SNSってなに?
本屋さんがなくなるということがわかりながらも、マイペースな支倉の帰宅後の様子
イ・ゲリを出て自転車を駐輪所に向かう。
二段ラックの上のところに止めたので、引っ張り出すのに力がいる。
少し上に持ち上げるようにするのがコツだ。
「よいっしょっと。」
ガシャン!とならないように気を付ける。
春に買ってもらったばかりのチェレステカラーの自転車を出す。
チェレステはイタリア語で青空を意味するそうだ。
自分はかわいい色だと思ってひとめぼれだったのだが、高い!とお父さんに飽きられてしまったが、無事に大学に入学できたので入学祝いとしてもらった。
入学祝いは大学の友達は結構高いものを買ってもらっているそうで高級ブランドのバックなどこれ見よがしに見せる人もいる。
私は、本がいっぱい入る実用重視なバックパックを高校生の時から愛用している。
おしゃれはまだ早い気がするから、スカートもあまり持ってない。
だから、彼氏もいないのかもしれないが、今は本を読むことと授業についていくのに精いっぱいだ。
自転車を漕ぎつつ夕方に差し掛かった、町を進む。
まだ紅葉は先のようだ、つい先日まで残暑が厳しかったが、講義が始まってしばらくすると秋の訪れを感じるように、夜は急激に寒さが増すようになり、アルバイトがある日は必ず上着が必要になるのだ。
そういえば、影山さんもイ・ゲリでおんなじ反応したと聞いたから、後で携帯電話のメールで聞いてみよう!。
影山さんは大学は違えど、同じインターカレッジサークルのメンバーだ。
理系で、最近はインターネットを使ったプログラムに夢中の三歳年上で、茶髪で耳にピアスつけてるけど学生のうちから起業しようとしている野心家だ。
年上だけあって非常に頼りになる、サークルの幹部の一人である。
サークルのみんなにも相談しよう!と思っているうちに家に着いた。
家は最寄りの駅から自転車で約十分の中古リフォームの一軒家です。
4LDKの一家三人の生活にはちょっと大きいけど、一家全員本好きなので、一部屋は図書室になっている。
私の買った本は、なるべく自分の寝室に置きなさいと、お父さんとお母さん二人から、これ以上蔵書を増やすないわれている。
無理です!
毎日のようにほしい本は増えてくるし、読んでも読んでも飽きることがない!
お母さんのカエルのような緑色のデミオは止まっているので帰ってきているようだ。
白い玄関の扉の鍵を開けて家の中に入る。
家の中は、すこしあったかい。
フローリングの廊下を抜けて、リビングのドアを開ける。
オープンキッチンにお母さんがいた。
「ただいま。」とお母さんに声をかける。
「あら、今日は早いのね。大学の授業サボっきたんじゃない?」
お母さんは長い髪をポニーテールにして、オープンキッチンで夕飯を作っている最中だ。
匂いからしてホワイトシチューだと思う。
気分が落ち込んでいるときに好きな夕飯は、助かる。
「さぼってないよ4コマ目の講義が講師のお休みで早く帰ってこれたからだよ。」
と否定する。
後期の授業が始まって、一般教養以外の、来年の講義の情報を得たいなあと思っていることを、お母さんと話す。
「私では相談に乗れないな。香の友達にでも相談しなさい。」
お母さんは料理の手を止めずに答える。付け合わせはシーザーサラダだ。
一通り完成したのか、お母さんは手を止めて。
「そうだ、サークルの先輩に相談しなさい。同じ学生同士の方がよく教えてくれるでしょうよ。」
そうだ!影山さんに相談したいこともあったと気が付く。
「お母さんありがとう!」と自分の寝室に向かう。
「夕食は7時半ごろになるので、そのころには部屋からて降りてらしゃっい。」
お母さんから声がかかる。
リビングのドアを閉めて、二階の階段を上がる。
部屋に戻ると、部屋は少し昼間のあったかさを残している。
電気をつけて、窓を開けて網戸にし、外の空気を取り込むとともにレースのカーテンをしめる。
勉強机にデイーバックを肩からおろし、教科書とノートと今日買った本を出し、サイドポケットから携帯電話をだす。
携帯電話を携帯してないって、友達に言われたことがあるけど、大学では講義で顔を合わせるし、必要なくてもみんなメールをくれる。
私は携帯電話のブルブルが苦手だし、大学の先生に叱られるのが嫌なので、必要になったら出す、必要になるまで出さないと鞄に放り込んでいる。
今日のメールは・・・
やっぱり影山さんから三回もメールが来ている。
最初のメールは
イ・ゲリのことで話がある。
お昼頃のメールで短い。
影山さんのメールはそっけない。頭の思考が理系だからなのか短く簡潔だ。
二つ目も同じだ。今度は30分前だ。
影山さんもイ・ゲリのこと心配なのかうれしくなる。
三つめは
URLがついてるなんだろう?初めて見るものだ。
最近は、インターネットをつかって悪いことをする人が増えている。
と、先日の友達との会話を思い出して、セキュリティーのあるパソコンにメールを転送する。
携帯電話だとインターネットにつなぐのに情報量が多いとお金かかるしね。
机の上を片付けて、お父さんのおさがりのノートパソコンを出す。
ちょっと古いけど、お父さんがいじくってハードディスクをなんか早いものに取り換えてくれたりして、新しく売っているノートパソコンより普段使いはこれの方が良い。
と、お父さんに言われたのでつかっているけど、
マッドブラックの実用性重視のパソコンは外に持っていくとき恥ずかしいのだ。
もっとピンクや赤やせめてシルバーの華やかなパソコンならなぁと思っいながら、パソコンを開く。
OSの更新が一分ぐらいで終わり、メールを開く。
新しいメールは大学から二通と私の携帯からの一通だけだ。
大学のメールに目を通すと講義のお休みのメールと履修登録の提出の催促のメールだった。
両方とも遅いよ!もう!
大学の学部の掲示板でかいてあったから、情報処理棟で履修要綱は提出したし、教室で待っていると誰も来ないからすれ違った友達から聞いて、休講だと分かったのにずるい。
とぷんすかしながら、影山さんのメールのURLを開く。
いきなり、どっかのホームページに飛んだ。
横浜てらこや?
何のことかわからない、けど、パスワードとかログインとか書いてあるから勝手に入れないホームページだ。
怖くなって、影山さんに電話を掛けた。
3回目の呼び出し音が鳴って
「はい、影山です。どうした支倉さん?」
聞きなれた、影山さんの声にホッとしつつ、今起こっている事を説明する。
メールに書いてあるURLを開いたら、変なホームページに飛んだこと。
最近インターネットで悪いことをする人が増えているので巻き込まれて、お金を取られるのじゃないか心配なことをだーっと話す。
「落ち着け!あのホームページは、俺が作った会員制SNSだ!」
と焦れったいように影山さんは言う。
ホッとしたのもつかの間SNSとは何のことだろう?影山さんに聞いてみる。
「影山さん!SNSってなんですか?プログラムのことはわかりませんよ?」
「・・・ああ、支倉さんはSNS知らないか、UIのデザインと説明ぐらいトップページに説明を乗せなきゃならないな。」
と影山さんはぶつぶつ言いながら、SNSのことを教えてくれる。
要は横浜てらこやは、影山さんの知り合いの掲示板で、近況報告や、大学の情報や、愚痴などをインターネットで書き込むものらしい。
「でも、会って話ができるのにそんなの必要なのかわかりません。」
と影山さんに尋ねる。
「支倉みたいにすぐメールを読まない奴や、遠くの田中や長谷川さんとも一緒に話す場が必要だと思って作ったんだ。」
と影山さんはさらりと言ってくる。
なんだかわからないけど影山さんすごいです。
よんでくれてありがとうございます。