26匹目
つづきー
「きゅー」
……きゅいきゅいさん本人には出来ないことをぬいぐるみで晴らしているのか……きなこ……
そんな苦手なの?
「きゅー……」
きなこは答えてくれない。
ただ、鮫のぬいぐるみの背中あたりに噛みついているだけである。
「そろそろ家帰るか」
「そだね。つく頃には夕方か……」
今日の晩飯なにかなー。
って、きなこのご飯人間と一緒でいいって話母さんに言っとかないと。
サテライトを呼び出して母さん宛にチャットを送る。
すぐ母さんから反応が来た。
今日は焼き魚らしい。
「魚だってさ」
「きゅきゅん?」
触手で鮫の首を絞めながら首を傾げるきなこ。相変わらず頭の方を噛みついている。
やることが怖い。
いい加減ぬいぐるみなのに鮫が涙を流しそうである。
「いい加減許してやれよ」
「きゅぅ……」
触手をしまい、口を開けるきなこ。
わぁ、頭部がよだれでべったべた。
「家帰ったら鮫は洗わねーとな……」
「きゅーきゅー」
反省しているのか、よく分からない声をあげるきなこ。
とりあえず、頭を撫でてやった。
ふすり、と鼻息をあげるきなこ。
だからそれはなんの感情なのか。
「きゅっきゅちゃーん」
とりあえず、そう鳴くのはなにか勝ち誇った時だ。
それは学習した。
あいあむちゃんぴおん。 なるほど。
「あ。洗うで思い出したが」
「おん?」
「きゅっきゅちゃんは、風呂嫌いが多いから。覚悟しとけよー」
おう……。
「きゅきゅん?」
と、不思議そうに俺の顔を見上げるきなこ。
「風呂、入らないと臭いもんなぁ……」
「きゅきゅー」
風呂、嫌いなのかねぇ……
暴れられるのは……やだなぁ……
最悪、あの触手攻撃と噛みつきがくるんだろう……?
鮫に空いた穴を見つつ俺は喉を鳴らす。
……痛いのは、やだなぁ……。
「最後にポチ買ってから帰ろうぜ」
「でた、4大不思議生物」
ポチ。
-八番街-で有名な「食べ物」である。
特産品といっていい。
どこでも売ってる。ソウルフード、なのだが……。
「今思ったけど、普通に食ってるけどさ。ポチが生きてるとこって、ユウキ知ってる?」
「見たことないな」
近場の屋台で見つけたポチ(ノーマル味)にかぶりつきながらユウキが答える。
紙カップに入ったそれは、なんていうか、形容しがたい。
実は俺、食ったことないんだよなぁ……。
それがこの-街-の名物だというのは理解してたのだが。
だって、これ、形容しづらいっていうか。
モザイク処理が必要なグロさがあるのだ。
うねうねしたタコ足のような……紫色の何か。
料理された後なはずなのに、生きているようだ。
ビチビチ言ってるよぉ……
足はまだマシなのだ。
問題は、足の先にある……
「口、だよなぁ……」
もう、SAN値チェック必要な感じのそれ。
あえて描写は避けよう。
俺も見たくない。
きゅっきゅちゃんは、ポチに興味があるようだ。
ふすふすと鼻を近づけて臭いを嗅いでいる。
「きゅきゅ、ちゃ?」
ポチの足部分を竹串で1本刺し、きなこの口へ近づけている。
もきゅっと一口。
「きゅきゅ……きゅきゅ、ちゃー……」
うまそうにしている。
うーん。食えるってわかってるけど。
なんというか……。
意を決して、一口。
……弾力……すご……あ、噛めば噛むほど味が出るタイプか……。
……。
「うまいだろ」
「意外。だが納得。特産品だわ……」
1本食べてしまえば、後に抵抗はなかった。
見た目はグロいが、まぁ、うまいな。
完食するのにさほど時間はかからなかった。
4話終わり―
まだまだつづくー




