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41匹目

まだまだいくよー

「な、ユウキ。この-町-の地下って、掘っちゃダメなんじゃなかったっけ?」

確か条約で地下室は禁止されてたような……。

つまり、ここ、違法物件でFA?

と疑ったが、ユウキは不思議そうに首を傾げて俺の考えを否定した。

「んぁ? 違法じゃねーぞ。ちゃんと届け出でてる。あと、ここの地下は次元がずれてるから問題ないぞ? ハネズのこれはいわゆる神域……一種の結界だしな」

 またチートか。

 なんだよ神域。万能かよ。

「いいんすか、-街-中に異世界作っても」

「届け出出してたらいいんじゃないかなぁ……」

 まじか。

 神様とか、神話系生物はなんでもありだな。

 さすがファンタジー。

「人間にはできないんが悲しいはなしだ」

「ん? 魔術的になら出来るぞ」

「できるんかい」

そうか、魔術も何でもありか。

だが、ユウキがにんまりと笑んでいる。

椅子に腰かけたまま、片ひざで胡座を掻いたかの人は、俺を哀れんでいるような眼をしたまま、人の悪い笑みを浮かべている。

あ、このノリはわかります。

「魔術の神才スキルがあればなぁ……」

「やっぱりかド畜生!」

「うんむ。人の身でやるなら魔術の神才スキルは必須だな」

 ん?

 俺は、ユウキの言い方に違和感を持ち、内心首を傾げた。

『人の身でやるなら』

 その言い方は……。

「人じゃないならいい……あ」

「察しがいいな? 人の身出なければ。神域作成なんて神の種族特性だしな。お前も、魂の種族的にはオリジンだから……神に成るのもさほど難しくはないぞ」

「オリジン?」

 はじめて聞く言葉に俺は首を捻る。

 いやぁ、ユウキといると新しい知識が増えて面白い面白い。

 昔から……前世から学ぶことは楽しく感じてたが、この世界に生まれてからスキルの影響かより楽しい。あぁ、世界が不思議で満ちてるって素敵……。

「この世界の人類は2種類いるんだ。一つは獣から進化したオリジン。まぁ、あっちの世界の人間と同じだな?」

 人差し指をたてつつユウキが解説してくれる。

 好きな、その仕草。

「あぁ……前世。もう一個は?」

 俺は話を進めてもらうために問いかける。

 それにユウキは笑みを返して続きを教えてくれた。

「神が造った非造物……クリーチャー。大体の人間はクリーチャーだよ」

「ほん」

 クリーチャー、ね。

 で、あぁ……。

「魂の種族……ね。肉体はクリーチャーなのか」

「ん。まぁなぁ……この世界のオリジンって、千人に満たないからなぁ……」

「絶滅危惧種やん」

「最早絶滅したと言っても過言ではないけどな」

 嘲笑に似た笑みに変え、ユウキは返す。

 その半ば伏せられた視線の先にあるのは床か、違うのか。

「何でさ」

 興味本位に聞けば、ユウキは軽く肩をすくめる。

 戦争で……だけじゃないだろう。

 現にこの世界にはクリーチャーの方だろうが10万近く人間がいる。

「オリジンってさ、無力なんだよ。普通」

「おん?」

 それが、答えという訳ではないよな。と俺はユウキをみた。

 ユウキの瞳は、俺をみているようで、俺をみていなかった。

 どこまでも透明で、深く。

 澄んだ深海の青に無数の星が瞬いている。

 それは、まるで夜空のようで。

「無力だからこそ、その祈りは神を産むほどに強く、純粋なんだ」

「だから?」

「時には神に成ったりもできる。それがオリジンなんだ、が……。その魂は、極上の贄になる」

 ……。

 また、それか。

 そんな俺の内心を悟ったのか、ユウキが苦笑する。

「神代はそれこそ、いたるところで生け贄文化があったよ。澪夢もその被害者の一人、と言えないこともない。だけど、もっとたち悪いのが、な……」

 どこの世界でも、ありうる話かぁと思わないでもないけれども。

 なんというか……。

「タチ悪い?」

 言いにくそうに口をもごもごしているユウキに、俺は続きを催促する。

 や、そういうの気になるもんよ。

「神も所詮エゴの固まりってうやつでな……オリジンの乱獲が直接の原因だったりする」

 Oh……。

 人間も乱獲される側なんですね、この世界では。

 まぁ、そうか。

 わりと忘れがちだが、この世界。

 魔物も含め強者があまりに多すぎる。

 道具を手にしようが、覆せないくらい理不尽な存在がごまんといる。

 目の前にいる神なんてもっともたるものだろう。

 それに、動物とのハイブリットともいえる獣人、魔導技術において一線を画してるエルフ、ドワーフやコボルトを始めとする小人族にすら技術・力共に劣るのが我ら人間である。

 竜なんてもっての他だよな。人間が国単位で集まっても戦争にすらならないもんな。

 そら、オリジンも狩られますわ。

「ユウキもオリジン狩ってたのか?」

「んなことしてたら、澪夢に殺されるっつーの。つっても、生け贄なんかは捧げられてたけどな……」

 はぁ、とため息を吐く。

 愁いの滲んだその顔は、過去を思い出してか、どうなのか。

「生け贄かぁ……」

「きょーみおありでぇ?」

 すんげぇ、嫌そうにうめくユウキ。

 まぁ、もらっても困るよね。

 イジケ気味に足の上で頬杖をついて、ユウキは愚痴り出す。

「生きたまま捧げてくれりゃ、-十三番街-で死ぬまで暮らしてもらうなりなんなりできんのに、あいつら殺すとこまで儀式のうちにいれやがるから、まじ困るんだよなぁ……魂捧げられても≪流れ≫に帰してやることしかできねーし。儀式の性質上わりと自殺扱いになることが多いから魂汚れるし、他殺の場合はほんと……遺体がみれないくらい無惨だし……人間、なんで他人にあんな無関心になれるのかね……」

 ……。

 たまってんのな。

「今もあるのか?」

「あ? あったら地獄行きだろ……と、いいたい、が」

 冗談半分というか、ないことを確信しつつ聞いたのに、期待した答えとはすこし違う回答が返ってきて内心焦る。

 え、嘘。まだあるの? 生け贄文化。

 早く滅べよ。

「が?」

「……例外ってわけでも、ないんだけど……その、”贄”って存在がいてなぁ……」

「にえ?」

「ん。とある条件をクリアした、清らかな魂に付与される厄介な能力で、な。ある意味病気」

「病気、なのか?」

「……神に捧げられて、喰われないと生きていけない体質になる」

「は?」

「”贄”の条件が、オリジンの魂で、純粋無垢、あと色々あるんだが……なにより、一度生け贄に捧げられたってのがあるんだが……つまり、供物専用の魂に進化しちゃうわけ」

「なにその理不尽」

「ほんとに、な。喰われたい、捧げたいという思いで魂を自壊させるから、ほんと……あいつらの救命の為に生け贄文化は特例としてだが残ってたりする」

「はへ……でも食われたら死ぬんじゃねーの?」

「死なないように、魂を傷つけないように喰らうってのは確かに技術がいる話だが、まぁ、できないこともないわけでして。それに……食事的な意味じゃなくても良い訳でして」

「あ゛?」

 によっ、とやらしく笑うユウキに俺はガンを飛ばした。

 食事的ないみじゃない、喰らう。

 そら、別の意味というなら“そういうこと”でして。

「……サイテー」

「ばばばばば、ばかをいうんじゃないですよハルトくん! 俺はこれでも一途なんだぞ?!」

 何て言ってるが、澪夢さん以外にもそういうことした”贄”とやらがいるから、『そういうこと』でも”贄”を助けることができると知っている、と。

 言ってるようなもんじゃないのかい。

 いつか澪夢さんにチクっておこう。

 ……時効か。


 そうこう駄弁っていたらいい時間になったらしい。

 きなこをつれてハネズさんが戻ってきた。

 ユウキは部屋の隅でエグエグないている。

 なんというか、タカトーのイメージが強すぎて、少女の姿をしてても女装しているようにしか感じないので、扱いが雑である。

 きなこはユウキに近づいて触手で肩をたしたし叩いている。

 それにユウキは「きなこは優しいなぁ……」ときなこの頭を撫でていた。

「なにがあったのん?」

 と興味本位といった顔でハネズさんが首を傾げるので、俺は「自爆したんっすよ」とだけ答えた。

 ユウキはなにか言いたそうにしていたが、きなこを撫でることをやめず、結局なにも言わなかったのでスルーしとく。

「きなこー、ハネズさんにいろいろ見せてもらったかー?」

「きゅきゅ? きゅっきゅー!」

 きなこに声を掛けるときなこはユウキからはなれて俺に飛び付く。

「きゅきゅきゅっ、きゅきゅー……きゅっきゅきゅきゅー!」

 何を言ってるかさっぱりだが、楽しかった気持ちだけは伝わった。

「そーか、よかったなぁ」

 と笑いかけて、きなこを抱えた。

 それからユウキへ視線を戻す。

「そろそろ帰るけど」

「あ、そう? 早いな?」

「きなこをイワナガヒメ様に見せようと思って」

 かの神様のお陰できなこと巡りあったのだし、お礼いっとこうと思ったのだ。

 それにユウキはひとつ頷き、それから何か思い付いたらしかった。

「あ、じゃぁ。チルヒメんとこも行こうぜ?」

 ……。

 あ、そういえば澪夢も溢してたな。

 その名前。



まだまだつづくー

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