ノノカと圭介
思いついたら、思いのほか筆が進んだので、書いてみました。
展開が忙しく、せわしいのはご了承下さい。
ノノカと圭介
どこかの街のどこかの家に住んでいるただの高校生。
名前を只野圭介。 趣味は家で寝るか、外に出てブラブラしてのんびり過ごすこと。
平穏をこよなく愛する圭介は今日も自室で、先ほどおつかいのついえに買ってきた今川焼きと緑茶を食しつつ、部屋でのんびり過ごしていた。
「ああ~~平穏・・・イイネ♪」
とても青春時代をすごしている男子高校生とは思えない言葉である。
この少年。別に恋愛に勤しむことも無ければ、勉学に勤しむことも無く、部活に熱を入れることも無い。
そのため休日まっただ中、特に予定の無い圭介は自室でごろごろしているのである。
この男、別に友達がいない訳でもなく、クラスメイトにカラオケに誘われれば付いて行くし、バレンタインのチョコも毎年、片手で数えるくらいは貰っているし、学校のサッカー部や野球部、柔道部等のピンチヒッターを務めることもあるのだが・・・それでもどこか薄いのだ。
勉学も勉強をしっかりしているわけでも無いのに、常に成績は1位。教師やクラスメイトも秘訣を聞くが、「授業と宿題と教科書の読み返しだけです。」というだけである。
そして、体型であるが、顔も不細工では無く、モデルとまでは行かないが少し幼さを醸し出す瞳と整った顔立ちであるため、クラスの女子たちから少しだがモテている。
ただ女子と遊びに行くことと友達と遊びに行くことと一緒と思っているため、恋愛経験は無い。
つまりこの男コミュ障でも陽キャでも無ければ、ガリ勉でも熱血馬鹿でもない。
限りなく平穏を愛する普通の男である。
そんな平穏を愛する男の元に厄災がやってきたのだ。
「美少女は要りませんかーーーー!!!」
「帰れ」
「ごっふっーーーーーー!」
突然、部屋の机の引き出しから、少女が飛び出てきた。
その直後、圭介は一言呟き、踵落としを自称美少女に叩き込み、出てきた引き出しに押し込むと、引き出しを閉じ、手元にあったガムテープで引き出しを封印する。
圭介は安心したのか、そのまま床に座ると、中断していおやつタイムを再開する。
「・・・・・もぐもぐ」
「殺す気ですか!!!!」
「・・・やっぱりあんこはこしあんだな」
「無視ですか!! あと私は粒あんが好きです!!」
「ばっかお前あんなの歯に着くし、あんこの良さを殺しているだろ!」
「そっちこそ、粒あんのプチプチ感が分からないとか、何処の馬鹿舌ですか。あ~あ~こういう人がチョコミントを歯磨き粉とか言うタイプなんですよね!」
「いやあれは歯磨き粉だろ」
「はああああチョコとミントのベストマッチ! な加減が分からないとか、どこの宇宙人ですか!! あと今川焼き美味しそうなんで一つ頂いても・・?」
「あとうぐいすあんしかないけど、それで我慢しろ」
「うぐいすあんですか・・・これはこれで・・はむはむ♪」
いきなり会話が超次元に展開し、圭介の向かいに座り、うぐいすあんの今川焼きを食べる自称美少女。
圭介もその場のノリに流しつつも、近くにあったコップにお茶を入れ自称美少女の前に置く。
「で、お前いきなり何? 痴女かなんか、けったいな格好して現れて、うち美少女は間に合っているけど?」
「え! そうなんですか!? ってそうじゃありません!! いきなり美少女を踵落としするとか!」
「は、だってお前、いきなり、机の引き出しから初登場とか、どこの猫型ロボットですか? ただでさえ、この家、その小学五年生の家に構造似ているから、こういうことされると作者も俺たち登場人物も困るんですよ! っていうか、てめえの格好が一番問題なんだよ!」
「はあああ!! 私の何処が可笑しいんですか!! どう見ても未来からやって来た青髪ロングでポニーテール身長160cm上からバスト90ウエスト54ヒップ85の猫耳尻尾付き和装フリフリメイド美少女じゃ無いですか!!!」
「設定盛りすぎ君なんだよ!! お前はス○バのメニューか!!」
圭介はそう怒鳴って床を右手で叩く。
目の前の設定盛りすぎ君な美少女は訳が分からないといった様子で圭介を見ている。
「っていうか、お前の現在の存在は小学館に見つかると不味いんだ。だからお前はこの一話で降板だ」
「はあ、ちょ! まだ1600文字すら書いていないのに降板とか、どんだけですか!!」
「だってお前、その格好のみならず、そのエプロンのでかでかとしたポケットから何か道具出すんだろ?」
「いえ、これはただのポケットです」
そう言って、美少女はエプロンのポケットを広げると、中身が空で普通のポケットであることを証明する。
その様子を見て、圭介は安心して息を一つ吐いた。
「ああちょっと安心した」
「安心して下さい。道具はこの膝上10cmのスカートの中から出てきます」
「安心できねえよ! おい安心を返せ! この安心詐欺!」
「名前は「四次元スカート」と申します」
「さらに危険度上げるな!」
「良いじゃ無いですか四次元スカートっ! 大体四次元なんて言葉どこぞの使徒や怪獣だって使ってますよ!」
これ以上この自称美少女の口を開かせるととんでもないことになりそうなので、圭介はこの自称美少女が何しに来たのかを聞くことにした。
「で、お前は何でここに来た、目的は、理由は?」
「まあまあ、落ち着いて下さい圭介さん」
ドッジボールのように言葉を投げていく圭介に焦らない~焦らない~と声を掛ける自称美少女。では!とかけ声を上げると、自己紹介を始めた。
「お察しの通り、私は未来からやって来ました青髪ロングで以下省略!のメイド美少女ロボット「ノノカ」と申します。あなたを健全な意味でもエロい意味でも奉仕するためにやって来ました!!」
「よし玄関は階段を降りて、右に曲がって一直線だ。どうぞ~」
「何でですかーーー!!!」
圭介の返し、声を挙げて叫ぶノノカ。
「やっと自称美少女の紹介が取れて、名前呼びされたと思ったら、この返し圭介さんはドSですか!! っていうか、美少女が奉仕するんですよ。それにロボットといっても、私の体は骨格以外は人工生体となっています。しかも最・高・水・準で、そこら辺の綺麗で止まっている女なんかよりも遙かに最高のボディですよ! しかも子供だって出来ます!」
「もうロボ要素無いじゃん」
「そんな究極美少女を好きなように出来るんですよ」
「ふ~~ん」
「あ、そこは「ん、今何でもって言った?」ぐらいの返しが欲しかったです」
突如として、ボケボケするノノカに対し、圭介は顔をしかめつらせ、その場から立ち上がり、向かいに座っているノノカの頭に左手を置く。
突然頭を置かれたノノカは少し、ビックリして身をたじろぐ。
「え、え、突然なんですか圭介さん。いきなりなでなでとかもうさっそくベッドインします~? あ~でもこの内容はノクターンの方で・・・え、何か手が光って、え、手が、圭介さん! 何か、手がめっちゃ光ってますよ!」
ノノカの頭に触れた圭介の左手は突如として、青白く光、ゆらゆらと波動の様に波がうねっている。ノノカの声もお構いなしに圭介は驚愕の言葉を口から出す。
「ふ~~ん、俺の遺伝子を取りに来たのか」
「!!!!!!!!!!!!」
その言葉にノノカは声にならない悲鳴の声を挙げた。
ノノカの目的・・・それは未来の科学で発見された圭介の謎の力を遺伝子とした採集、あわよくば赤子を作成し、未来に持ち帰り、さらなる未来への発展のために研究することだった。
ノノカはそのために作られた。
ただその男を籠絡するために作られた
だがそのことに嫌悪も悲哀もない。
なぜならノノカはロボット(都合の良い道具)だから。
「じゃあ、その真実(未来)は無くなったと・・・」
「へ・・・・」
突然の圭介の言葉にノノカは気のない声を出す。
すると、圭介は空いている右手の親指、人差し指、中指を広げ、自身の顔の横に持ってくると、手首をドアの鍵を開けるかのように捻る動作をする。
何か古い時計の針が動いた様な、動いている歯車に何か新しい歯車を組んだ様な音が体の奥から音が響く。
2~3秒後、圭介は元居た床に横になる。
「何をしたんですか・・・」
「未来を消した」
「は・・・」
「お前を通して、俺をどうにかしよううとした連中の未来そのものを消した。だからもうお前の目的は無くなったってことだ」
「・・・・・・」
何を言ってるんだこの男は・・・・
開いた口が塞がらないとはこのこと。
「え、じゃあ私は・・・・」
「そうだな・・・もう今のお前はロボット(道具)じゃなくて自称美少女(一人の少女)だな」
「なんですかそれ・・・」
圭介の言葉に小さく笑い返すノノカ、何かから解放された衝動からか、目からゆっくりと涙が流れる。
「ロボットも泣くもんなのか?」
「ええ。お嫌いですか?」
「いや、人間より綺麗だよ」
そう言って、圭介は少し笑う。
ノノカも続けて、笑う。
只野圭介は平穏を愛する。
それは未来を消してでも最優先される。
早めに2話も投稿します。
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