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16匹目

つづきー

 どうも、

 ハルト・アーバイン、7才です。

 今日からきゅっきゅちゃんと、暮らします。

 ……や、まぁ、まだ独り暮らしは早いんだけどね?

 いや、それはいいとして……。


 この、俺の腕のなかですでに寝息を立てているきゅっきゅちゃんが、今日から家族になるきゅっきゅちゃん。いやぁ、きゅっきゅちゃん蕩けるね。

 びっくりするくらい溶けてる。これ、え、なにこれ、骨あるの?

 体長30センチくらい、クリーム色の体毛は極短。

 生き物にしては軽い。え、ホント骨ある?

 ふわふわというよりはすべすべ。

 そしてふんわりあたたかい。生きてる。

 ぷうぷうと鼻息とともに鼻提灯が膨らむ。

 完全に爆睡である。


 小さな三角耳と、短い尻尾。

 

 こいつ、昨日柵にめりこんで脱走しようとしていたきゅっきゅちゃんなのだが……。

 なんか、めっちゃ俺に懐いているらしいのだ。


「きゅうきゅう、きゅきゅきゅきゅきゅっ」

 と鳴きながら俺を追っかけ右左。

 柵にめりこんでは俺を呼び止める。

 必死のアピールでした。

 それに根負けし、そもそも他のきゅっきゅちゃんは俺に無関心だったので、こいつを飼うことにきめたのだ。

 で、アピールが必死すぎた結果。

 精魂尽き果て、俺の腕のなかで爆睡という……。

 馴れるとかそういうレベルじゃないよな。

 初対面に等しい人間の腕のなかで爆睡って……。


 結構アホな子なのかもしれない。


「名前どーすんの?」

 歓楽街行きのバスに乗り込みながら問いかけてくるユウキに対して、俺は爆睡しているきゅっきゅちゃんを見る。

 名前、かぁ……。

 そうだなあぁ、これからこいつは長いのか短いのかわからない時を俺と過ごすんだもんなぁ……


 ……。

 しっかしこいつ、餅みたいに蕩けてんな。

 色からしても……


「きなこもち……」

 

 ……。

 なんか、もちは要らんな。


「きなこにする」

「きなこ……。つか好きなの?きなこもち」

「和菓子は好き」

 前世ではよく和菓子屋に入り浸ったもんだ……。

 まぁ、祖父が和菓子屋ってのもあるんだけどな。

 わりとおじいちゃんっ子だったのだ。

 ……食い物(主に餅)に釣られたなんて話は内緒だ。内緒だからな!?

「じゃぁ、雪花庵にも行くか……」

 せっかあん……? 流れからして和菓子が食べれるぽいお店らしいけど……歓楽街はあまり行くことがないのでよく分からないな……。

 別に親から止められてるとかそういう訳ではなく、純粋に遠いので滅多にいけないだけである。

 

 中央区だけでも、半径40キロメートルくらいあるのである。で、俺の家はわりと外周付近。居住区と農林区の境目付近なので……

 中心地にいくのも結構長旅である。


 ついでに、きゅっきゅちゃん牧場は農林区と山岳区の間、中央区の外周ギリギリなので、歓楽街にいこうとするとこれまためっちゃ時間がかかるのだ。

 

 バスに揺られ、電車に揺られ。

 睡魔に勝てずに2人と1匹で微睡んで。

 気づいたら終点手前だった。


 歓楽街前。


「先にペットショップ?」

 ユウキに尋ねると「そだねー」と返ってくる。

「そういえば、ユウキって神様なんだよな?」

「あ? ……あぁ、そだね。俺、神族のユウキだしね……」

 忘れてたわ、と口のなかで呟いたのを俺は聞き逃さなかった。

 忘れてたって……。

「神様ってことは、なにか、司ってんの?」

「魔術全般」

 即答だった。

 魔術?

「この世界の、ありとあらゆる魔術の管理をしてる。人間が魔法を使えるのは俺が仲介してるから」

「うぇ。さすが創造神」

「あ、違う違う。これは俺の権能」

 感心する俺に、ユウキは手を振りつつ訂正する。

 ん? ユウキの?

 俺の頭上にはてなが乱立する。

 目もぐるぐる回ってそうだ。

 そんな俺の反応にユウキが苦笑した。

「スキル使っても意味わかんねーだろう。そらそーだ」

「わかってるなら説明はよう。つかスキル使ってる意識ねーです」

「天賦の叡知はパッシブだからねぇ……。つか創造神とか言ってるけど、システムの優樹(俺)は神族じゃねーぞ。神格もってねーから」

「ん?」

 神様じゃ、ない?

「おう。アレは世界そのものに同化してるから。そもそもこの世界がシステムの優樹(俺)といっても過言ではないし、ね。この世界の神族の定義には合ってねーよ。あれは」

「規格外……」

「そうだぜ? お前が見たのはあいつの一旦。わかりやすいように俺の、もとの体をイメージしたアバターだから。人の形をしてるから、油断しただろ」

 クケケッと嫌みな笑みを浮かべるユウキ。

「そーいうおまえはー?」

 半目でにらみ返せばユウキは笑みのまま片目を閉じた。

「俺ぇ?」

 すっとんきょうな声をあげられた。

 えー。そんな反応するぅ?

「俺は……アレよりはマシだろう……いうけど、魔力やら能力やらの大部分はシステムの俺がもってんだぜ? 俺の能力なんて……ホント……もとの俺どれだけ規格外なのよ……」

「システムと比べてなんパーくらい? 今のユウキ」

「1%未満」

 即答された。

 1%未満でこの世界のありとあらゆる魔術を司ってんの? そ、マ?

「つか、俺とアイツは、もとは同じだけど別物だから……システムの優樹(俺)とか神族のユウキ(俺)とか言ってるからややこいけど……人格も別人だからね。最早」

「なんでもアリなのね」

「まぁ、この世界作った偉業は……そらねぇ……他の世界も、創造神は絶大な力を得てるはずだぜ? まぁ、大体世界と同化してたりそのもそも世界そのもので意思がないか、世界を調律する能力以外制限されてるとか、そういうもんだけど」

「難しいねぇ」

「超越者なんてそんなもんだろ」

 ケロッとした顔で言うもんだから、俺は眉を潜めた。

 俺の知ってる高藤優樹では……ないんだな。

 なんとなく、理解できたことが寂しい。


つづくー

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