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22/83

19匹目

こんかいもながいー

「特に-八番街-はそうかもな」

 ユウキが空へ視線を投げながら呟く。

「え? ユウキ、なに?」

 何を指しているのか一瞬分かりかねて、俺は首をかしげた。

「や、仕組みがな。きっちりしてるっていうか。最初期から澪夢が口だしてたからなぁ……徹底的にいい-街-をここに築くって、躍起になってた」

 苦笑。

 過去を思い出して、少し切なそうに、可笑しそうにユウキが笑む。

 長い付き合いだったらしい。

 結婚出来たのは、それこそ最近だけど。

 酸いも甘いも、知り尽くした仲である、らしい。

 澪夢がどんな過去を送ってきたのか、表面だけサラッと教えられたけれど……まぁ、あんな経歴をたどってたら『良い-街-を作る』ことに執着するのもわからないでも……ない。

 事実この-街-は暮らしやすい。

 他の-街-を俺は知らないけれども。

 でも、この-街-で犯罪は滅多に起こらず

 弱者は弱者のまま自由を謳歌できる。

 虐げられることは、ない。

 女性が夜道を歩いていても、無事家に帰ることができる。子供が歓楽街にいても(そういういかがわしい場所がある場所は別にしても)楽しめるし、泣かされることはない。

 そもそもこの-街-に浮浪者はいない。

 職を失った人はそれ相応の手続きは必要だが、新たな就職を斡旋してくれる機関があるし、収容所というには少々豪華な施設が用意されていて、ある程度は衣食住を保証してくれている。

 文化的な必要最低限の保証はされていたりする。

 ま、その代わり税金は結構重かったりするんだけど……子供の俺には関係のない……話しであって欲しい。

 馬鹿が割りを食うあたり、ディストピアたる所以だろうか……。


 ついでに。

 この-街-に浮浪者はいない。

 しかし、この-街-にある無所得者用の宿泊施設はある程度の期間しか衣食住の保証をしてくれない。

 普通はその保証された期間で新たな職を手にして一般社会に戻っていくのだが……

 これを踏み倒して、施設に居座る、もしくはホームレスをしようとすればどうなるか。 


 答えは、地獄行きである。

 まぁ、数少ない例外もあるけれど。

 基本は、地獄行き。


 しかし、一見この-街-はユートピアだった。

 まぁ、気づいてしまえば……

 やっぱり、ディストピアなのだろう。


 ……この-街-……いや、この国、アルヴェリア王国での成人は18歳である。

 18歳からは納税の義務もあるし、社会人として扱われる。あ、ついでにこの国、王政だけど、女王以外の政治家は選挙で選ばれる。

 絶対的な権利を女王が持っていて、最終決定権は女王が持っているんだけど、女王一人でなんでも決めるのは宜しくない、外からの声が欲しいとかなんとかと女王がいったらしく、国民が選んだ政治家を交えて政治をしているらしい。

 で、4年だか6年に1度、政治家を選ぶ選挙があるのだが、その選挙をする権利も18歳からである。

 ついでに政治家になれる権利は25歳から。

 

 大体の権利は18歳に解禁される。

 が、酒とタバコ、それから賭け事は20歳から。

 ……これは他の知性体も含めて一律である。

 ま、人間の寿命が一番短いから、不都合ないんじゃないかな……。ないよね? わかんないけど。

 ま、権利なので強制でもないし?

 例えばエルフは精神の成熟が緩やかなので、20歳でも小学生低学年とさして変わらないというのが多い。だから、飲酒喫煙、賭け事などは見送らせるというのも良くある話で……

 そういう訳なので、エルフはエルフ同士固まってコミュニティーを形成する。一種の集落じゃないけれども。

 あとは龍なんかはその生い立ちゆえか、生まれた時点で完成してる訳で、それでも18歳までは子供扱いされるのが気にくわないらしい。

 ま、それでも-街-のルールと割りきって我慢するのが多いみたいだけども。


 ……掘り下げると、まぁ、暗い話だな……

 闇が見えるぞ、闇が。

 

 そういえば……知性体と称される、一定の知性・意思あるとされる種族には国民としての権利が存在するのだけども……

 きゅっきゅちゃんや犬猫、家畜をはじめとする、いわゆるところの動物には国民の権利は認められない。

 で、そこで困った問題があって……

 所謂「知性の発露」系スキルの存在である。

 

 まず、スキルというのは普通その種族に存在しない能力のことである。

 例えば俺の不老不死。

 人間は普通、寿命があるし老化する。

 その枠の範疇外である不老不死はスキルということになる。

 で、普通のきゅっきゅちゃんには知性はない。

 本能として色々なことができるし、同種族でコミュニケーションをとることはしても、人間のような思考はしない……とされているのだけれども。

「知性の発露」系のスキルは、その知性を芽生えさせるスキルで。

 つまり、「知性の発露」系スキル所持者は知性や意思を獲得できるので、国民の権利を得るポテンシャルは揃う訳でして……

 ま、そのポテンシャルを証明できないので、基本的にはやっぱり国民と認められることはないんだけれども……。

 すごく難しい問題だったりする。

 

 きなこは、俺が思う以上に賢いらしい。

 もしかしたら……「知性の発露」系のスキルを獲得しているのかも、しれない。

 その時、俺は……


 ……。

「特に-八番街-はそうかもな」

 ユウキが空へ視線を投げながら呟く。

「え? ユウキ、なに?」

 何を指しているのか一瞬分かりかねて、俺は首をかしげた。

「や、仕組みがな。きっちりしてるっていうか。最初期から澪夢が口だしてたからなぁ……徹底的にいい-街-をここに築くって、躍起になってた」

 苦笑。

 過去を思い出して、少し切なそうに、可笑しそうにユウキが笑む。

 長い付き合いだったらしい。

 結婚出来たのは、それこそ最近だけど。

 酸いも甘いも、知り尽くした仲である、らしい。

 澪夢がどんな過去を送ってきたのか、表面だけサラッと教えられたけれど……まぁ、あんな経歴をたどってたら『良い-街-を作る』ことに執着するのもわからないでも……ない。

 事実この-街-は暮らしやすい。

 他の-街-を俺は知らないけれども。

 でも、この-街-で犯罪は滅多に起こらず

 弱者は弱者のまま自由を謳歌できる。

 虐げられることは、ない。

 女性が夜道を歩いていても、無事家に帰ることができる。子供が歓楽街にいても(そういういかがわしい場所がある場所は別にしても)楽しめるし、泣かされることはない。

 そもそもこの-街-に浮浪者はいない。

 職を失った人はそれ相応の手続きは必要だが、新たな就職を斡旋してくれる機関があるし、収容所というには少々豪華な施設が用意されていて、ある程度は衣食住を保証してくれている。

 文化的な必要最低限の保証はされていたりする。

 ま、その代わり税金は結構重かったりするんだけど……子供の俺には関係のない……話しであって欲しい。

 馬鹿が割りを食うあたり、ディストピアたる所以だろうか……。


 ついでに。

 この-街-に浮浪者はいない。

 しかし、この-街-にある無所得者用の宿泊施設はある程度の期間しか衣食住の保証をしてくれない。

 普通はその保証された期間で新たな職を手にして一般社会に戻っていくのだが……

 これを踏み倒して、施設に居座る、もしくはホームレスをしようとすればどうなるか。 


 答えは、地獄行きである。

 まぁ、数少ない例外もあるけれど。

 基本は、地獄行き。


 しかし、一見この-街-はユートピアだった。

 まぁ、気づいてしまえば……

 やっぱり、ディストピアなのだろう。


 ……この-街-……いや、この国、アルヴェリア王国での成人は18歳である。

 18歳からは納税の義務もあるし、社会人として扱われる。あ、ついでにこの国、王政だけど、女王以外の政治家は選挙で選ばれる。

 絶対的な権利を女王が持っていて、最終決定権は女王が持っているんだけど、女王一人でなんでも決めるのは宜しくない、外からの声が欲しいとかなんとかと女王がいったらしく、国民が選んだ政治家を交えて政治をしているらしい。

 で、4年だか6年に1度、政治家を選ぶ選挙があるのだが、その選挙をする権利も18歳からである。

 ついでに政治家になれる権利は25歳から。

 

 大体の権利は18歳に解禁される。

 が、酒とタバコ、それから賭け事は20歳から。

 ……これは他の知性体も含めて一律である。

 ま、人間の寿命が一番短いから、不都合ないんじゃないかな……。ないよね? わかんないけど。

 ま、権利なので強制でもないし?

 例えばエルフは精神の成熟が緩やかなので、20歳でも小学生低学年とさして変わらないというのが多い。だから、飲酒喫煙、賭け事などは見送らせるというのも良くある話で……

 そういう訳なので、エルフはエルフ同士固まってコミュニティーを形成する。一種の集落じゃないけれども。

 あとは龍なんかはその生い立ちゆえか、生まれた時点で完成してる訳で、それでも18歳までは子供扱いされるのが気にくわないらしい。

 ま、それでも-街-のルールと割りきって我慢するのが多いみたいだけども。


 ……掘り下げると、まぁ、暗い話だな……

 闇が見えるぞ、闇が。

 


つづくー

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