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マリヴェラ・ルールゥ

なんとか今週は出来ました

 マリヴェラ・ルールゥは貴族とは名ばかりの貧しい下級貴族の生まれだ。

 王より土地を拝領しているわけもなく、そういった大貴族に仕えて給金を得ている。もっともそんな貴族の中でもさらに下、何かしらの役職を与えられているわけではなく、有事の際の備えとして雇われているだけなので、雀の涙程度の給金しか得られない貴族だ。しかもそれでも金指輪の貴族なので市中で市民と同じ職に就くわけにもいかない。

 他の貴族たちに後ろ指を指されながら狭い庭で細々と野菜を育ててなんとか一家五人の食を繋ぐ、納税義務のない貴族ながらまともな収入もほとんど無いのでそこらの平民より酷しい暮らし。


 私が、頑張らないと……


 祖母の形見の天球盤を持つ手に力が入る。

 貴族の物とは思えないみすぼらしいローブも魔法武器である天球盤も祖母のお下がりであり、ルールゥ家にとっては唯一残された財産だ。

 ルールゥ家は代々魔法使いの家系だった。しかし血が薄くなりすぎたのかここ数世代ではマリヴェラと祖母しか魔法使いのクラスを持つ者は生まれていない。

 魔法使いが生まれなくなったから貧しくなったのではない、魔法使いが生まれるから貧しいのだ。

 魔法使いのクラスはルールゥ家の亜人汚れだ。人間種には珍しい魔法使いのクラス持ちで貴族となれば本来は宮廷魔法使いとして引っ張りだこだが、亜人汚れとなれば話が違う。敵国人種である亜人の血を引いているだけでスパイである証明とされるからだ。

 なのでせっかく取り立ててくれようとしてくれる大貴族に対して訳も言わずに断りをいれなければならない。当然それは好意を無碍にする行為であり、不興を買う行為だ。

 だからマリヴェラは冒険者として稼がなければならない。1人で一家の家計を支え、積もった借金も返済しなくてはならない。



 …どうしよう……


 周囲の生徒たちがパーティーを作る中、マリヴェラは少し困ったことになっていた。

 というのも、貴族と平民では身分が違い対等ではない。そのため一般的に貴族と平民がパーティーを組むのは雇用であり、貴族側に給金の支払義務が生じるからだ。

 詠唱を必要とする後衛魔法使いのマリヴェラとしては盾となってくれる前衛はほしい。だが貧しいマリヴェラに雇用費など払えるはずがない。

 一応、平民側から誘われたのならその限りではない。当たり前だが誘っておいて費用を請求するなど無礼以外の何物でもないからだ。

 これ見よがしに天球盤をちらつかせてはいるが話しかけてくれる者はなく、むしろ遠巻きにそのみすぼらしいなりを嘲笑しているのが聞こえてくる気がする。


 …うぅ……


 恥ずかしさに思わずうつむき視線を落とす。


 ……ダメだ。私が、私が頑張らないと…


 勇気を出してそっと視線を上げると不意に1人の少年と眼があった。


 …そうだ。少しだけ、少しだけ自分から話しかけてみよう!


 だがマリヴェラの足が一歩踏み出されるより先にその少年は友人らしき別の少年に話しかけられてしまう。


 あっ……


 すがる手が届かず力なくゆっくりと落ちていくように、マリヴェラの視線はまた床へと向かう。


 …私、ダメダメだ。


「…あの、すみません。」


 その時、自己嫌悪に苛まれそうになったマリヴェラに突然声がかけられた。


「ひゃいっ!!」


 驚いて顔を上げるとすぐそばに先程の少年が立っていた。


「…ひゃい??」


 しまった。驚きのあまり変な声が出たが、そのせいかものすごく怪訝そうな顔をされてしまっている。


「…何かしら?」


 平静を取り繕い、努めて何事もなかったかのように答える。


「はっ、申し訳ございません。自分はリゼル、こっちはトムとカナリアです。」

「マリヴェラ・ルールゥよ。マリィでいいわ。」


「よろしくな! マリィ!!」

「ばっか!おまっ!!」


 親しげに挨拶するトムをリゼルが慌てて止めた。それとなく指輪を指しているところから彼はマリヴェラが貴族であることに気がついているようだ。

 それに気づいたカナリアも慌ててトムの頭を押さえる。


「すみませんすみません、馬鹿なだけで悪気はないんです。」

「おいっ馬鹿ってなんだ?それにマリィがいいって…」

トム(バカ)は黙ってて!!」


「本当にいいの。気にしないで。」


 貧しい名ばかり貴族なのにそこをこだわってはむしろ虚しいばかりだ。

 しかし笑顔を向けるマリヴェラにカナリアはきょとんとした表情を浮かべる。

 名ばかりの貴族にとって金指輪は唯一の誇れるもので、むしろそこに固執するものは珍しくないからだ。


「マリヴェラさ…ううん、マリィさん、よろしくね。」

「ええ、よろしくカナリア。」


 女の子同士、手を取り合って笑いあう。


 よかった、これでパーティーもなんとかなりそ…


「すみません、その前に1ついいですか?」


 リゼルが小さく手を上げた。


 そういえば彼は真っ先に指輪に気づいていた。


 はっとして金の指輪を咄嗟に隠す。

 現状、マリヴェラははっきりパーティーに誘われたわけではない。そのためこのタイミングなら自分達の売り込みであり、雇用費の話を切り出しても失礼にはあたらない。


「実はパーティーを組むにあたり、ルールゥ様にはお話しないといけないことが…あたっ」


 ポカッとトムがリゼルを叩いた。


「かってぇぞ、リゼル! マリィがいいってんだからマリィって呼んでやれよ。俺たちもう仲間だろ?」

「そうよ、マリィさんが可哀想でしょ!」

「いや、そういうわけには…」


「私からもお願いするわ。」


 彼らの優しさを利用するようで嫌になるが、家族のためだ。なんとかなし崩しにしてしまいたい。


「…はぁ、わかった。

 で、マリィに話さなきゃいけないとこだが… 実は俺とトムが前衛なんだが…2人ともクラスレスなんだ。一応トムはノークラスで学院に通ってる間にクラスを覚える可能性が高いんだが… 俺は既に4枠埋まってる。」

「「あっ…」」

「えっ?」


 前衛がクラスレスというのはとても危険だ。


「いやっでも俺はいずれ勇者になる男だし、リゼルもムビョっ?ムビョーシ?が使えてクラス持ちとも渡り合えるぞ!」

「そう、それにあたしは狩人のクラスがありますからマリィさんには…」

「マリィは貴族だからな。きちんと話さず大怪我させたら大変なことになるぞ?」

「「……」」


 確かにその通りだ。

 カナリアが少し困ったような、悲しそうな眼を向ける。


 でもよかった。


「私は普通土魔法使いのクラスがあるの。土魔法は防御にバフをかける補助魔法が使えるわ。」


 これで2人の危険を少しだけ和らげてあげられる。


「本当か!?」

「ええ、クラスレスでも下級前衛クラス程度の防御力になるくらいの効果があると思うわ。」


 その言葉にトムとカナリアは顔を合わせて驚き喜ぶ。


 私も、ちゃんと話した方がいいのだろうか…


「そのっ…」


 しかし雇用費を払えないことを話そうとしたマリヴェラの唇にリゼルが軽く指を当てると小さくしぃーとジェスチャーした。


「なあトム。是非ともマリィをパーティーに勧誘したいんだが…」

「っ!?」


「ああ、そうだな。マリィ、俺たちのパーティーに入ってくれないか?」


「ええ、よろしくお願いするわ!」




 こうして、マリヴェラはリゼルたちとパーティーを組むことになったのだった。

なんかこの話はいろいろ力不足や違和感を感じてます。

ひょっとしたら書き直すかも…… まぁそもそも修正案も無いからあくまで『かも』ですがね

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