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76匹目

 ざくっと斬って、すぱんと割って……

 きなこがズモモモッと吸い込んで。


 気づけば景色が変わっていた。


「おや?」


 林を抜けていたらしい。

 

「けぷっ」

 うさぎ型の魔物を串焼きにしたものを片手にきなこがかわいらしくげっぷをする。

 生で食うのも飽きたらしいきなこは、火を起こして肉を焼くことを覚えた。

 枝を集めて火を起こすきなこを眺め、文明はこうやって起こるのな……と思ったのは秘密。


 今度きなこにスパイスのすばらしさを説いてやろう。

 

 ……

 

 や、だって。

 多分これ、あれでしょ。

 今回だけで終わらないでしょ? レベリング。

 

 またきなこはひたすら魔物をずももして、飽きたら焼いて食べるのだろうから。

 料理を教えよう。

 ジビエだ、ジビエ。


 ……魔物料理って、なんかジャンルあるのかね?

 最終的に、ポータルコンロとかいろいろ持ってくる羽目になりそうな気がする。

 

 ……


 あー、それはそれで楽しそう~


「きゅっきゅ!」

 

 きなこが楽しそうに鳴く。

 見れば枝から串を削り出して肉を刺し……つまりは串焼きにしていた。

 おぉ、料理法がどんどん開拓されていく。


 ようよう考えてみれば、数か月で母さんによる家庭料理というには少々豪勢すぎるごはんをたらふく食べていたきなこ。

 舌が大変肥えているのである。

 生も、それなりに刺身とか、料理的にありだけれども……


 もはや野生には戻れんよなぁ……。


 そもそも牧場育ちのきゅっきゅちゃんであるきなこに野生なんかあるのか謎だが。


 あと、素材集めと称してどっかいったユウキは、今どこら辺にいるのだろう。

 具体的にどこまで狩ればいいかわかんないし……

 きなこが勝手に魔物食ってることもようよう考えればいいのかどうかわからないのだが……

 こっちから連絡つかないんだよなぁ……。


 サテライトで連絡しようとしたら、なぜかユウキのサテライトがオフライン。

 チャットも届かないというありさまで。


 -街-の外ではサテライトって使えないのかな?

 なんて首を傾げる羽目になった。


 まぁ、ユウキからは俺の所在をつかんでいるようなこと言ってたし、いつかは迎えに来てくれるとは思うのだが……。


「あ、でも……最初の位置からずいぶん離れてるな。これ、帰れるかね?」

「きゅきゅー?」

 

 えぇ~? ときなこが唸った。


 現在遭難なう。

 これで迎えもこなかったらまじ……


「しばらくサバイバルかもな?」

「きゅきゅー?」


 えぇー? ときなこが呻く。

 

 まぁ、そうだよなー。

 俺もそう思います。


「しっかしだなぁ、きなこ? 俺、戦うことに必死でなぁ、元の位置どこだったかわからんくてなぁ……」

「きゅっふぅ」

 

 嘆息。

 そしてきなこは手に持っていた串焼きを口に入れる。

 一口で全部の肉を引き抜いて、ただの串になったそれで何かを書き出す。

 あー……マップのつもりかなぁ……


 四角……9つのマスを書いて、上段右と下段中央に点を書く。


「きゅっきゅ!」

 上段右を指して鳴いて

「きゅきゅきゅっきゅ!」

 下段中央を指して鳴く。


 ……現在位置と開始位置を教えてくれてるんだろうけど……

 きゅっきゅ語はわかんねぇからなぁ……

 どっちがどっちなのか……。


「きゅきゅー」


 あと、距離も方角もわかんねーから無駄なんだよなぁ……。

 自信満々に「褒めろ」と胸を張るきなこ。

 とりあえず苦笑いをしつつも頭をなでておいた。


 ま、ユウキが何とかするだろう。

 ここに連れてきたのもあいつだし。


 集合場所とか時間とかも大して言ってなかった……よな。


「きなこー。まだまだ食べれるかー?」

「きゅっきゅ~」

 余裕、とでもいうように鳴くきなこ。

 こいつの限界をちょっと見てみたい。


 ……いや、待てよ?

 きなこ、えんじゅの店で飯食ったとき満腹してなかったか?

 アレが演技が本来の実力がこれなのか。

 それとも魔物は特殊なもので腹に溜まらないのか……

 

「きゅっきゅ」

 きなこが鳴くので見てみれば、また石を差し出してくる。

 ……この宝石も、ずいぶん不思議なものだ。

 後でユウキに教えてもらおう。

 つか、さすがにポケットじゃ零れそう……

 上着を縛って鞄を作り、そこに突っ込むことにしよう。

 心もとないが……ないよりはましだろう。

 ……次からは鞄かなんか持ってこよ……。

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