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65匹目

「ちょっと、これからの話すっか」

 そう口にして、ソファーに腰掛けるユウキの手にはアルコール飲料。

 9%とかでかでかと書かれているそれのプルタブを慣れた手つきでカシュッと開けて飲みだすユウキ。

 ……ほんとに酒飲みかよ。

 疑ってたわけじゃないけれども、普通にごくごく飲んでるところが、意外。

「それ、うまいの?」

「んー。あと13年経ってから飲めばぁ?」

 ほぼ一気に煽ってから答えるユウキ。

 うわぁ、絶対真似しちゃダメな飲み方だ。

 前世の親父が「酒は黙ってちびちび飲むのがええ男っちゅーもんじゃ」とか言ってたが……懐かしいなぁ。まだ飲んでんのかね? 親父。そら飲んでるか。

 煙草は吸う人でもなかったが、酒には煩い人だった。


 ついでにこっちの母さんは酒を飲まない。

 父さんはちびちび飲んでるみたいだが。

 

「酒のことはいったん置いといて、な。とりあえず今後のことだ」

 日当たりのいい場所にベッドを置いて、その上にきなこを寝かせつつユウキの声を聞く。

 これからのこと。

 とりあえず、きなこの治療……つか、経験値稼ぎ、か。

「とりあえずきなこが目覚めたら、狩りに行きたいところなんだが……」

 なんだが?

 うまく言いあぐねてあーだーと呻くユウキを俺は振り仰ぐ。

 奇妙な姿勢をしていた。

 体をねじっている。言葉が見つからずに苦悩しているのか。

「つかさ、きなこの経験値稼ぎなら、ユウキが連れてけばいいんじゃないか?」

 わざわざ初心者である俺が行かなくても。

 慣れたやつがやればいいものを。餅は餅屋という言葉もあるくらいだし。

 そう疑問を投げつければ、ユウキは苦笑する。

「それが出来ればいいんだけど、な。あいにく。俺がやると魔力過多できなこがパンクする」

「ふーん?」

「ほら、俺の戦闘スタイルって、全域殲滅型だから。見境なく周囲を爆撃して、敵を一掃するってやつ。で、俺自身魔物にとって、格好の餌だから。強い魔物がわんさか寄ってくるわけでして。弱い敵は俺の存在感で近寄ってこないけど? ま、だから結局きなこを鍛えるにはある程度、初心者のやつが弱い敵から地道に屠ってくれないと……って訳」

 酒の缶を軽くゆらしながらユウキが説明してくれる。

 

「ということで、飼い主が責任もって戦ってください」

「……いや、不老不死だし、確かに死にはしないんだけどさぁ……」

 痛いのは痛いんだぞー? と思わないまでもないが。

 まぁ、専門職にしてるかたも痛いのは痛いだろうし、そもそもみんな不老不死というわけじゃないんだから死ぬときは死ぬか。

 実際、冒険者の死亡事故は職業毎でダントツである。


 まぁ、其れはイイとして。


 ユウキが複雑そうな顔をしていた。

 というか、何か言いづらそうにもにょっていた。

 

「何」

 少し不機嫌気味に突っかかる。

 その、微妙に憐れみすら混じった、もにょもにょした表情が癇に障る。

 だが、ユウキがさらに苦笑を深めて「いや、な?」と微妙な顔のまま綴る。

 言い訳でもするつもりですかね? と俺が首を傾げると


「お前は、不老不死関係なく、戦闘で死ぬことってまずないと思うな―」

 ……why?

 傾げた首をさらにひねると、ユウキが噴き出す。

 なんでさ?!

 俺が抗議混じりににらむとユウキはあはは、と笑いつつ膝を打った。

「だってお前……ハルト君。澪夢にお前自身のスキル教えてもらったでしょ?」

「ん? 不老不死?」

「状況適応、永久成長、天賦の叡智、因果律予測に千里眼、あと黄金比。ここまで戦闘に有用なスキル揃っててさらに栄光の御印だ。死ぬ要素、まあないって」

「……」

 俺は何も言えず眉を顰めた。

 いや、なんていうか。

 自分のことながら、実感できないのだ。

 つか、そんなこと澪夢が言ってたなぁって今思い出したくらい。

 不老不死と天賦の叡智は覚えてたけど。

 因果律予測とか、何それって感じだし。

「全部説明するぅ?」

 と、ユウキが気だるそうに呟く。

 その声に俺はユウキを見た。

「してくれるの?」

「……」

 ユウキは口を開けて明後日の方を見る。

 あ、いや、きなこの方を見ているんだ。

 きなこはまだ、目覚めない。


「不老不死、永久成長なんかは字の如くだし? 割愛でいいな。状況適応なんかはどんな状況でも適応できる。まぁ、流石に炎の中とか深海数千メートルで平然とできるかは……個人差あるけどな。ある程度の毒は死ぬ前に抗体作れるんじゃね? あと、どんな冒涜的なことがあっても、発狂できないとか」

「え、なにそれ罰ゲーム?」

 発狂ってある意味救いだと思うんだけど。

「墓守の本性見ても、何もないかもな」

「墓守?」

 なにそれ、と俺が首を傾げたら。

 ユウキはにやり、と笑んだ。

 その笑みで、俺は悟る。

 あぁ……冒涜的な……。

「天賦の叡智は、もうこの年まで生きてたら何となくわかるだろ」

「頭の中に辞書がある」

「感覚的にはそうかもな」

 うんむ、と深く頷いてからユウキは首を傾げる。

「じゃぁ、因果律予測かぁ……千里眼と被るところもあるんだけどな。両方、未来予知系だし」

「何が違うんだ?」

「見てる場所。因果律予測は、因果律を紐解いてる。千里眼はこの星の裏側まで見通す目だから。地続きで未来まで見えるけど……何だろうな。説明しづれぇ……どっちにしろ予測なんだから、干渉できるんだけど因果律のほうが範囲が広い」

「へぇ?」

「まぁ、そこら辺のスキルは、自分で手探りで探ってきゃぁいいんだよ」

 と、ユウキは吐息を吐く。


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