表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/83

4匹目

さて、転生のための準備だー

『表層って言ってるけど、実際はパンドラに一番近いところだから……内側に来てるんだけどね』

「そうなの?」

『ここは、世界の外側だからボクしかいないはずの空間で、ボクそのもの。今は澪夢がいるけどね。だから……割と適当だったり』

「ゆうきは?」

『あれ、ボクだから。というか、互いに高藤優樹の一部だからねぇ……』

 なんて、話ながら二人して歩く。

 道なんてものはなく、あるのは白い空間。

 どこまでも広がる空間は、果てが見えない。

 というか、方向感覚なんて全くわからない。

 優樹は迷いなく歩いているが、本当にあってるのだろうか。

『まぁ、世界なんて曖昧なものだからねぇ……実際、世界との壁が薄いところに行ってるだけで、距離的に近いとか遠いとか関係ないんだよね』

「ふーん」

 歩いているはずなのに進んでいる感覚がない。

 俺と優樹以外はまっしろで、何もない。

 音すらも、ない。

 ただただ、優樹と俺のしゃべる声だけがある。

『いやぁ、こんなに喋るの何年ぶりだろーなぁ』

 あははーと朗らかに笑う優樹。

 彼は……最近までずっと独りだったらしい。

 15才でここにきて、億年というながい年月を、気の遠くなるほどの年月を、独りで……。

「狂うよなぁ……普通」

『そういってくれる人は誰もいなかったよ』

 たはは。とそれでも朗らかに笑んで。

 優樹は遠くをみる。

『きみ、ほんと優しいよねぇ……キミみたいな人がいるって、もっと早く気づいてたら……変わってたかなぁ……』

 なんていう優樹の声は、どこまでも澄んでいて。

 寂しさと、後悔が滲んだ声色だった。


『ついたよ』

「ここが表層?」

『さっきの場所でも、まぁ……良かったんだけどね』

「じゃぁ何故移動した」

半目で呻くように問えば、優樹はたははーと笑んだ。目線がめっちゃ泳いでいる。

『ま、理由はいろいろあるんだけど……一番の目的は、キミと歩いてみたかった。ボクの我儘だよ』

「えぇ……そんな理由……」

 引きぎみに呻く。

 野郎二人で歩いても面白くないでしょ……。

 あ、いや、最早枯れ枯れの億年爺にとっては16才の高校生は……ぴちぴちで眩しい?

『喧嘩売ってんのかてめぇ』

 半目の奥、輝く瞳は猛禽類の瞳のそれで。

 かなり迫力あるっていうか……怖い!!

「じょ、冗談……だよ?」

『まぁ、キミ、スキル結構多いし、魂の質量がボクほどじゃないけど……人間にしては重いからね。壁は薄い方が、何かといいと思うからここまで移動したんだけどね』

「そんなに重いの? 優樹」

『世界とボク、天秤にかけてボクのほうが重い。って説明すれば……規格外っプリはわかってくれる?』

「そんなことあんの?」

『だからこんな世界の外側にいるんですー』

ぶぅぶぅと頬を膨らませてすねる優樹。

ほんと、感情豊かだな。

『戻ったんだよ。……いや、戻してくれる人たちがいた。だからボクはこうして笑ってられる』

「よかったな」

『そだね』


『さて、そろそろかな』

「どうすりゃいいの?」

『眠たくなるから、身を任せたらいい。気づいたら赤子になってるよ』

 たはは、と笑いつつ優樹が応える。

「赤ちゃん……想像できねぇなぁ……」

 ほんと、想像できない。

 前回は……物心つく前だし。こんなはっきり意識なかったような……

 だめだ、思い出せん。

『あはは。まぁ、明日になれば嫌でも赤ちゃんさ』

「うぇ……」

『キミが生まれるのは-8番街-。とても日本に似た場所だよ。きっと気に入ると思う。神族のユウキ(ボク)も、澪夢もいるから……会ったらよろしく。多分、嫌でも関わるだろうけど』

「なんで?」

 好奇心のままに首を傾げる。

 それに優樹はたはは~と笑んだ。

 ほんと、気の抜けた笑い方する……。

『人間の不死者はそれだけ奇特ってことさ』

「不老不死、かぁ……」

 経験したことないからなぁ……事実死んだし。

『赤ちゃんのまま成長しないってことはないから安心して? ある程度までは成長して、そっから老化しないってだけだから。まぁ、12才くらいで成長が止まる事例もあるけど、基本的には二十歳前後までは成長するはず。ま、楽しみにしとけばいいんじゃないかな?』

「合法ロリかぁ……」

 12歳で成長が止まるということに反応して口走る。

 それに優樹が目を細めた。

『え、合法ショタになりたいの?』

 声音にすんげぇ呆れが滲んでいる。

「いいえ、遠慮しときます。俺はカッコイイい俺になりたい」

『黄金比あるから、さほどブスにはならないんじゃない? ヨカッタネ』

 わぁぃ。いたれり……つくせ、り……か?

 なんて言ってると眠気が襲ってくる。

 さっき……言ってた、あれかぁ……。

「優樹とはこれでサヨナラ?」

『んー、まぁ、そうなるね。ボクは基本……内側に干渉する手立てないし』

「そっかぁ……寂しいなぁ……まぁ、短い間だったけど、ありがとう? はじめての転生だから……ぶっちゃけ混乱してたし?」

『だろうねぇ。普通霊体とかあるなんて信じないし……にしてはさほどパニクってなかったよね』

「……許容量越えてたし……」

 何せ死んでからジェットコースター展開だしな。

 っていうか……まじ眠気が……

『そろそろかなー。第2の人生楽しんで~。ボクはここから眺めてるよ』

 手を振る優樹の姿を最後に納めて、俺の意識は夢の向こうへと旅だった。



新たな世界に転生した!

ここまでで0話目。

まだまだ続く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ