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私はシロツメクサの花を編み、沙里は四つ葉を一生懸命探している。

花冠の二つ目が出来た頃、沙里はようやく四つ葉のクローバーを1枚、探し当てた。


「あったあ‼︎ これでしょ、これ」

「そうそう、よくやった!」


私が笑うと、沙里が満足げに笑った。


✳︎✳︎✳︎


「え? なんか恥ずくない? え、なんなんこれ、罰ゲーム?」


お互いに花冠を被ったまま、路地を歩く。


「異世界に行くための事前準備」

「はあ⁉︎」


沙里のシロツメクサの花冠から、沙里が見つけた四つ葉のクローバーがゆらゆら揺れている。私はこの四つ葉が本当に沙里に幸せを呼んでくれないかなと、そう思わずにはいられなかった。


沙里に幸運が訪れますように。善良な人だけが、寄ってきますように。


「沙保里~、聞いてよ。また加藤がさあ、」


男運のとことん悪い沙里が、またもや机に突っ伏して嘆いている。


あんたは男を見る目が無いって、いつも言っているでしょ。軽くてバカで女で遊ぶチャラい男しか、目に入らないし、寄せてこないんだから。

何度も後悔するのに、また同じ種類の男を選ぶんだな。


私は沙里と肩を並べて、路地を曲がって人通りのある少し大きな通りに出た。すれ違う人が私たちを見て、笑顔でと言いたいところだが、失笑で通り過ぎる。


「恥ずいわ」

「異世界、行きたいんでしょ」

「……地獄すぎる」


私は苦笑な沙里を確認して満足すると、そのまま歩き続けた。


✳︎✳︎✳︎


この町内で唯一と言っても過言ではない比較的大きな交差点を渡り、小学校のグランドを横目に流れる小さな川の川沿いを歩いていくと、その店はひっそりとそこに存在した。


レトロといえばその通りなのだが、古くてボロボロと形容していい建て構え。横滑りのガラス戸をカラカラと開ける。


「わあっ!」


隣で沙里の感嘆の声を聞いた。


「駄菓子がめっちゃある‼︎」


興奮する沙里を玄関に置いて、私は奥へと進んでいく。中から出てきた恰幅の良い中年のおばさんに声を掛けた。


「こんにちは」

「いらっしゃい、今日はお友達と一緒なの?」

「はい」


沙里が横でぴょこんと頭を下げる。シロツメクサの花冠が落ちそうになって、慌てて手で押さえた。私はそんな沙里に小さなカゴを渡し、迷路のような店内をゆっくりと見て回った。目当ての駄菓子二個と目新しい駄菓子を一個、カゴへと放り込むと、おばさんに渡してお金を払う。


「四十二円ね、いつもありがとね」


くるりと振り返って沙里を見ると、駄菓子を選んでいるだろうと思っていたのに、予想に反してその場に立ち竦んで、キョトンとした顔をこちらに寄越していた。


「決まった?」

「……あ、うん、じゃあこれ」


沙里が渡したカゴの中を覗き込む。その独特なラインナップ。


「渋いな」


笑いながら顔を上げると、沙里の戸惑ったような顔に出くわした。


お金を払って店を出ると、私は今買ったチョコレートの包みを開けて、口の中へと放り込む。


「なになにどした?」


沙里も同じようにして、アメを口に入れる。


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