている。それに来たときもここを通ったはずなのにその時はあんなテントはなかったはずだ。直線道路なので見落としたということもないだろう。


「占いと書いてますね」

「なんでまたこんなところで…」


 占い屋・クレイル

 正直言って場違いだ。そもそも現代社会で出店型の占い屋はほとんど儲からないと思う。こんなところでやっているということは何かの宗教勧誘の可能性すらあるな。

 俺はそのテントを訝しむのだが、どうも皐月には新鮮に見えたようで好奇心が勝っているようだ。


「…やりませんか?」

「興味があるのか?」

「少し…」


 一回百円というむしろ怪しい値段設定に俺は更に警戒を強めるが、まあ百円なら払ってもいいかもしれないとも思う。占いを信じていない人でも一回くらいは払ってもいいだろうと思わせるくらいの値段設定なのだろう。


「失礼」

「おお、いらっしゃい」


 二人入るとそれだけで結構狭くなってしまうが、皐月を一人にすると宗教勧誘をされたときに守れないので俺も一緒に入る。

 中にいたのは1人の男性。イメージとしてしわくちゃの婆さんが推奨を使うのがあったのだが…いや、それは占い師じゃなくて魔女か。


「占いはどっちがするんだい」

「私が」


 顔はレースみたいなもので覆われているので分からないけど、声だけを聴くと若そうだ。


「何を占いたい?」

「……あの、仁さん」

「どうした?」

「ちょっと出てもらっていいですか」


 皐月から退去命令。ふむ、一体何を占ってもらう気なのだろうか。

 仕方ないので俺はテントから出て距離を取る。宗教勧誘だったらすぐに出てくるように言っているので多分大丈夫だろう。今時幸せになる壺を売りつけてくるような占い師はいないだろう。

 俺は皐月が出てくるのを待った。



 今日来店したのは男女のペア。ただ見た感じはカップルというわけでもないのかな?

 と思ったら占いをするタイミングで男性を外に追い出した。もしかして恋愛運でも占うつもりだろうか。


「それで、何を?」

「…あの人との今後の関係を」


 ふむ、カップルではないけど脈はあるっぽいと。ぶっちゃけ見てて面白い。なんせ先ほどまで無表情だった女の子が顔を赤くしながら男性との仲を聞いているのだ。レースがなければニヤニヤしているのがばれるとこだった。


「友情かい?それとも…恋愛かい?」


 こんなこと聞く必要はないのだけど折角ならもう少し楽しんでから占う。俺の占い自体は的中率ほぼ百パーセントなのでバチは当たらないだろう。

 俺の質問を聞いて黙ってしまう女の子。すると既に赤かった顔を更にじわじわと赤くしていき…


「れ…恋愛運でお願いします」

「一応聞くけど彼女ではないんだよね?」

「ち、違います。それに、その、異性として好きとかでもないんです」


 面白いな本当に。どうも異性として意識しているわけではないけど友情以上のものを感じているらしい。占い師の仕事はこういう人がいるからやめられない。


「えっと、今後の恋愛運だね」

「はい」


 俺は何も女性に質問しないことに、普通は疑問を抱くはずなんだけど…占い初心者なのかな。俺は生年月日も名前も使わないから聞かれないならそれはそれで楽だけど。



 占いというのはドキドキするものですね。

 まさか友情だとか恋愛だとか聞かれるとは思いませんでしたが…まあ仁さんとのことで言えばこの二つしか出ません。

 仁さんのことが好きか嫌いかで言えば断然好き…ですが、もとより私はペンですので異性というのもよく分かりません。でもただの友人で終わってしまうのは悲しいと思っている自分もいるのが現状。


「ふむふむ、ほうほう?」

「…」


 レースでよく見えませんけど多分ニヤニヤしてますね。本当に占ってくれているんでしょうか。


「なるほど。あの男性には何もないけど、貴女自身に言い寄る人が現れますね」

「私に?」

「そそ。でもまあ、特に障壁にはならないかな。君にとっては些細なことにすらカウントされないような細事さ。むしろその後、君がその男から言われた言葉によってあの男性との付き合い方が変わってしまう…かもね」


 随分と細かい。占いってすごいんですね。

 私は百円を払ってテントを出ました。私と仁さんの付き合い方の変化…悪いことにならなければいいのですが。

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