1/2
0 プロローグ
0. プロローグ
「ねえねえおばあちゃん、魔女の海のお話しして!」
ブロンドの三つ編みを揺らして少女は老婆に駆け寄る。
窓際の陽当たりの良い椅子に座っていた老婆は微笑んで少女を迎えた。
「シエラはこの話が大好きなのねぇ、先週もお話ししなかったかしら。」
「大好きよ!だってとても素敵なんだもの!」
少女は興奮して幼い眼を光らせる。
「ひとりぼっちの魔女は運命の騎士と出会って海の向こうで幸せに暮らしましたって、とても素敵じゃない!」
「そうね。とても素敵な最後ね。」
老婆の笑顔が少し陰り、小さい声で呟く。
「本当の最後もお伽話のように素敵な最後なら良かったのにね…」
少女は祖母を心配そうに見つめた。
「おばあちゃん。どうしたの?
具合悪い?大丈夫?」
老婆は穏やかな顔で少女を見つめた。
「大丈夫よ。
ちょっと昔を思い出してただけ。
それじゃあ話しましょうね、昔々…」
老婆は優しい口調で話す。
物語の基になったあの日々を思い出しながら。
ーこれは幸せなお伽話の魔女と騎士の本当の物語ー




