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60匹目

「あ、また来た」

 レジ前で座ったまま出迎えてくれたイワナガヒメ様。

 驚いたように目を瞬く。

 いや、冷やかしじゃないし、そんなこと言わんでも。

 ちゃんとおやつ買うよー?

「貴重な常連客にどういう態度……いいけど。」

「いいんだ」


 イワナガヒメ様の駄菓子屋は、今日も閑古鳥が鳴いていた。

 たまに客がいるのを見かけるけど、大体静かだ。

 これ、商売できてるのか?

 俺が心配することでもないけど、さ。


「きゅっきゅちゃぁ」

 声がした方を見ると、きなこが瓶を覗き込んでいる。

 ……いつのまに。

 その瓶の中には……あれだ。

 

 小麦粉、卵、砂糖を使った焼き菓子……丸ボーロと呼ばれるお菓子があった。


 ……確実に異世界菓子。つか前世でおなじみのあれ。

 堕ち人の知識を活用されたやつだ。


「この世界、どれだけあっちの世界に毒されてるんだろう……」

 丸ボーロを数枚、取り出しつつ呟けば。

「さぁ、どうだろう?」

 こてり、と小首を傾げるイワナガヒメ様。

 まぁ、そんなこと、知る由もないよねぇ?


 一口チョコレート、ぷち大福、ラムネなどを購入して、イワナガヒメ様の隣に座る。

 きなこもついてきて、俺の隣……イワナガヒメ様がいる反対に座る。

 ……また突かれるのを警戒してたりするのかね?


「あ、シュークリームあるけど食べる?」

 ふと、思い出したようにイワナガヒメ様が立ちあがる。

 それに俺は「いくらー?」と問いかければ「もらいものだからいいって」と返ってきた。

 まじか。


「ほい。きなこちゃんも食べるー?」

 と、シュークリームの乗った大皿を持ってくるイワナガヒメ様。

 一口とはいかないけど、結構小ぶりなシュークリームだった。

 それが6つ。

 クリーム色のやつとちょっと茶色っぽいのがあるので、ノーマルとチョコレートか?

「きゅっちゃー」

 シュークリームにつられてきなこがイワナガヒメ様に近づいた。

 あぁ、飛んで火に入る夏の虫……

 案の定、イワナガヒメ様につかまり、膝の上にのせられる。

「きゅっちゃ!?」

「はい捕まえたー。6つあるから2つずつにしよっか。きなこちゃん、カスタードとチョコレートどっちから食べるー?」

 と、きなこに見せている。

 きなこは逡巡したが、まず茶色いほうを触手でとった。

 そしてイワナガヒメ様の膝の上で食べ始める。

 クリームこぼさないかな……とハラハラしたが器用に食べている。


 ……初見のはずなんだがな……


 触手で器用にシュークリームを持ち、もちゅもちゅと食べている。

 一つ食べ終わり、もう一つ。今度はカスタード。

「きゅーきゅちゃん」

 心底うまそうに食べていた。

 好きなものは後で食べる派だろうか。

「……甘いの好きなの?」

「……きゅきゅっ」

 イワナガヒメ様が首を傾げて言うので、きなこはカスタードシュークリームを食べる手を止めてから鳴く。

 まぁ、イワナガヒメ様も俺もきゅっきゅちゃん語は理解できないので何言ってるのかさっぱりだが。

 あー……こういうときユウキいると便利だよなぁ……


 でも


「確かに、甘いほうが反応良いかも」

 駄菓子も、興味を引くのは甘いもので。

 イカやせんべいなど塩辛い系はそこまで好きというわけでもないらしい。

 ……渡せば食べるけどな。


「……シュークリーム食べちゃったし、丸ボーロは明日かな」

「きゅっきゅちゃん!?」

 ガーン、とショックを受けるきなこだが。

「晩御飯食べれないぞ?」

「きゅきゅーん」

 目の前にあるのに、食べれないというのはきなおにとって耐えがたいらしい。

 が、母さんの晩御飯は、何度でもいうが豪勢だ。

 小ぶりとは言えシュークリーム2つ食べたのだから、流石にこれ以上はダメである。


 駄菓子を紙袋に入れてもらうと、きなこも諦めたらしい。

 きゅっふぅ、とため息を吐いた。

 まぁ、明日食べようって言ってるんだから、イイじゃないか……。

 明日こそ川に遊びに行くのもいいかもしれない。


 きなこはきっと、川も見たことないだろうなぁ。

 どんな顔をするだろうか。


 いつものようにイワナガヒメ様と少しだべり

 きなこが笑いこけるまでイワナガヒメ様にモフられ。

 ほうぼうになって抜け出したきなこを抱き上げて、帰宅した。


 きなこは俺に抗議の鳴き声を上げたが、やっぱり言っている意味は分からないので、スルーした。

 そんな俺たちをイワナガヒメ様は笑顔で見送ってくれた。


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