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妹はimmortal!?  作者: かふぇ
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第二話 登校!投降!?大事件!!

「……ちゃん……お兄ちゃん!」

聞き馴染みのある声とともに俺の体が揺れる。

「朝だよ!遅刻するよ!」

俺を起こそうとする声の主だが、瞼を開けるのは非常に困難だ。まだ眠い。

「起きないつもりなら……」

体の揺れが止んだかと思うと、温かい感触がもぞもぞと俺の隣に入り込んでくる。絡まる腕、脚。そして……

「お兄ちゃん……起きて……?フーッ」

柔らかい吐息が俺の耳を撫でる……。

「っって美代!!朝から一体何してるんだ!」

俺は妹のあまりに乱れた行為に驚き、飛び起きた。

「何って……お兄ちゃんが起きないから悪いんでしょ?」

「っつってもあんな起こし方はないだろ……」

「えへへ、確かにちょっと照れちゃうかな?お兄ちゃん、どうだった?」

美代はそう言って上目遣いで俺を見る。朝日を受けてキラキラと光り、けれど真っ黒な髪の毛。ち、近い……。

「どうって……どうもこうもないだろ。こうして起きましたよ。ありがとうございます」

「そうじゃなくて……気持ちよかった?」

「兄になんてこと聞いてるんだ!からかうのも大概にしろよな!朝ごはんできてるんだろ!は、早く食べよう!」

俺は美代のあまりの可愛さにノックアウトされそうになり、とっさに妹から離れて部屋を出る。

「はあ、せっかく勇気出したのに……」

後ろで美代が何かぶつぶつ言っているが、気にせず階段を下りる……。階段─────。

「なあ美代。昨日のことって、夢じゃないんだよな?」

ナイフに貫かれた手のひらが、血にまみれた妹の手のひらが、フラッシュバックする。

「うん、夢じゃないよ」

「そうか、そうだよな……」

昨晩、強盗が家を襲い、妹が不死身なおかげで助かった。起こったことはさながらファンタジーだが、あんなにリアルな夢、ないよな。

「だからさ……」

「ん?なんだ?」

「今日の放課後、一緒にお買い物行こう?」

神妙な面持ちで何を話すかと思えば、突然いつもの元気な美代に戻り、訳の分からないリクエストを申し出た。

「え?」

「だからさ、昨日の事件でパジャマが一個ダメになっちゃったの。新しいパジャマ買いに行くの、着いてきてほしいな〜って」

なるほど、そういうことか。突拍子のないようで、意外と筋の通った要求ではある。

「でもそんなもん、俺と一緒に行く必要あるのか?」

「昨日あんなことがあった妹を、一人で出歩かせるお兄ちゃん……」

こいつ、昨日はあんなにあっけらかんとしていたじゃないか。しかし表面上取り繕っているという可能性もあるし、放課後は暇だ。

「わーかったよ。一緒に行くよ。俺が悪かった」

「やったあ!じゃあ授業が終わったら迎えに行くね!さ、こんなところでいつまでも話してないで、朝ごはん食べよ〜」


我が家の朝ごはんは和食だ。なんでも、お弁当を作るときにご飯を炊くので、そちらの方が楽らしい。美代が起こしてくれるおかげで時間にも余裕がある。俺は優雅に味噌汁をすすっていた。

「そういえば、新しい友達とかはできたのか?」

買い物にまず兄を誘ったことが気にかかって、そんなことを聞いてみる。

「え?うん……まあ一人はできたよ」

「なんだ、随分自信無さげだな」

「まあなんというか……恥ずかしがり屋さんなんだよね」

美代は明らかに目を泳がせているが、そんなに問題がある友達なのだろうか。

「そうなのか。まあ友達がいるなら結構なことだ。ご馳走様。今日もおいしかったよ」

「私もご馳走様~。さっさと着替えてよね、またおとといみたいに走るのはごめんだから」

「了解了解」

俺は美代の小言を半分聞き流しながら、自室に戻って学校の支度を始めた。


「それじゃ、いってきまーす!」

「誰に言ってんだよ」

「えへへ、お母さんたちがいた時の癖がなかなか抜けないんだよね」

元気よく挨拶するのはいいが、俺たちがこの家から出たらもう、中には誰もいない。

「何してるんだろうな、両親揃って海外だなんて」

「お仕事でしょ。私が高校に入るまではお父さんかお母さんどっちかはいるようにしてくれただけ、私は感謝してるよ」

「まあ、それもそうか。親父たちも大変なんだな」

俺たちは学校への道を歩きながらそんな話をしていた。

「お母さんたちが頑張ってくれてるから、私たちも生活できてるんだもんね。それに……」

「それに?」

「な、なんでもない!さあ、ゴーゴー学校~」

なんだか高校生になってからというものの、妹の様子がおかしい気がするな。あ、そういえば。

「美代、お前、お弁当作るのとか負担になってないか?」

「ええ~?どうしたの急に」

「いやあ、なんか最近疲れてないかなって。学校終わっても寄り道せずに帰ってきて……」

「えへへ、心配してくれるのは嬉しいけど、大丈夫だよ」

「でも本当は放課後に友達とカラオケ行ったり、夜もドラマ観たり、朝ももっと遅くまで寝ていたいんじゃないのか?」

「だから……、私がいいって言ってるんだからいいの!……でもそんなに思ってくれるなら、お礼に手をつないでくれてもいいよ?」

「え?手をつなぐってこんな人の多いところで……まあそれが頼みなら……」

俺は人目もはばからず妹の手を握る。

「ふぇっ!!お兄ちゃん!何してるのこんな人の多いところで……」

「何って!お前が手を繋ぎたいって言ったんだろ!」

突然取り乱して顔を真っ赤にする妹をなだめて、手を離そうとするが美代はそれを許さなかった。

「ここで離したらもっと訳分かんなくなるでしょ!」

美代はぎゅっと握られた手を振り回して意味不明な主張をし始めた。

「なんねえよ!そもそも兄妹で手を繋いでる時点で訳分からなさはカンストだ!」

「いいの!なるの!とにかく一回やったことには責任もってよねバカ兄貴!」

「わ、分かったよ……。学校着くまでな?」

「うん……」

あまりの勢いに押されてしまったが、これはなかなか恥ずかしくないか?周りから見たら完全にカップルだろ。しかもまだ四月の上旬だぞ。視線が痛い。これで知り合いにでも会ったら……。

「あ……美代ちゃん、おはよう」

俺の心配は予想外の方向から切り崩された。栗色のショートカットで小さい身長、少しおどおどした様子も相まってまるでリスのような可愛さがある。美代の友達……そっちもあったか。

「おはようえみちゃん!」

「美代ちゃん……隣の人は彼氏?その……随分早いんだね……ってうあああ!!」

えみちゃんというらしい女の子は、突然腰を抜かして顔を手で覆ってしまった。あまりの展開に俺が兄だと訂正する暇は無い。

「えみちゃん!?どうしたの?」

「その……なんでもないんだけど、もしかしてそちらの彼氏の名前って"透"だったりする?」

「な、なんで分かったんだ!?」

俺は突然自分の名前をいい当てられて思わず叫んでしまう。確かにありきたりな名前ではあるが、当てずっぽうにも無理がある。どういうトリックなんだ。

「や、やっぱり……。そ、それじゃ私行くね。美代ちゃん、また教室で」

名前当て少女はすごい速度で走り去ってしまった。

「おい美代、今のが朝話してた友達か?」

「うん、えみちゃん。少し変わってるでしょ。たまにあんな感じになるっぽいんだよね~」

「まあ確かに少し変だし、名前を当てられたのも気味が悪いが、根はいいやつそうだな」

「"根はいいやつ"って、取って付けたような誉め言葉だよね。まあ私もまだよく分かってないんだけどさ」

とりあえず妹の友達だし褒めておくかという俺の魂胆は丸見えだったらしい。流石は妹だな。

「あ、そのえみちゃんに会ったら、ちゃんと訂正しておいてくれよ?彼氏じゃなくて兄ですって」

「う、うん。了解」

なんだかバツが悪そうにしているな。友達に兄と手を繋いでるところを見られたんだ、無理もないか。

「お、もう学校か。ドタバタしてたから早く着いたように感じるな」

「そうだね!じゃあまた放課後ね!お兄ちゃん!」

そういって美代は一年生の下駄箱に走っていく。まあ妹と手を繋ぐってのも……

「悪くないかな」

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