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男主人公の短編

攻略されたら破滅しかないので、全力で逃げ切ります。

作者: 烏丸じょう

勢いで書きました。


 俺は王国の第二王子で公爵令嬢のフィルミナ・ダノワ嬢と婚約している。


 フィルミナは非の打ち所のない美貌の令嬢だが、クールすぎるところが玉に瑕とも言える。ぜひともクーデレに移行していただきたいが、今のところその気配はない。


 まあ、俺は子供の頃からクール系美少女が好みなので、親の薦めでフィルミナとの婚約が決まった時は心の中でガッツポーズをした。見ているだけで幸せになれるその完璧な美貌は一種の芸術品だと本気で思うわ。


 フィルミナと結婚すれば美貌の妻と、公爵家の後ろ盾がゲットでき、俺の将来は安泰となる。所詮第二王子なので、王太子である兄上に子供ができれば俺の存在意義はなくなる。その時の俺の立ち位置によっては破滅どころか死亡フラグが立ってしまうので、フィルミナとの結婚は俺の命を守る上で最善の選択でもあった。


 フィルミナの母は帝国の元皇女で、フィルミナは皇孫である。彼女と結婚すれば、将来的に俺は大公という位を得て、悠々自適に過ごせる予定だ。そうなると、少なくとも俺が王位継承争いに巻き込まれ、暗殺される可能性が格段に減るのだ。それぐらい帝国の威光は大きなものである。


 そんな俺だが、ある日馬から落ちて頭を打って意識を失ったことをきっかけに、前世を思い出し、その上この世界が乙女ゲームの世界で自分が攻略対象者の一人であることに思い至った。


 フィルミナとの婚約を破棄し、ヒロインにプロポーズしてハッピーエンドというスチルを鮮明に思い出すことができる。ゲームはそこで終わっているけど、その後の俺は公爵家の後ろ盾も、帝国の威光も失い、良くて継承権剥奪の上軟禁、悪くて暗殺される未来しか思い浮かばない。


 男爵令嬢と結婚しても、持参金も期待できないし何の後ろ盾にもならないのに、生活もままならず、権力を欲する悪徳貴族の神輿になるのが関の山だ。


 現金というなかれ。王族たるものこれぐらいの予想が立てられず政治など行えるはずもないのだ。


 そもそも、今の俺の好みはクールビューティーなのだ。これは知らず知らずに前世からの好みのタイプを引きずっているようだ。


 ヒロインは小動物系のかわいい子で、まったく好みではない。

 結婚するなら、家のこと抜きにしても断トツでフィルミナだ。

 

 そもそもあのゲームを現実に当てはめると色々と無理がある。


 フィルミナがヒロインを虐めるとか「ありえない」のだ。なぜなら、ヒロインがもしフィルミナの婚約者の俺に近づいたら、王家の側近が速やかにヒロインを排除するだろうから。


 それぐらい帝国の皇孫の立場は尊重されるべきものであり、その為なら男爵令嬢一人くらい消されても誰も文句は言わないだろう。


 それなのに、ゲームの中でヒロインはフィルミナの立場をないがしろにする。それが許されたとしたら、ある程度の権力者が後ろで糸を引いていたと考えられるのではないか。


 ゲームが現実となるとしたら、もしかして俺を嵌めることが黒幕の目的ではないだろうか。


 俺を嵌めたい奴なんていくらでもいるだろう。


 俺は王太子である兄上とは特に仲は良くないし、王太子妃の実家であるゼノン公爵家は大きな派閥を作っている。ダノワ公爵がどこの派閥にも属していないからこそ俺の婚約者にフィルミナが選ばれた。


 もし俺がフィルミナと婚約解消したら、対立派閥の貴族が娘をねじ込んでくるだろう。そうなると一気に権力闘争だ。兄の所には子供がまだいない。もう結婚して二年になるのに、できにくいのかもしれない。


 今の時点で俺に王位が回ってくる可能性は十二分にあるのだ。


 ヒロインは男爵令嬢なので、俺と結婚するなら伯爵家以上の家に養女として迎えられることになるだろう。そうなるとゼノン公爵家と対立する高位貴族の誰が黒幕でもおかしくない。


 それに、俺という存在自体に疑心暗鬼になった兄の手の者が俺を廃する布石としてフィルミナとの婚約を破棄させようとする可能性だってある。


 フィルミナと結婚したい奴らの工作ということもありうる。


 フィルミナはその出自だけでなく、見目も多くの男を惹きつけている。実際、帝国の皇族や貴族もフィルミナを望んでいたと聞くし、他国からも多くの求婚があったとも聞いている。もちろんこの国の他の貴族たちも例外ではない。


 ではフィルミナの婚約者である俺に男爵令嬢が手を出して、不敬で捕らえられずに無事でいられるためにはどのような権力が必要だろうか。


 まず他国では無理だ。フィルミナを侮辱することは帝国を侮辱することに繋がるので、フィルミナの警護は俺に対してよりも数段厳しい。他国が介入できる問題ではない。


 では自国か帝国の圧力ということになるだろう。


 ゼノン公爵家でもその対立派閥でも、多少の介入は可能だろう。ヒロインが実際現れたら、警護の者への圧力がかかっていないか調べる必要があるな。


 そうだ!ヒロインは俺を嵌める工作員だと思おう。

魅了や媚薬を使ってくるかもしれないし十分に警戒しよう!


 もし裏に何もなくても、ゲームのような行動を起こしたらすぐに不敬罪で排除すればよい。


 裏がないのに罪人に落とすことは可哀そうな気もするが、俺の命がかかっているからな!


 というわけで、あっという間にゲーム開始時期がやってきた。


 ゲームのイベント通りに出会い、俺に近づいてくるヒロインに対して、俺は警護の者に都度排除するよう命じた。排除をためらった警護の者がいたので、確認を行うと、ある高位貴族からの圧力があったことが判明した。


そうなると芋づる式だ。


 結局、帝国の皇太子の息子で、フィルミナの三つ下の従弟が俺とフィルミナの婚約を解消させるために送り込んだハニートラップだということが判明した。


 フィルミナの従弟である皇子には俺も一度会ったことがあるが、その時もフィルミナにべったり貼り付き俺に対して憎悪の眼差しを向けていた。


 フィルミナを自分の物にするために俺が邪魔だったというのだ。


 ヒロインとその父親である男爵、そして皇子の命を受けて警護に圧力をかけた高位貴族は反逆罪で貴族位剥奪の上、王都追放となった。しかし帝国からの圧力だったので処刑だけは免れた。


 ちなみに、ヒロインの香水にはやはり媚薬が混じっていた。じゃないとゲームみたいに男がどんどん落ちるとかないよな、普通。


 こうして無事、俺とフィルミナの婚約は継続し、俺の平穏と命は守られることとなった。

 前世の記憶が蘇らなかったら、あの媚薬にやられて婚約破棄一直線だっただろう。

 古今東西女で身を亡ぼす男は多いが、油断しなければ回避できるものなんだな!


 とりあえず、俺の横で今日も美しくたたずんでいる令嬢を生涯大切にしようと思います。




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― 新着の感想 ―
[一言] 特別婚約者さんや原作ヒロインの魅力が描かれるってことがないので、ハニトラ仕掛けられたのに気付いたので対処しましたってだけの話にしか見えない。 山も谷もなくて何も盛り上がらないままただ終わった…
[一言] これはストーリー(物語)じゃなくてプロット(筋書)ですね 肉付けガンバ!
[気になる点] 展開が急すぎて物語としては薄く感じる ただの文章に見えてしまうためもう少しなにかしらかで工夫して欲しい。
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