61匹目
「ただいまー」
「きゅっきゅーちゃー」
家に帰って、帰ったことを知らせるため声を挙げる。
それからリビングへ。
母さんはキッチンから顔を出していた。
「おかえり」
「あ、母さん。まだご飯には早いよね? きなこ、公園で遊んだら汚れたから、お風呂入れるね」
「きゅっちゃぁ」
軽く汚れは落としたが、それでもやっぱり汚れているので、お風呂でわしゃわしゃしてやろうと思う。
きなこも風呂は嫌いではないどころか好きっぽいので、異論はない様子だった。
母さんはにこっと笑ってから「沸かそうか?」と尋ねてきた。
が、時間が惜しいので「シャワーにしとく」と答えた。
きなこ、湯が張ってたら湯船につかりたがるしな。
「というわけで、きなこ。今日は盥湯だ」
「きゅっきゅちゃー」
是非はないらしい。
徹底的に泡だらけにして、綺麗に洗ってやる。
きなこはほんと、お風呂が好きなようだ。
それから盥に湯を張って、つけてやれば気持ちよさそうに蕩ける。
そんなきなこの頭の上にタオルを乗せてやり、それから俺もシャワーを浴びる。
ちょこちょこ湯加減を調節してやり、きなこが使っている間に自分は水気を拭って服を着て、髪をドライヤーで乾かした。
そして納得いったのかきなこが這い出したらタオルで拭いてやってからドライヤーを掛ける。
自分の髪は面倒くさいけど、きなこの体を乾かすのはとても楽しい。
やっぱ、しっとりしたからだが乾かされてほわほわになるさまは気持ちいいし、たまらないものがある。
しっかり乾かしてからブラッシングしてやる。
「きゅっきゅちゃぁ」
マッサージにもなっているのか、きなこはさらに蕩けていた。
俺もこの時が至福であるのでWinWinの関係だろうか?
お風呂から上がると、ごはんが出来ていた。
「お父さん、帰ってくるの遅くなるって」
「そうなの? 早く帰ってくるといいけど……」
最近父さん、休日出勤も増えたし、帰ってくるのも遅いので心配だ。
「先食べちゃってって言ってたので、食べましょ……っと、その前に……きなこちゃんにコレ」
とどこからともなく小さな机を出してくる。
折り畳み机だ。
高さ20㎝、幅50㎝幅30㎝くらいの小さな机。
それを床に置いて、その上にご飯の食器を置く。
「コップとかスプーンとか使うのに床の上に食器置くのは、ちょっと食べづらいかなーって思って。ちょうど机あるし?」
と母さんがウインクする。
確かに、イイかも。
きなこはその机の前にスタンバイすると、机の上にあったスプーンを掴む。
「きゅっきゅちゃーん!」
「お行儀悪いから」
「きゅきゅん」
スプーンを勇者の剣みたいにかかげようとするきなこをたしなめたら、きなこは素直にスプーンを置いた。
「ほんと、きなこちゃんはお利口ね」
クスクスと笑いながら母さんが料理を運んできた。
ミネストローネだったか……。
最後にフルーツが入った球状のゼリー……九竜球だっけ? が出てきた。
きなこに一番ウケがよかったのは、当然最後のデザートだった。
父さんは結局俺が起きている間は帰ってこなかった。
宿題をするため部屋に戻ったが、きなこはリビングで過ごしたらしい。
きなこも諦めたのか、俺が寝るくらいになると部屋に入ってきた。
ドアをひとりで開けるくらい平然とやっってのけるが、誰も突っ込まなくなっていた。
ここで10話目終わりー
まだまだつづくー




