53匹目
作者の頭はごちゃごちゃだ!
そう予測を立てて、俺は二階へと向かう。
階段から廊下に出て、そこからベランダに通じる扉を開ける。
ベランダに、母さんはいた。
ただ、洗濯物を取り込んでるわけではなく、ただ、外を眺めていたらしい。
「ただいま、母さん」
「あら、お帰り」
俺の声に、母さんは笑みを浮かべて返してくれる。
それから「お父さんと先にたい焼きたべちゃった。おいしかったわ」と言ってくる。
まぁ、その心算だったし「気にしないで」と笑顔で答える。
きなこは触手を母さんに伸ばしていた。
伸ばされた触手を掴んで母さんがシェイクする。
「きなこちゃんもお帰り~」
「きゅっきゅちゃ~」
嬉しそうになくきなこ。
きなこも大概母さん好きだよな。
まぁ、人がいいし美人さんだ。
母さんを嫌いになる人はまま少ないだろう。
……かわいいモードに入った母さんは若干厄介だが。
「何か見てたの?」
「んー? 別にそういうわけじゃないんだけどねー」
と母さんはベランダから中に入りつつ答える。
長い黒髪を腰辺りまで伸ばし、束ねている。
アーモンドの瞳に輝く光は知的そのものだが、慈愛にも満ちていた。
白いTシャツにジーパン。動きやすい服装を好むけれど、お出かけの時は結構おしゃれをしていたり。
そんな、俺の母さん。
生まれた時から美人さんだと思っていたが、俺が学校に行くようになって余裕ができたのか、化粧もばっちり決めるようになって磨きがかかっている。
そんな母さんが階段を下りながら「ご飯の用意するわね」と笑う。
それを見送ってから俺はきなこを見下ろした。
きなこは首を傾げる。
何となく、くびれは見えないが首っぽいのがあることに気づいた。
ほんと、不思議な生物だきゅっきゅちゃん。
「ちょっと時間あるし、部屋にいようか」
「きゅっきゅ」
きなこともども、部屋で休憩することにした。
「……んぁ」
ベッドに座ってきなこと戯れていたが、いつの間にか寝落ちしていたようだった。
目を開けると、窓の外は暗くなっていた。
……7時、か。
時計を見て時間を知る。
それからあたりを見ればベッドの近くにきなこが転がっていた。
寝相だろうか?
「おーい、きなこー」
「きゅきゅっ」
即座に反応して起き上がるきなこ。
……起きてたか。
「きゅきゅ?」
首を傾げて俺を見上げるきなこ。
ほんとかわいいなぁ。
「きなこ、母さん呼んでないよな?」
「きゅっきゅちゃん」
こくり、ときなこが頷いた。
まぁ、呼ばれたら流石に起きるし、だよな。
ごはんの用意手間取ってるのかね?
「ふーむ。とりあえず様子見に行くか」
「きゅっきゅちゃん!」
触手を伸ばして「だっこ」のポーズをするきなこの、脇を掴んで抱きかかえて俺は一階に降りる。
リビングに行くと、ソファーで父さんがまだ船を漕いでいた。
おおう、珍しいくらい熟睡……
「父さん、なにがあったの」
「んー……ちょっとお疲れなのよねぇ……休日出勤あったし?」
困ったように笑んで、母さんは片頬に手を当てる。
「でも、そろそろ起こさないといけないわねぇ……ごはん食べてもらわなくっちゃ」
ハルトも遅くなってごめんね? と母さんが謝ってくる。
それに俺は気にしないで、と手を振っておく。
「ほら、貴方。いい加減起きて」
「……んぁ……おはよう……」
「きなこ、ここにいて」
「きゅきゅ?」
起こしている二人をよそに俺はキッチンへ向かう。
箸とか、配膳を手伝おうと、そう思ったのだ。
でもつづくなん