~過去話 影山さん登場 一冊目
高校の夏休み、夏休みにうかれて読書三昧をしたい支倉 香
大学への進学に後ろ向きな彼女に出会いが訪れる
明日から夏休み!宿題はあるけれども、一学期のテストは数学と体育と歴史はのぞいて、評価高かったからこころおきなく読書出来る!
でも、夏期講習は受けなきゃダメだっていわれて、取り合えず申し込んだけど、千駄ヶ谷まで通わなければいけなくなった。
テストは良い点だったのになぜ、第一志望の横浜の予備校じゃなくて、千駄ヶ谷なんて進められたのだろう?
解せぬ。
大学は行けるとこで良いのに、成績良すぎたかな。
電話でお母さん横浜より、支倉さんは千駄ヶ谷の方が伸びます!
なんて言われて、その気になっちゃったんだけど、どこで受けても同じでしょう。
英語と日本史だけで良いのに古文と現代語と漢文はいらないと思うのに、お金がもったいない。
そのお金で一体何冊の本が買えるか、その方がよっぽど有意義なお金の有効活用だと思うのになあ。
アルバイトも週末だけなんて、買いたい本がいっぱい見つかったらどうするの?
!?参考書代って貰えば良くない!
と、悪い思い付きに、にひひと笑う。
今日も駐輪場とは、反対の通りを渡って、イ・ゲリに向かう。
赤い銀行の看板を眺めながら、横断信号のボタンを押す。
なんで、みんなボタンを押さないのだろうと、思うぐらいの人の行き来があるのに、なぜか駅前のこの信号のボタンは忘れ去られている。
いっそうのことボタンなくしてよいのではと思う。
東急のバスが道をいっぱい使って右折してくる。
バスが通り過ぎたら歩行者信号が青に変わった。
渡らなきゃと、狭い歩道にひしめいていた人とともに駅の南に足を進める。
渡ったらすぐに左折。
銀行の前を通りかかると寒いぐらいのエアコンの冷気が体に当たる。
ヒヤッと少し驚き、
視線をあげる。
遠い空の向こうには、
青い空と大きな入道雲がにょきにょきと迫り出していた。
汗ばむ制服の胸元を少し風を通して、滲み出した汗を少し逃がす。
不法駐輪の自転車が並ぶ店先をかわして、イ・ゲリの自動扉をくぐる。
外より幾分か涼しい程度の店内に気分が和らぐ。
一階には店長と長谷川さん?最近入ったアルバイトの女性が文庫本のカバーを折る作業をしながら、雑談をしている。
本間さんは二階かな?と思いながら、階段を二階に上がる。
あ、いたいた!本間さんだ。
まだ、昼過ぎなので一人でレジ番だ。
男の人としゃべってる。
知らない人だ、茶髪でちょっと怖い感じの若い男の人だから、本間さんに会釈だけして後で話しかけようっとしたら、本間さんが嬉しそうに
「支倉さん!ちょうど良いところに来た。彼に国語の勉強の仕方を教えてあげて!」
はぁ、なんで見ず知らずの人に国語の勉強を教えなければいけないの?
国語なんて誰でもできるものじゃないの?
「本間さん!国語なんて、日本語読めれば誰でも出来ますよ?」
と私が言うと茶髪の男の人は驚いたような顔をして、本間さんに顔を向けて嫌そうな顔で
「こんな高校生に聞いてもわかるんですか?本間さん、俺、真剣なんですけど!」
ぐぬぬ、この茶髪め!私をなめているのか。
ぎゃふんと言わせたい!
何か良いものは?
そうだ、全国模試の結果を見せてあげよう!
「私これでも国語は得意ですよ!」
と自信満々で、全国模試の通知表を見せる・
茶髪は疑わしそうに、私の通知書を見る。
疑いの顔は徐々に驚きの顔をして
「全国一位だと!・・・でも、どうしてほかの科目はそんなのではないのに!おかしい!」
っと、ほかの科目は恥ずかしいので
「返してください!」
と茶髪から通知表を奪った。
本間さんは茶髪の紹介をする
影山 翔さん
青教大学の一年生だそうだ。
へー、見かけにはよらず優秀じゃん!
でも、大学生なのになんで国語の勉強を?大学入っても国語の試験あるのかな?
大学って仕事できるように専門の勉強をするところのはず・・・
「進路間違ったんですか?今更、国語の勉強が必要なんて、大学の授業で国語が必要なんて聞いたことありませんよ。」
と、私の見解を述べる。
影山さんが困ったような恥ずかしいような顔をして重い口を開いた。
「・・・俺もそう思ってたのだけど、前期の試験のレポートであまりにも成績がひどくて、取れなかった単位が多すぎて、取れなかった単位の講師に、君は文章が拙い、国語を勉強しろって言われて、仲の良かった高校の友達の本間に聞いたら、兄貴に聞いた方がよいって言われてここにきたのだ。」
本間さんに弟がいたのか、一度紹介してもらい、おすすめの本を教えて欲しいものだ!
本間さんはいつものようににこにこしながら会話に入ってきた。
「本の内容ならいざ知らず、国語の成績なら自分より支倉さんが、現役だし、実戦的な方法を教えてくれるはずだ」
え、っと、そんな方法知らないです。
「本間さん!私、実践的な方法なんて知りません!本をたくさん読んでいたら、学校の成績が良くなっただけです!」
影山さんはむ、っとした顔で。
「本ならたくさん読んでいるけど、一向に文章力は良くならないぞ!」
おかしいな?私だけなのかな?
どんな本を読んでいるのだろう?
「ちなみにですが、どんな本読んでいますか?」
と、他人の読んでいる本の情報も私の好物だ。
ちょっと驚いたようにな顔をしながら、影山さんは肩から下げているトートバックを床に置き、背負っているバックパックのチャックを開けた。
ほうほうあれが、大学の教科書かあ、分厚くて難しそうだと思っているとその中の一冊を手渡してくる。
ずいぶん読み込まれているが、なんの本だろう?付箋もたくさん貼ってあるし、表紙も取られている。
C言語入門?
読んだことがない本だ。
ぱらりとページをめくると様々な書き込みとラインマーカーで線が引かれている。
読み解こうとするがどうやら数学の知識が必要でさっぱりわからない。
「影山さん、これ一体何の本ですか?私、まったくわからないのですが。」
と困って聞くと
影山さんは嬉しそうに
「これはプログラム言語の本だ。これがパソコンで使えると、できることがたくさん増える!」
これは本というより教科書です。
どうやら、私と影山さんでは、本の認識に大きな相違があるようだ。
読んでくれてありがとうございます。