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77匹目

「きゅーきゅきゅー」

 

 きなこが俺が作った鞄もどきに興味をひかれたようだった。

 じーっと見ている。

 ……閉じた釣り目だがな!

 ……目を開いたらぱっりちまんまるおめ目なのに、閉じると釣り目になるの面白いよなぁ……


 ……じゃなくて。


「持つ?」

 鞄を軽く掲げて言ってやれば。

「きゅっきゅ!」

 上機嫌で両触手を伸ばす。

「落とすなよー?」

「きゅきゅっきゅー!」

 抱きかかえて進みだすきなこ。

 KAWAII。


 まじほんと天使。


 きゅっきゅちゃんを作った神様、まじグッジョブ。

 ……そういえば優樹だったっけ。

 まぁ、これに関しては感謝してもいいだろう。


 林を抜けて、草原を歩いていると、目前に林が見えてきた。

 多分、歩いてきた林とは違うやつだろう。

 なんか、眼前の林……というか森は鬱蒼としてるし、どことなく暗い。


「どうする? 進む?」

「きゅ」

 新たな獲物の予感にきなこが涎をすする。

 いや、どんだけ食べるのさ。

 まぁ、初心者ダンジョンの隣が最難関ダンジョン……ないはずだ。

 もしそうだったらユウキも一言いうだろう。

 なんせ俺は初心者……。

 冒険者のぼの字も知らぬド素人なのだから。


「うさぎとか居たらいいなぁ……?」

 うさぎの肉はたんぱくな鶏っぽい味がするらしい。

 ……俺も食えるかな?

 きなこがあんまりにおいしそうに食うから、充てられた気がする。


 今日の昼飯は肉がいいなぁ……。

 ……今何時だろう。


 サテライトに時間を聞くと、11時と返ってきた。

 飯とかも持ってきてないから、昼時になったらいったん帰ると思ったけど……

「これ、飯は現地調達する感じだった?」

「きゅ?」

 

 きなこが首を傾げる。

 あぁ、まぁ……きなこはさっきから食い倒れだからいいだろうけど、さぁ……。

 俺、動きまくってる割に、朝から何も食って無くてなぁ……。

 そろそろ腹が減った。


「魔物って、俺が食っても大丈夫なのかね?」

「きゅふ」

 フシッと鼻息を吐くきなこ。

 その反応困るぅ……。


 森に入って、きょろきょろと見渡すが、食べれそうな木の実は見当たらない。

 ……というか、キノコ類も、木の実類も全く皆無。

 なんていうか、延々と葉っぱだけ生い茂っている木々が生えている。


 これ全部雄株なのかね?

 それとも季節柄かな?


「というか。-街-の外に動物っていないのかな?」

「きゅ?」

「みんな魔物なのかね?」

「きゅきゅーん……」

 さぁ? ときなこが首を傾げる。


 うーん、ほんと謎ばっかりだな。

 この世界。


 つか。

 ふと気づいた。

 この森に入ってから、やけに静かだ。

 魔物の気配が全くない。


 と、いうか。

 おおよそ動きあるものの気配がない。

 風さえも静まり返って、俺ときなこの歩く音しか聞こえない。


 やらかしたか?


「きなこ」

「んきゅ」

 変な鳴き声で返すきなこだが、その歩みは止める気がないらしい。


 引き返そうか、

 そう言おうとした直後だった。


 ――……


 遠吠えが、聞こえた。


「むっきゅ」

 きなこが鞄を傍らに置く。


 お、やる気か。


 経験値狩りとはよくいったもので。

 きなこも着実にレベルアップしているのだ。

 

 ところで、さっききなこは肉を焼いて食べていたが

 その火、どうやって起こしたかといえば……

 魔法で着火していたりする。

 あと、肉をさばくのも風の刃を使ってたりで……

 強弱もお手の物になってたりする。


 流石きなこやでぇ……。


 扱える武器があると人間、強気になるもので。

 ……あ、いや、きなこは人間じゃないけど。

 

 俺も、ユウキからもらった武器が存外使えて浮かれていたし。

 きなこも多種多様な攻撃魔法を使えるようになって有頂天になっていた。

 

 そして俺たちはこの森がどんな場所か知らなかった。

 無知というのは恐ろしいものなのだ。

 俺は、前世でもそう感じていたはずなのに……また、間違いを繰り返すのだ。


 遠吠えが聞こえた。

 遠く。

 しかし確実に俺達に気づいているだろう。

 それは、着実に近づいてくる。


 早い。


 今更逃げようたってそう問屋は卸さない。

 後悔は先に立たないものなのだ。

 後になって悔いるから、後悔と呼ぶのだ。


 そいつは予想よりも早く。

 そして予想に反してきなこを狙った。


「きゅっ?」


 青い毛並みのそれに跳ね飛ばされるきなこ。

 大きく開かれる獣の顎。

 

 バクンッ。


 一口でそいつに収まったきなこの、見開かれた金色の目が俺を見る。


 それを知覚した瞬間。

 俺の頭のどこかで、何かが弾けた。


 ……


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