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町一番の本屋

いつものように大学の帰りに本屋さんに立ち寄り好きな本を読み、買っていくのが日常だと思っていた、そんな日常がガラガラと崩れだすような思いながらもいつもの本や巡回をやめることはさらさらなかった。

いつもの様に自動ドアをくぐり抜けようとするときに、ふと営業時間の看板に貼ってある紙気がついた


永らく御愛用頂いたイ・ゲリですが、諸般の事情により4月23日に閉店させていただきます。


突然の出来事だった。

今までここで買って、読んだ本の内容が走馬灯の様に駆け抜ける。


思わず知り合いの店員に話しかける。

「本間さん!ここ無くなるって本当ですか!」


本間さんは9年前のオープンからずっといる今では店長より長い付き合いだ。

背は高いのにひょろっとしてて優しい顔で、私の欲しい本を魔法の様に教えてくれるアドバイザーだ。


「本当だよ。支倉さん、半年も先の話だよ慌て過ぎだよ。それよりもこの前探してた、簡単なお菓子作りの本入荷してみたよ見る?」


私の大切な馴染みの本屋さんが無くなると言うのにいつもと変わらない。



「お店、無くなっても良いの!」


私は大きな声で、本間さんを見つめた。


いつもと変わらないこの優しい顔もここがなくなったら多分もう会えない。


去年までは同じ町にすんでいたから、本間さんの休日でもたまにスーパーマーケットで偶然あったりして、よく読んでる本の情報交換してた。


でも、同じ本屋さんの佐々木さんと同棲すると決めて、白楽に引っ越ししてから、この町のこの本屋でしか会わなくなった。


本間さんはため息ついて

「支倉さんも影山君とおんなじ反応でびっくりだよ。来年の春までここにあるから安心してよ。」


安心できないよ!春にはお店なくなっちゃうのに、本間さんは危機意識低すぎる。

感情にまかせてなくなったらすごく困ることを伝えたのにのらりくらりとかわしていく。


10分ぐらい話してやっとあきらめたような顔でひと言。

「時代の流れだよ・・・」

と押し出すように言った。


納得できないながら、レジが混んできたのでその場からはなれた。


今日は気分が、かっかして眠りにつくのが遅そうだから、ちょっと難しい本が欲しいなと思いながら

二階へあがる。


二階フロアはグループ会社の喫茶店と、まんが、芸術書、参考書、と洋書のコーナーだ。

まんがは、シュリンクに包まれているけど、お店のおすすめ本は、一話だけ見れるようにしてある。


まんがコーナーのマイナー出版社から見ていく。

気になっている灰色こねこの作者、おこげの新作を発見した。


「新作だけど、私は灰色こねこの続きが読みたいのに、表紙のイメージからして内容は全く別ジャンルだろな。保留にしておきましょう。灰色こねこ売り上げわるいのかなぁ。続きがもう九ヶ月もでてないよ」


まんがのメジャー三大出版社は、コンビニの立ち読みで網羅してるが追っかけてる作品は来週まで発売されてないはずなので発売日が近い作品だけ平台の新刊コーナーを見る。


なんで見るのかというと、このお店はフライングゲットできるお店なのでたまに発売日より前に並んでいる事があるのだ。


しかし、まんがは今日は買うものがなかったので、参考書コーナーへ。


参考書コーナーは、大判まんがの隣の、一番小さなコーナーで、最近は大学の生協の方が冊数は多く、授業で使う本も取り寄せする必要がないので、大学生協をつかっているが、売れてる一般の教養書はこの本屋さんの方が品揃えはある。


新しい英単語集を流し読みしてみるが、どうもしっくりくるものがない。


受験の時に私のアドバイザー本間さんに聞いてみたことがあるのだが、何とかメソッドとかあるが、内容は大して変わらないが、その人に合う参考書を見つけるの難しいとさじを投げられた。


その時の癖で徘徊ルートに入ってるが今日も自分に合う参考書はなかった。


二階は買うものはあれだけだなと洋書コーナーに向かう。


買うものは決めてある。直木賞作家の日本の出版社の文庫本だ。

本物の洋書は分厚くカバーが無いのと紙質に違和感があるので手を出したことがない。


お目当ての作家の本は立ち読みもしてるので一直線だ。そろそろ腕がだるくなってきたのでお目当て本だけ持って一階に向かう。


今の時間は二階のレジには人がおらず、警報装置は作動していないので一階のレジで精算だ。


一階は今日は雑誌は腕がだるいのでパス。多分腕がプルプルしてしまうのだ。

お宝のあるライトノベルコーナーへ ゴーゴー!!


ライトノベルコーナーは入り口近くの一番背の高い本棚にある。


背の低かった中学生の時は踏み台を使ってたけど今は必要ない。


なぜなら、持っている本と読んだことがあるけど買わなかった本だけしか無いのだ!


本棚にあるのは平台の新刊が並び替えるときにあった刊行済みの本の中でまだ売れると判断された選ばれし本達なのだ!


ちょっと興奮してきたけど、平台に並ぶ最新刊を改めて眺める色とりどりの本達を眺める。


あ、ラクダ暴走先生の絵だ!これキープ。他にはないかなと見渡してみるが琴線には触れるが、明日の夜また来て判断しようと思う。


今日はもう読まない!


今日はこの二冊にしようと本間さんのレジのところに持っていく。


「支倉さん今日は早めだね。気になる本有った?」

と本間さんは私の本を確認する。


「英語の本なんて、また留学でも考えているの?・・・次はこれかああラクダ暴走先生で選んだでしょう?ちょっと刺激多いけど良い本だよ!」

本間さんは自信ありげに話してくる楽しそうな顔から、お墨付きだね今日の本。


あとは会計だけと思ったら本を出してくる。


!?


「あ、お菓子の本忘れてた!」


本間さんはにこにこしながら

「支倉さん内容見てから買う?買わない?」


「今日はなんだかいろいろあって疲れました。本間さんのその顔みたらお墨付きだから読まずに買います。今日はイ・ゲリでは読みません!」

と答える。


会計では三冊だけどお菓子の本はカラーの大判の本だけあって結構する。


でも、最近自覚してきた女子力のなさの返上のためと自分への投資と思ってお金を渡しお釣りを受け取る。


自動ドアを潜り抜けると急にやってきた寒さにもう秋深くなってきたなと紅葉の始まりはいつかなと思う。


振り返りイ・ゲリの閉店の知らせが気持ちをざわざわさせる。


読んでいただきありがとうございます。

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