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35/83

32匹目

つづきー

 -八番街-は不夜城……眠らない-街-として有名らしい。

 中央区、歓楽街は人の行き来が消えることがない。

 澪夢がいうには、この-街-は首都である-1番街-の次に人口が多く、この国で一番金が回っている-街-らしい。


「あ」

 ふと、思い出した。

 そういえば、中央区のArkにはそれはそれはすばらしい温泉テーマパークがあったような。

 基本的にArkは前世でいう市役所的な場所なのだが、澪夢がこだわった社員銭湯が、まぁ……こだわりすぎた結果、温泉テーマパーク化してしまったので、一般にも解放されているのだ。

 えーと、1日券が600リーブだったか……割り高だが、入る価値はある。

 ……の、だが。

 今日はきなこには内緒にしておこう。

 温泉だけで時間がつぶれるに決まっている。

 あと、ペット同伴OKだったか、自信がない。

 サイトで調べなければ……。

「きゅきゅん?」

 案の定、俺の声に反応したきなこ。誤魔化しに頭を撫でたらフスッと息を吐かれた。

 それ、怒ってるのか?


 とりあえず、ペットショップに直行することにした。


 ペットショップはほどほどに賑わっていた。

 これ、みんなペット飼ってる人たちなんだろうか。

 客を横目に俺たちはベッドコーナーへ向かう。

「とりあえず、ベッドを購入しようとおもうんだけど……どれがいい?」

「きゅきゅん?」

 きなこを床に下ろしてやる。

 きなこは俺を見て、首を傾げていた。

「きなこ専用のベッドを、な? ちょっと一休みするのにもいいだろ?」

「きゅきゅーん」

 俺の言葉に納得したのか、きなこはベッドの方を見る。

 大型用から小型用、子供用など多種多様、色とりどりのベッドが置いている。

「これから暑くなるから、ひんやりするベッドとかもあるぜ?」

 きなこはクリーム色が好きなようだから、クリーム色の、接触冷感の布が使用されている猫用ベッドをきなこに見せてやる。

 大きさはちょうどきなこがすぽっと収まる程度。

「きゅきゅ? ……きゅきゅーん」

 手でさわったとたん、溶けた。

 とろーん。

「きゅっきゅ、きゅきゅちゃん」

 気に入ったようだった。

 それと、普通のふかふかした猫用ベッドと、毛布とタオルケットを買うことにした。

 もちろん全部クリーム色。

「そういえば、猫っぽいけどキャットタワーとかは好きなのかね?」

「きゅきゅちゃ?」

 ふとおもったので、キャットタワーがある場所につれていてやる。

 この世界でも、犬や猫は人気のペットらしく、ペットショップでも犬や猫用品がたくさんある。

 動物病院も犬猫専用が目立つくらいだ。

 かわいいもんなぁ……。きゅっきゅちゃんには負けるけど。

 ほんと、前世要素が目立つ。

 まぁ、店員さんなんか機構天使だし、客も人間よりエルフや竜人、獣人のほうが目立ってるし、冒険者なんか武器を装備してるから異世界だって認識できるんだけど……。

「きゅきゅーん」

「って、あれ?」

 やけにきなこの声が遠い、と思ったら手元にきなこがいない。

 回りと見渡すと……いた。

「きゅきゅーん」

「はい。……いいえ、マスターはここにはいません」

 きなこはどうやら店員の機構天使に話しかけているようだった。

 ……機構天使は言ってることわかるのか……まじか。

「きゅきゅきゅーん」

「いいえ、きゅいきゅいさんなる商品は存在しません。……違う、ですか?」

「きゅきゅきゅきゅきゅ……」

「はーい、店員さん困らせないのー」

「きゅー」

 きなこを抱えると、残念そうに声を挙げた。

 それに機構天使が首を傾げる。

 滑らかなエメラルドの髪は肩甲骨を隠す程度に延びていて、大きな翡翠の瞳。白い肌、身を包んでいるのはこの店の制服か。

 背中にトンボのような半透明の翅が4枚。

 これまた淡いエメラルド。全体的に緑な機構天使だった。

「なるほど、マスターはあなたでしたか」

 感情のこもらない声で店員さんが頷く。

「ご迷惑をおかけしました」

「いいえ。大丈夫です。ところで、お目当ての商品はございますか?」

「色々見て回っている途中です。気になることがあれば聞きますね」

「わかりました。よりよい時間をお過ごしください」

 そういって店員さんが離れていく。


つづくー

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