8,可愛いは世界を救うのです!
ストック切れました。
前回のあらすじー。
メアリ様を虐めの現場から助けた。
か わ い い。
「大丈夫かしら、メアリ様?」
「だ、大丈夫です。ありがとうございます……ってえ!?なんで私の名前を知って……」
ま、まずい!
メアリちゃんのあまりの可愛さにボーっとしていたら、とんでもない失言を!
「え、ええと、そ、そうですわ!わたくし、できるだけ同級生の名前は覚えるようにしていまして」
「す、凄いですね……!」
ああ、メアリちゃんの純粋な視線がかわいいけど痛いよう……。
「そ、そんなことはおいておきまして。今後あのようなことがまたありましたら、私の名前をお出しになって下さいな。そうすればよっぽどでなければ向こうも引くはずですから」
「えっ、そ、そんな恐れ多いです!ディーナ様のお名前をお借りするなんて!」
「~~~~っ!!」
ふぁ、ふぁーー!い、今!!
ディーナ様って呼ばれた!推しにディーナ様って呼んでもらえた!
もう死んでもいい!
あっ、いや、やっぱりもっと近くに居たい!
こんなところで死んじゃったら、これからの推しの活動が見れないじゃんか!それはだめだ!生きろ、私!
「あのー……?」
「――はっ!ああ、何でもありませんわ。それより、私の名前なんていくらでも使ってちょうだいな。ああいう、権力を笠に着ている輩に一番効くのは、より強い権力なのですから。貴女も見たでしょう?彼女たちの青ざめた顔」
「えっ、と……」
おっとぅ、推しを虐める奴らに対する殺気が漏れてしまったせいで、メアリちゃんがおろおろしちゃってる!
でもそんなメアリちゃんも可愛い!抱きしめたい!良いよね、今人いないしちょっとぐらい良いよね!?
味見、味見だけだから!
……はい、駄目ですね。わかってます。
「あら、ごめんなさい。少々虫の居所が悪かったようで、らしくもない事を話してしまいましたわ。お気になさらないで。それより、もう大丈夫かしら?」
「あ、はい!ありがとうございました!」
ぺこぺこと頭を下げて何度もお礼を告げるメアリちゃんの仕草は、確かに泰然とあるべき貴族としては失格なのかもしれない。
けど、けど!
かわいい!!!!!!!(絶叫)
かわいいは正義、かわいいが世界を救う。
これ重要、すっごい重要!
――はっ、また暴走を……。
よし、此処はひとつ話を変えよう。このままだと一言ごとに私が暴走しちゃって持たない。
「そういえば、貴女もAクラスですよね?」
「はっ、はい!」
私が言葉を発するたびにビクッって肩を揺らす様がもう……ふぅ。
ひとつ、学んだ。
人は、幸せが天元突破すると一周回って冷静になる。
でも、テンションはおかしいままだった。
衝動に突き動かされるままに、私は再び口を開いた。
「ね、友達になって下さらない?」
「~~~~!?と、っととと、友達、ですか……!?ディ、ディーナ様と友達なんてそんな恐れ多い……!」
「……駄目ですか?」
すっごい怖がられてて、ちょっと悲しくなったからつい、声にも感情が乗っちゃった自覚はあった。
でもまぁ、そうなんだよね。
メアリちゃんのお家の爵位は、確か男爵。
それに対して私は公爵家だから、天と地ほどの身分差がある。平民と貴族ほどじゃないけど。
でも。
友達に、なりたかったな……。
悲しさがどんどんとこみあげてきた。やば、私ってこんなに心脆かったっけ?いやでも、推しに拒否されたら泣けるって!泣いちゃうって!!
「突然変なこと言ってごめんなさい、気にしないで――――」
「あ、あの!」
沈黙がいたたまれなくて、発言を無かったことにしようとした臆病な私の言葉を遮ってくれたのは、メアリちゃんだった。
「あの、その。ご迷惑でなければ、えっと……。私と友達になってください!」
「――――――はぅ」
「あっ、あのっ!?」
「はっ!?す、すみません、何でもありませんわ。こちらこそ、これからよろしくお願いします!」
あ、危ない危ない。危うく白目剥いて倒れてしまう所だった。
私の身長は168センチ、それに対してメアリちゃんの身長は159センチ。
つまり、何が言いたいかって?
普通に話してるだけで常時メアリちゃんの上目遣いにさらされてるんだよ!!
推しと目を合わせて推しと同じ空間で同じ空気を吸ってるだけでも限界化しかけてるのにその上上目遣いとか!ありとあらゆる感覚が私の心臓を止めに来てる!
しかも言ってることが、「友達になってください!」だよ!?もう、もう……!!
だから、嬉しすぎて、声が裏返っちゃったのはしょうがないのです。
「……こほん。さて、お友達になったのですから、私の名前を使うことに遠慮などしないでくださいね?」
「あっ……」
「嫌とは仰りませんよね?」
「は、はい。あの、有難うございます!」
「感謝なんて結構ですわ。友達を助けるのなんて、当たり前でしょう」
メアリちゃんの目がうるうるし始めたので、そっと視線をずらした。
メアリちゃんが私の理性を全力で壊しにくる……!
「そろそろ時間ですので、失礼しますね」
「はい!本当に有難うございました!」
ぴょこぴょこと愛らしく頭を下げるメアリちゃんに後ろ髪を引かれる思いながらも、私はトイレに足を向けたのだった。
すみません、転んで左手首をやったので執筆ができません……(´・ω・`)雪ぃぃぃ……
長引かないことを祈るばかりです。
ではまた|)ノシ