75匹目
ユウキは魔物を1匹倒すだけでいいとは言ってなかった。
むしろ、狩りつくせと言ってた気がする。……言外にだが。
……
うさぎ、きつね、たぬき……
ドブネズミをさらに大きくしたもの。
犬が二足歩行してさらに斧やら弓やら剣やら持ってたり、カンフーのような猫又っぽい魔物の頭をかち割って……
その、悉くをきなこがいただきます、する。
吐き出された宝石はポケットに貯蔵。
そろそろあふれてきそうだった。
あー、こんなことなら袋くらい持ってくれば良かったかなー。
割とサクサク魔物をさばいている自分に驚いている。
「転生前は戦いなんて知らない、ただの高校生だし。今生だって今の今まで戦いなんてやったことなかったのに、な。不思議なもんだな?」
スキルの影響かな? ときなこに話しかけると、きなこは「きゅ?」と首を傾げた。
きなこは、ぽりぽりと魔物の骨をかじっている。
……おやつがわりかな? 結構ワイルドな……。
きなこは何でも食べる。
肉も野菜も、お菓子も……食べることが好きだ。
そこは認めるが……。
まさか、魔物も守備範囲内だったとは……。
肉も骨も、皮も関係なく一飲みにしちゃうし……なかなか雑食である。
……雑食で片づけていいのかちょっとわかんないけど。
あんまり深く考えないほうがいい気がする。
それでもきなこは宝石だけは吐き出す。
……食べれないのかな?
それとも、きれいだからとっておけ、と。
そういうことだろか?
きなこは上機嫌で骨をぽりぽりしていたが、面倒くさくなったのかごっきゅんと嚥下してしまう。
……さっきから10匹……いや、20匹以上胃袋に収めているはずだが……まだまだ余裕が見える。
こいつの食欲……底なしか?!
「きなこ……恐ろしい子……」
「きゅきゅ?」
意味が分からないと、きなこは首を傾げる。
それからまた進みだそうとする。
新たな獲物を求めて……
倒すのは俺の役目なんだけど。
丸い体……丸い尻……そして短いしっぽが上機嫌に揺れている。
小さな、体長30㎝の体。
それが、きなこ。
30㎝程の小さな体なのだ。
7歳児の俺でも苦も無く抱きかかえれるほどの。
まぁ。
「大量の魔物を食った今は抱きかかえれんけどな……」
重さ的に。
あの小さな体に、あとどれだけの魔物(の骸)が収められるのやら……。
ずんずん、と。
意気揚々と進んでいくきなこの尻を見ながら、俺も追いかけることにした。