74匹目
てくてく。
てくてく。
林のなかの、比較的道っぽいところを歩いている。
ほんと、平和。
-街-の外とは思えないくらいだ。
杉や檜ににた木々がぽつぽつと生えている様は自然の林というよりは里山の雑木林を思わせる。
え、これ本当に手が入ってないの? うっそだぁ……
しかしここは間違いなく-街-の外で。
遠くにちらりと動物っぽい魔物の影が……って。
意識なく、俺の体が動く。
直刀を構え、隣に沸いた魔物の首を薙ぐ。
あっけない。そう言える程度には手ごたえもなく、首が落ちた。
わぁ、グロテスク。
血が流れない。
トカゲのしっぽ切的なやつかな?
しっぽではなく首でやっちゃうところ、なかなかファンキーだ。
魔物は動かない。
首を落とされて即死だったのかな?
うーん、あっけなさ過ぎて狸寝入りを疑いたいのだけれども……
咄嗟に刎ねた魔物を改めてみれば、なるほど。ユウキが言ったように動物に近い。
犬……いや、狐っぽい見た目のそれは、刎ねた拍子に首がどっかに飛んでったようで近くには見当たらない。
うーん、まぁ、気味悪いからいいけど。
……さすがにどこぞの山犬みたいに首だけで襲ってきたりしないよね? ……よね?
茶色い体毛はごわごわと堅そうだが、なめせば使えなくもなさそうだ。
……うまいこと刎ねたし、はいでみようかな……皮。
……まぁ、いいか。活用できないし。
そんなことを考えていると、きなこがおもむろに魔物へ近づいていく。
「きなこ、まだ生きてるかもだから近づくなって」
と声はかけたがきなこは意に介さず魔物の死体(暫定)に近づき……
「きゅっきゅっ」
かぷり。
と、かぶりついた。
そして、
ず、ずずずずずず……すぽんっ
「きゅむっ」
死体を吸い込み……ごっくん。
えぇ……食べるのぉ?
どういう仕組みをしているのか、一口で丸のみした割に体の大きさは変わらない。
きなこの10倍くらいは大きな魔物だったんだがな?
……すんげぇ消化器官で速攻とかしてるのかな? 知らんけど。
……きなこに食われないように気を付けよう。うん。
「きゅっきゅー!」
俺が益体もないことを考えていたのがバレたのか、きなこが不機嫌そうに鳴いた。
と、きなこが口元に触手を近づける。
そして、ころん、と何かを吐き出した。
「きゅっ」
それを俺に差し出してくる
なにかなーとみれば……
宝石のようにキラキラと輝く石っぽいものだった。
きれいにカットしたアメジストのような、丸いその石は中央に光を閉じ込めているようだった。
そして、トクントクンと小刻みに胎動している。
まるで、心臓のようだ。
……ふーん?
ころころと宝石を転がして遊んでいると、きなこがくいくいと俺のズボンを軽く引っ張る。
「? どうした、きなこ」
「きゅっ」
きなこが触手であらぬ方向を指す。
指したほうを見れば……なるほど。
数匹、魔物っぽい影。
……いや、あれら全部まさしく魔物なのだろう。
「さーちあんど、ですとろい……だったか」
「きゅっ」
ビッと触手を俺に向けるきなこ。
指はないけどサムズアップしてるんだろうなぁ……




