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58匹目

「だたいまー」

「あら? 早かったわね。おかえり」

 母さんはいつもどおりに迎えてくれる。

 キッチンで鍋がコトコト音をたてていた。

 なんか作ってるんだろうか。

「なに作ってるの?」

 キッチンを覗きこんで尋ねれば、母さんはニコッと笑んだ。

「秘密」

 ハートマークが飛ぶくらいにはチャーミングな笑顔だった。

 ……さよですか。

「まぁ、いいや。着替えてきたら、きなこと公園行ってくるね」

「そう? 気を付けてね」

 母さんはそう言ってキッチンへ戻っていった。

 きなこはどこかなーと見渡すが……


 いないし。

 いつのまにそんなフリーダムなやつになったんだ?

 いいけど。

 とりあえず、着替えてこよう。

 改めてそう思い、俺は部屋に戻った。


 階段を上がるときなこがいた。

 廊下の、突き当たりにある窓から外を眺めている。

 まあた、普段の体積に見合わない体の伸び方をしていた。


「きゅー……」

「なに見てんだ?」

「きゅきゅっ!?」

 かなり驚いたらしい。

 ぱっと手を離して窓から離れる。

 普段通りの体にもどり、きなこは俺を見上げた。


 目を閉じてるのかと疑いたくなる糸目は、若干つり上がりぎみ。

 クリーム色の、もちもちボディー。

 三角の小さな鼻に、白いウィスカーパット。

 そして生える3本のおひげ。

 小さな三角のお耳のなかはピンク色で。

 短い尻尾はぴるぴる動いている。

 うん。

 超絶KAWAII。


「きゅきゅ?」

 口が開いた時に見える小さな赤い舌が、ほんと……ほんと……

「俺、きなこに会えて、ほんと、ほんとによかった……」


 いや、幸せってこういうこと言うんですね……

 しみじみ噛み締めつつ俺はきなこを抱き抱える。

「取り敢えず、公園行こうぜ」

「きゅっきゅちゃん」


 ……ところで、きなこって公園はご存じなんですかね?


「あ、着替えるから待ってて」

「きゅっきゅちゃー……」


 や、だって、着替えるために部屋に戻ってきたわけだし。

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