69匹目
家の前に転送され、それから学校に歩いていく。
ユウキは俺からすこし離れた後方を歩いている。
「ユウキー?」
「んー」
声をかけると気のない返事。
振り替えれば、きょろきょろと回りを眺めている。
きなこのようだ。
世間知らずか? なわけねーよな。
「珍しいか?」
「いんや? 田舎だなーと思ってただけ」
笑んで近づいてくる。
悪かったな、田舎で。
「結構、子供いたり?」
「いや? 人間は俺だけ」
「だろうなぁ……」
「だろうなって……なんでさ」
知っている……というか、納得といった体で同意するユウキに、俺は疑問をぶつける。
それにユウキは人差し指をたてた。
好きな、そのポーズ。
「お前に澪夢だか、システムの優樹が言ってたろ? スキルは一部の神族しか見れないって」
「いってた……かなぁ」
思い起こすために頭をひねってみるも、思い出せない。
言ってたかなぁ……んなこと。
うんうん唸っている俺をよそにユウキは苦笑交じりに話を続ける。
「で、ぶっちゃけスキルが見えるのって俺……つか、神族のユウキとシステムの優樹、それから澪夢、んでスキルを司る神様だけでさ」
「スキルを司る神様?」
そんなんもいるのか。
「ん。もちろん異世界からの……外津神。現実世界でもない、正真正銘の異世界だけどな」
「ほーん」
「そいつが、数十年くらい前にこの世界に堕ちてきて、で、そいつが現れてからクリーチャー系人間の中にスキルを発露するやつが出てきたんだけど」
「ほうほう?」
「その神が、つい十年くらい前からスキルを鑑定してくれるって言うから、人間がその神の神殿の近くに移住しちゃってな」
「ほー……」
「よかったな、ハルト君。両親がスキルに疎くて」
「そうだな……つか、スキルって数十年前くらいから現れたのか?」
結構最近なんだな、
「そうだぞ? あ、栄光の御印はスキルじゃないから。あと、人間のスキルは、あのスキルを司ってる神様が管轄してるがきゅっきゅちゃんときゅいきゅいさんについてはシステムの優樹が面白半分に採用しただけだから、管轄はシステムの優樹な」
「ややこいぞ?」
「逆に言えばスキルって、本来は魂が、クリーチャー系人間だけの専売特許なのね。スキルって魂に付与されるし?」
「へー……ん?」
クリーチャー系、人間だけ……?
「お前、魂がオリジンなのになんでスキルもってんのさー。しかもそんなデタラメチート構成」
「……ナンデダロウネ?」
不思議だね?
「じゃ、なくてだな。え? 他の動物とか、スキルって概念ないの?」
「……そうだぞ? なんで?」
えぇ~?
いや、でもまぁ。きゅっきゅちゃんは(面白半分で)優樹がつけてるらしいし、問題ないのか? いや、以前解決してないけど。
何って、『知性の発露』系スキルの話である。
てっきり、スキルはこの世界に当たり前に存在する概念だと思ってたのに、まさか人間(それも一部)ときゅっきゅちゃんと、あと……きゅいきゅいさん? の3種族しか適応されない概念だったとは!
いや、だからって不便ないんだけど。今んところ。
ちょっと、カルチャーショックっていうか。
……あれ。
俺、どこでこの知識を得たんだろう。
うちの父さんも母さんもスキルについては疎い。
めっちゃくちゃ疎い。
だからこそ、俺が不老不死をはじめとするチート構成のスキル持ちでも普通の生活を送れている訳で。
なので当然『知性の発露』系スキルの存在なんて知らんはずである。
イワナガヒメ様……だったろうか?
……違う気がする。
でも、俺の少ない交友関係で、そういう話をするのは彼女くらいしかいないはずだ。
……なんか違和感あるけど、それこそ前世じゃスキルという概念なんてゲーム中の話だしなぁ……。消去方でいったらそれしかないよねー。
「おーい、ハルト?」
「……おん?」
「ボーとして、大丈夫か?」
目を瞬いて、周囲を見る。
俺と似たような服装、リュックを背負った子供(もちろん他種族の)たちが同じ方面を向かって歩いていた。
おー、学校に近づいてきてたのなー。
そうなると、ユウキの存在は少々浮いている。
が、本人は気にしてないようだった。
「いや、スキルについて考えてた」
「ふーん? どんな?」
「んー……一応は自己解決したから、いい」
「へぇ。まぁ、わかんねーことあったら俺に聞け? これでも創世の神様だからなー。伊達に長生きしてません」
ふふん、と胸を張るユウキだが……
長生きしてるわりに、威厳ないんだよなぁ……。
いや、見せろとは言わないけど。
他愛のないことをしゃべっている間に学校についた。
ユウキはまた、マーキングできる場所を探してポイント立ててから帰るらしい。
不審者としてしょっぴかれないようにしろよーと声をかけてから校門をくぐった。