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3,無理でしてよ!(お嬢様風)

書き溜めているわけでもないのに衝動的に放出するからストックがなくなるんですよね……ええ、知ってますとも。

では、3話どうぞ。

(じい)

「はっ。では、行きますぞ」


朝食を終えた私たちは、そのまま馬車へと乗り込んだ。滅茶苦茶派手な見た目にちょっと引いたけど、趣味は悪くない。

貴族特有の見栄というやつかな?

でも、これでも我が家の馬車は装飾は控えめらしい。

酷いところは、馬車の元の板が見えないくらい()()()()()()なのだとか。……乗るのやだなぁそれ。



お父様が声を掛けると、爺と呼ばれている、お父様の執事であるセバスが一声かけたのち、少しの振動とともに馬車が動き始めた。移動中は、あまり振動しない。


これも、貴族がお金をかけた結果で、普通の馬車はもっと揺れる。お金って偉大だね。


「我が家は公爵だからな、それ相応の見栄えが無いと色々と後ろ指をさされるものなんだよ」

「ええ、存じておりますわ。けれど……もうちょっと別のところにそのお金を回せばよろしいのに」

「ふふっ。ディー、その考え方を忘れてはいけませんよ?とっても大切なものですから」


道中騒動もなく、のんびりと団欒しながら高校へと向かう。


私は、微かな振動に、心地よさと若干の眠たさを覚えながらも、この後におこるであろうイベントに思いをはせていった。


***


~君の瞳を~、略してキミヒトは、ヒロインたちが高校に入学するところから始まる。

厳しい高校受験を受かった貴族の人だけが入れる、麗怜大(れいりょうだい)学園。



貴族の中でも、爵位によって、財力によって、子供の教育の質は大きく変わる。

貧乏貴族では、ひとりの家庭教師を雇うこともできない一方、裕福な貴族は一科目につき一人のエキスパートを呼んで子供に教育を施してもらうことが出来る。


だから、自然とこの高校には貴族の中でも爵位の高い人が多く入ってくる。


そんな中ヒロインは、身分が低いながらも独力で必死に勉強をして、この学校に何とか合格を果たすのだ。難関であるこの高校に入学が出来たのは、偏に彼女自身の才能と、努力のお陰。


ところが、それが気に食わない人も一定数いた。

彼女たちは、ヒロインが自分たちよりも身分が低いのを良いことに、呼び出しては言葉という刃物を突き刺し、ヒロインの心を折りに行った。


その現場を、偶々通りかかったディーナが彼女たちを追い払い、ヒロインを救うことでヒロインはディーナに懐くのだ。



そんなストーリーが、入学初日にあるのだけれど……。

今の私にとっては他にも大事なことがある。


それは、入学式の代表挨拶である!!


王子様も勿論、挨拶をするのだけれど、婚約者である私も、ついでにスピーチをしなければならないのだ。全生徒の前で!


――――無理……!


私人前に立つのは苦手なの!

なのになにそれ、全生徒の前でスピーチ!?

しかも王子様の婚約者だから失敗は許されない!?


止めて!!無理だから!!

両親が、「ディーのスピーチが楽しみだなぁ」「そうね」とか言ってるけど、無理だから!


重すぎる役目に私が震えていると、お父様がさらに爆弾を落とした。


「ディー、聞くところによると国王もいらっしゃるようだ。頑張れよ」

「まあ、大役ね。ますます楽しみだわ」


ひぃぃいいッ!?

嘘でしょ!?

国王様の目の前でスピーチしなきゃいけないの!?

それは大役どころじゃないから!もう拷問だよ!!


止めて、これ以上私のライフを削らないで!!

誰か、誰か助けて!!!!


***


私が悲鳴を上げていても、助けてくれる人はいない。

そもそも、貴族として考えると、スピーチを任されることは名誉。

断ったり、代理を用意したりするなんて考えられない、らしい。


……よし、他のことを考えよう。

きっと、直前になったらディーが出て来てくれる!


――――現実逃避しないでくださるかしら。


……なんだか、頭の中で叱られたような気がした。



ごめんなさい。


あの、反省してるし、頑張るから……ちょっとだけ、手伝ってくれない?


――――はぁ。まあよろしくてよ。


そんな呆れの声が聞こえた気がした。よし、これで頑張れる!ありがとう、ディーナ。


***

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