39匹目
つづきー
そういえば。
「最初あたりでハネズさんが≪たんまつ≫とか言ってたの、何?」
「≪たんまつ≫? ハネズさんの≪たんまつ≫はねぇ、ハネズさんの手となり足となり働いてくれたり自由気ままに遊んでる使い魔みたいな、分身みたいな子たちだよ」
とハネズさんが手のひらを俺に見せてくる。
その上には、小さな妖精みたいな……デフォルメされたハネズさんがいた。
背中にオリジナルのハネズさんにはない蝙蝠羽が生えている。
おお、かわいい。
こんなちっこいのに働いてくれるのか……すげぇな。
「主原料はハネズさんの血だね」
と言いつつ指で≪たんまつ≫のほっぺをうりうりと突きだすハネズさん。
≪たんまつ≫は喋らないが幾分嫌そうな顔をしていた。
「で、ハネズさんと喋りに来たんじゃないんだよね? 何がご入用?」
と、唐突にハネズさんが首を傾げる。
あぁ……そういえば、武器を見繕いに来たんだっけ。
つってもなぁ……。
「”栄光の御印”持ち、しかも不老不死スキルもある勇者の卵様を、冒険者に引き込もうかと思ってな。武器を見繕いに来た」
ニコッ、と笑顔でユウキが言う。
それにハネズが首をかしげた。
さらりと銀色の髪が流れていく。
「あぁ、そうなの? 彼が? ……みえないにゃぁ」
「わるかったな」
なんとなく、バカにされたのはわかったのですねてみる。
「やぁ、ごめんごめん? バカにしたわけじゃないよぅ? ハネズさん、武器商人だからね。目を見ればどんな武器が必要かわかるんだけどさぁ」
「スキルに鑑識眼でもお持ちで?」
「残念、鑑定スキルだ」
ユウキに尋ねれば、嫌な笑みを浮かべてユウキは答えてくれる。
そうか、鑑定か。そういうのもあるのか。
「まぁまぁ、聞けよ少年。ハネズさんの話をさぁ……そんなハネズさんでも君がいま武器を必要としてるようには見えない訳で」
平和主義かい? と問うてくる。
まぁ、命のやり取りなんぞそう積極的にしたくはないな。
それしか手段がないなら、いざ知らず。肉食うためにいちいち狩りにいかなきゃいけない状況ではないわけで。
スーパーにいけば美味しく成形された肉もあるし、金さえあれば大抵のものは手にはいる時代である。
近代文明様様。
まぁ、大金が要りようではない限り、冒険者なんてしなくても生きていける。
俺も将来はきゅっきゅちゃん牧場を継いで……それができないのなら、サラリーマンでもするかと思ってるくらいだ。
冒険者は……うん。
痛いのも、怖いのも、嫌いなのだ。
「無理に武器見繕わなくてもいいんじゃないかにゃ? 武器を得たとして、スキルはともかく。気性的にまともに戦える子じゃないと思うなー。ハネズさん」
「まじか……ハネズのお墨付きを得てしまったなら、もう無理だな……」
残念。
とユウキが肩を落とす。
……そんなに、悲しいもの?
「”栄光の御印”は、スキルじゃないんだけど、世界に愛された勇者の証。その気になればあらゆる武勲を挙げられる……中国で言うならナタ太子も夢じゃない」
「まじかよ」
「その気があれば、な」
「ないなぁ、その気」
納得、と苦笑して俺はユウキを見る。
それに、ユウキは肩をすくめた。
「悪かったな、無理矢理つれてきて」
なんて、殊勝なことを口走るから。
「熱でもおありで?」
医者行く?
不安になったのでそういってみた。
いや、ガチで病気かと心配なんだが。
「素直に謝ったらその態度かよ?!」
あ、大丈夫そう。いつものユウキだ。
「きゅーきゅー」
ガタガタ。
和やかーに喋っていたら、きなこの声。
いつのまにか俺のそばから離れて遊んでいたようだ。
「きゅー、きゅー」
カランカランとなにかをさわっている。
よく見ればそれは、弓だった。
弦が張られていない、それは石のような材質に見えたが、石ではないらしい。 ひどく軽く、きなこの細い触手がさわるだけでガタガタと動いている。
精巧な彫刻が施されたそれは、芸術としてもなかなかの業物のように見えた。
「きゅーきゅー」
うにょうにょと細い触手で執拗に弓をさわっている。上、下、横……つんつんとつついてはカラコロと鳴るその様が楽しいのだろうか。
いや、色が薄いクリーム色っぽい。色がいいのか? お気に召したのか?
「きなこ、ほしいの?」
「きゅー、きゅ」
抱えると、きなこは触手をしまい、弓から手を離す。
だが鳴くのはやめる気がないようだ。
きゅー、きゅきゅーと鳴いている。
「なんて言ってるの?」
とユウキを見ると、ユウキは苦笑のまま肩を竦めていた。
「ほしい、ってさ」
「えぇ……」
あのサメのぬいぐるみみたいにかじる気ですか?
それとも、家に飾れと?
どっちにしても無茶を言う……。
「あげてもいいけどー。きなこちゃん? だっけ。えーと、亜空間操作など可能で? もしくはサテライトと契約してたり」
「ないなぁ……」
と答えたのはユウキ。
それにハネズさんが「じゃぁ、お預けだぁ」と苦笑する。
きなこは「きゅきゅー」と鳴いた。
ちょっと悔しそう。
しかしそれにハネズさんが苦笑を深める。
「大人になったら、ね? 取り置きしとくよぉ」
まじかよ。
「え。有効活用できませんよきっと」
思わず俺が口を出すが、ハネズさんは「あっはっはっ」と朗らかに笑……いや、爆笑した。
「武器商人なめられちゃ困るなぁ。ハネズさん、これでもニーズをちゃんと見極めれる子なのです。あ、お代は気にしなくて良いよ? お近づきの印にあげちゃおう」
わぁぉ、太っ腹。
「ありがとうございます?」
「素直にお礼が言える子はハネズさん大好きだぁ。あ、代わりっちゃなんだけど、暇な時にバアルちゃんとデートしたげてよ。君、絶対タイプだから」
え、まじで?
バアル・ゼブル様とおデートできる権利もつけてくれるって? いいの? タダで?
「お前、ホント外津神すきだよなぁ……」
俺も神様なんだけどなぁ。
なんてぼやくユウキ。
あん? 嫉妬か?
そんなユウキは放っておいて、俺はハネズさんの連絡先もゲットしたのだった。
「で、バアルなんでいねーの?」
とユウキが首を傾げる。
それにハネズは真似するように首を傾けつつ応えた。
「ん? 取引先に契約更新しに? たぶんごねられてるんだと思うよー。バアルちゃんだから心配してないけど」
「あぁ……なるほど?」
と言いつつユウキは店内のすみに転がっていたパイプ椅子を引きずってきて腰かける。
ようようみれば、店内は埃っぽい。
天井付近なんてクモの巣だらけだ。
掃除しろよ。
全体的に基礎丸だし、鉄筋コンクリートの室内は蛍光灯の光に淡く濡れている。
換気のファンが緩く回っているのが、なんというか、雰囲気ある。
それは、いわゆるゾンビ映画の武器屋さんなイメージだった。
かび臭い空気のなか、しかし武器自体はきれいにされている。回りも掃除すりゃいいのに。
剣やら弓やら槍やら薙刀、それに銃、斧……様々な武器が陳列されている。
ハネズさんはそんな武器の傍らで椅子に座っていた。まぁ、今はきなこが気になってちょこちょこ動いているけど。
きなこは警戒しぱなっしである。
つづくー




