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パーティーを作ろう

ちょっとタイトル変えてみました。

「はい。それじゃあこれから冒険者コースの授業を始めます。

 えっと、私が先生のシャーリです。よろしくね。」


 優しそうな美人の教官に、教室内の生徒たちがどっとわいた。

 …いや、一部の男子生徒たちはシャーリの大きな2つの膨らみを静かにガン見しているが……


「はいはい、しーずーかーにー!

 とりあえずこのコースでは、しばらくは教室で座学。その後、運動場とは広い場所でちょっとした実技。最終的には実際にダンジョンに入っての実地授業。そんな感じで1年やっていこうと思ってます。」


 実際にダンジョンに入ると聞いて、また生徒たちがわく。

 既に発見されているダンジョンは全て国や領主の管理下に置かれて衛兵たちに厳重に守られており、冒険者や騎士団など許可を与えられた者しか入ることができない。

 そのため、このコースを受けている、冒険者を目指している生徒にとっては憧れの場所なのだ。


「はーい、しーずーかーにっ! 2回目だよ?」


 パンパンとシャーリは手を叩いた。


「それじゃあこのコースでは実際の冒険者と同じようにパーティーで授業を受けてもらうよ。早速だけどパーティー作ってね。」


 はい、スタート。とシャーリが手を叩くが…


「あの、パーティーと言いますが、具体的には……?」


 生徒の一人がおずおずと手を挙げた。


「一応ギルトでは5人前後、前衛後衛半々を推奨してるから先生もそれをおすすめするよ。でもこれは別に強制しているわけじゃないからソロでもペアでも逆に10人以上の大所帯でも構わないよ。ただ現実だと報酬が人数割りになるのにあわせて授業の評価も人数割りにさせてもらうからあまり大人数だと赤点を覚悟してね?

 あとパーティーはこれで固定ってわけじゃないから、授業中でなければいつでも脱退、加盟、解散、結成自由だから、ただ先生がギルトの受付嬢の代わりだと思って授業前にその事をちゃんと報告してね。

 ああ、あと黒板をメンバー募集の掲示板代わりに使って良いよ。」


 なるほど、授業がひとつのクエストといった感じか。


 ちなみにギルトが5人パーティーを推奨しているのは、当然ながら人間1人では出来ることがたかが知れているからだ。だが冒険者は集団生活をして規律と団体行動が訓練されている軍や騎士団と違い個人主義が強い。そのためどうしても大人数だとバラバラになってまとまらない。なのでギルトでは軍で言うところのいわゆる一個分隊、5人1組というのを推奨しているのだ。

 まあ、それでもうまくまとまらず一部の冒険者は脱退解散、加盟結成を日常茶飯事のように繰り返しているという話だが…


 それはそうと俺も早いとこパーティーを見つけないと…


 リゼルが教室を見回すと既に仲良しグループがパーティーのようになっている。シャーリに報告していないのはまだ誰も行っていないからか、それとも同じ戦闘系クラスのコースを選んでいるグループでパーティーのバランスが悪いからか…


「ん?」


 リゼルは自分と同じようにフランツがポツンといるのが見えた。


 貴族で冒険者コースを受ける者はほとんどいない。そのため孤立しているが、『仲間に入れてやる』が貴族なのだ『仲間に入れてくれ』とは言いづらいのだろう。


 やれやれ…


「おい、フ…」

「フランツ様っ!!」


 リゼルが声をかけようとするより早く、2人の女生徒がフランツに声をかける。

 前にフランツがゴッシュたちから助けた女生徒のようだ。


「フランツ様っ、どうか私たちとパーティーを組んでいただけないでしょうか?」


 どうやらフランツがこの下院に入学したことはかなりの噂になっていたようだ。その名前を聞き付けた玉の輿狙いの女生徒たちが一斉にフランツへと群がる。


 …パーティーと言うよりハーレムだな……


 どうやらリゼルが気を回す必要はなさそうだ。


 …悔しくなんてないからな?


 誰にともない強がりをするより自分のパーティーを気にしないといけない。

 リゼルはメンバー募集の書かれた黒板を見に行くことにした。


『求:前衛アタッカー

 要::普通クラス』


 …ざけんな……

 普通クラスって…ここ下院だぞ? 普通クラスってここじゃ最上位クラスじゃないか!!


 そうでなくともクラスの制限がついているものばかりでクラスレスでもいいというものはない。


 しばらく待てばクラス制限がなくなるか…… いや…


 人数の制約がないのにクラスの制限をなくしてまでメンバーを求めるとなるとなにか重大な欠陥を抱えているということだろう。そんな仲良しグループに1人混ざるのはむしろ悪手ではないだろうか?


 となると… とりあえず座学の間はソロで授業を受けて、実技が始まるまで時間をかけてパーティーを探す方が良いのか?


「リゼルっリゼルじゃないか!」


 そんなことを考えていたが、声をかけられた。

 振り返ると剣を腰に下げて盾を持つ少年と弓を背負った少女がいる。


「…誰??」


「ああすまない、俺はトム。いずれ勇者になる男だ。」


 …勇者??


 勇者とはクラスの5の原則から外れ、複数の戦闘系のマスタークラスを持つ人物のことだ。ちなみに魔法系のマスタークラスを複数持つ者は賢者と呼ばれる。

 そんな勇者や賢者だが、各国の建国に纏わる初代国王なんかによく見られる。もっとも、そんな勇者や賢者が登場する話は実は後世の創作の可能性が高いのだが…… まあ、勇者や賢者は存在しないなんて言おうものなら不敬罪で首が飛ぶ。そのため原則という表現でお茶を濁しているわけだ。


「こらっトム、またそんなわけのわからない自己紹介して!

 って、すみません。アタシはトムの幼なじみでカナリアといいます。えっと…リゼルさん、ですよね?」


「ああ。」


「トムから話は聞きました。クラスレスだけどすごく強い剣士なんですよね?」


「ん? トムは剣士コースの授業を受けているのか。」


 あの模擬戦で目立った自覚はある。まだリゼルはあまり同級生を覚えられていないが、あれを見たトムはリゼルを覚えていたのだろう。


「ああ、だけど剣士だけじゃないぜ? 俺は勇者になる男、騎士も魔法戦士も格闘家も斥候も受けているぞ!!」


「前衛系の5クラス持ちか、すごいな。」


 となると全部下級クラスなのでステータス補正の上昇値は大きくないとはいえ、前衛に必要とされるステータスがバランス良く上げられるのは魅力だ。


「違うんです。彼、ノークラスなんです。」


 驚くリゼルにカナリアがこっそり告げる。

 ノークラスとは生まれつきのクラスを1つも持っていない者だ。辺境の田舎などではバカにされることもあるという話だが、学院など教育施設のある地域ではむしろ何者にもなれる者として特別視されている。


「本当は受けるコースを絞った方が良いんでしょうけど…」


「言ってるだろ? 俺は勇者になる男だって。」


 カナリアの声が聞こえていたのか、トムはやはりそう宣言してニカッと笑った。


 確かにカナリアの言うことはもっともだ。5クラス持ちはバランスは良いが下級であるために火力不足の器用貧乏になりがちときく。普通に考えればバランスを取るにしても3クラスくらいにしておいた方がいい。


 だが、面白いやつだな。


 リゼルもくすりと笑った。


「あーっ、笑ったな! リゼルも俺をバカだと思ってるのか!!」


「いや、そうじゃない。」


 まともな思考の持ち主ならトムの行動はバカなものでしかないだろう。しかし、


「俺もクラスレスのくせに最強の剣士を目指しているからな。」


 リゼルのその言葉に2人はぽかんと口を開けた。


「ぷっ… ははっあははははっ、最強の剣士?クラスレスで剣聖を超える気か? 最高だよリゼルっお前最っ髙っっ!!

 どうだ? 俺らと一緒にパーティー組まないか?」


「ああ、よろしく頼むよ。」


 こいつらとなら楽しくやれそうだ。


 リゼルとトムは笑いあうがカナリアは現実主義なのか夢や浪漫に興味がないのか、頭を抱えてため息をつく。


「はぁ… それでトム、アタシたちのパーティーは3人になったわけですが、どうします?」


「あと1人くらいに仲間が欲しいとこだが… そだっリゼルはどんなクラスがいいと思うんだ?」


「そうだな……っと、カナリアのクラスは弓士でいいのか?」


「いいえ。普通狩人で残りは生産系で埋まってます。」


 狩人は弓士と同じ弓矢を武器とするクラスだが、弓兵として攻撃力の高い弓士と違い、斥候のように探知スキルを持つクラスだ。


「となると、魔法使いかな?」


「治癒士の方が良くないか? 勇者パーティーってほら… 聖女が必須だろ?」

「なにいってるんですかトム!

 それより、その…騎士の方が良くないですか? アタシたちのパーティーは、その… 今はまだ2人ともクラスレスなわけですし……」


 確かに騎士や治癒士も候補ではあった。


「そうだが、前衛3人だとバランスが悪いだろ? 4人パーティーで相手出来る規模の敵だと基本的に1人が遊兵になりそうだし、ならなかったらならなかったで後衛のカナリアの負担が大きくなりすぎると思うんだ。

 あと治癒士だが… 聖職者の治癒士は教会で教育を受けているから…学院には通っていないぞ?」


「なるほど… ならあの娘とかどうだ?」


 トムが指差した先を見る。

 繕いの目立つ煤けたローブ、古びた天球盤。スタイルは良いが少しローブのサイズが合っていないため余計に痩せた印象の体型、痛みのある長い黒髪。そしてそれらと不釣り合いな金の指輪に澄んだ瞳。


 ドキッ


 不意にその眠たげな黒い瞳と目が合い、吸い込まれそうな錯覚を受ける。


「う~ん… 美人だけどなんか幸薄そうだよなって…どうした??」


 これがマリヴェラ・ルールゥとの出会いになるのだった。

幸薄そうなヒロインは自分の趣味です。

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