こんな世界で生きていく
どうも、皆さまお久しぶりでございます。
アイディアが出てきましたので、書いた次第でございます。皆様が面白いと思っていただけたら幸いです。
「うえぇぇん!!」
あたりに響くのは大音量の子供の声。複数人の子供たちと、その中にいる保護者のような青年も泣いている女の子を前にオロオロと手足を動かしている。
「泣いてしまったー!?やっぱり暗くなりだしたし、リミには怖かったか」
「何やってんだよ、アキト!あんだけ大丈夫、大丈夫って言っておいてそれかよ」
「皆居るし、怖くないと思ったんだよ!?つか、リリ!お前、妹のリミが泣いてるんだぞ、何とも思わんのか!」
「俺に当たるんじゃねーよ!こうなったのは全部アキトのせいだろ」
アキトと呼ばれた青年とリリと呼ばれた少年が言い争い、泣いているリミ以外の子供たちもその様子を見て泣きかけている。
だが、青年と少年、泣いている幼子い以外の子供は普通の子供ではない。
頭頂部からは動物のような耳が。尾骨、お尻の辺りからは動物の尻尾のようなものがゆらゆらと揺れていたり、体の色が浅黒く、それとは正反対の白い波のような紋様が体にあったり、腕が正常な腕ではなく、腕自体が鳥の翼のようになっていたり太股から爪先まで鳥の脚のようになっていたり、外見は普通の子供と変わらないが腕がもう一組脇から生えるように存在している子供もいた。
そのような子供たちが青年と一緒にいる。だが彼ら彼女らは真っ当な方法でここにいるわけではない。
家族に捨てられ、売られ、居場所が無くなりここに辿り着いた子たちが殆どだ。初めは心を許してくれなく、口もきいてくれなかったが今では仲良くなったと思っている。
「おー、待て待て……よーしよし……」
アキトが泣き喚いてるリミを抱きしめ、あやす。始めは泣き弱っていた様子だったが、次第に泣き止み笑みが溢れた。
「うんうん、リミは偉いなー……それに比べてリリ、お前は」
秋斗がリリに向かって残念な子を見るような視線を向ける。それに、たじろいだリリは狼狽えながら反論する。
「な、なんだよその目は!俺が悪いってか、俺は悪くないだろっ」
「いいや、悪いね!妹が泣いているのに慰めもしないダメお兄ちゃんめ!皆、笑ってやれ笑ってやれ!」
秋斗とリリが言い争う。その光景はこの孤児院にとってはいつもの光景なのである。その光景を見て子供たちは笑みが漏れ、リリは秋斗に釣られて皆が笑ったと勘違いし、ショックで項垂れる。
「ふぅ……さて、皆帰るよ」
秋斗は子供たちが落ち着いたのを見計らって声をかけた。その時、リリの頭をくしゃりと撫で、リミと一緒に手を繋ぐ。子供たちは秋斗の後をついて行きながら、次は自分とと催促する。
「ーーーーーー」
子供たちを見ながら、鼻歌を歌う。タイトルは忘れてしまったが、元居た世界では割とメジャーな曲だったなと口ずさみながら思った。
「ねぇ、アキト」
「ん、どうしたクク?」
ククと呼ばれた獣人の男の子は秋斗の服の裾を引きながら少しだけ不安そうに尋ねた。
「明日も、今日みたいに楽しい日になるかな」
「なるよ。明日も明後日も……毎日だって楽しくなるよ。皆一緒だからね」
立ち止まってしゃがみ、ククの目線の高さに合わせる。そして安心させるようにそう答えた。
「さぁ、家に帰ろう」
リリと同じようにククの頭を撫でてから歩きだす。歩きながらまた鼻歌を歌う。子供たちは面白がって拙いながらそれを思い思いに真似しだし、小さな合唱が出来た。穏やかな時間がそこには流れていて、笑顔が溢れていた。