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魔力チートな魔女になりました~創造魔法で気ままな異世界生活~  作者: アロハ座長
4章【掘り起こされた機械侍女と女神の依頼】

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15話【子どもたちへのお願い】


【虚無の荒野】からドワーフの廃坑に戻った私たちは、外に出ると、いつものように廃坑を見守っていたドワーフの自警団たちと挨拶を交わす。


「お疲れさん、中の調査は、順調に進んでるか?」

「ええ、少しずつ進んでいるわ」


 そう言って私は、マジックバッグから入口では見られない、大分廃坑の奥に進まないと手に入らないCランクの虫魔物の死骸を見せる。

 それを見て、ドワーフたちが感心したように見つめる。


「ほぉ、すごいなぁ。わしらでもその大きさの魔石を持つ魔物は退治できないのに」

「依頼でもないのに、いつもありがとうな。毎日、魔物を退治しているからか。最近は俺たちの仕事が少なくて助かる」

「その分、倒した魔物を運び出して解体の仕事を頼んでくれるからな!」

「ちげぇねぇ」


 ガハハハッ、と笑うドワーフの自警団の人たち。

 そう言って一頻り笑うドワーフの自警団たちは、私たちに生暖かいような目を向けてくる。

 きっと、廃坑の奥に僅かにでも残るミスリルやオリハルコンを求めているんだろう、と思われたんだろう。

 そんな生暖かい視線を受けながら、非番のドワーフの自警団たちにベレッタたちでは処理するのが大変な虫魔物の死骸の一部の解体を頼み、先日解体が終わった魔石を受け取り、テトと一緒に宿に戻る。

 宿に戻れば、宿屋の夫婦が作る夕食を待っていた。


 そして、料理に舌鼓を打つ私たちにドワーフの店主は、お酒の小さな樽を取り出す。


「毎日お疲れさん、どうだい。一杯飲むかい?」


 この町のお酒だろうか、小さなコップに注いだお酒を掲げてみせる。


「ごめんなさい。私は、お酒は飲まないわ」

「代わりにテトが飲めるのです! 一緒に飲むのです!」


 一応、お酒を飲める20歳を超えた私だが、体は12歳のままなのでアルコールには強くないのでお酒は飲まない。

 一応、【身体強化】の応用でアルコール分の解毒能力を高めれば、飲めないこともないが、それではお酒で酔えないので、わざわざ酔えないお酒を飲む意味がない。

 お酒を飲まない私の代わりにテトの方がお酒が好きで、たまに飲む。


「ほら、一杯!」

「頂くのです。こっく、こっく……ぷはぁ……おいしいのです!」


 テトは、喉を鳴らしながらお酒を一気に呷り、熱い息を吐き出しながら上機嫌になる。


「魔女様、魔女様の持っているお酒も出してほしいのです!」

「はいはい。それじゃあ、ブランデーでいいかしら?」


 お酒を飲まない私だが、ここ十数年と冒険者として働いて貯まるお金を適度に消費するために、お酒を買っているのだ。

 ちょっといいお値段のワインや若い蒸留酒を買ったり、【創造魔法】で作ってお酒を時間経過のマジックバッグや【虚無の荒野】の屋敷の地下室に置いて、熟成させているのだ。


 冒険者をやっていると贈り物としては、お酒が無難である。

 更に私は、不老のために100年後……いや、長命種族がいるから300年後か。

 そうしたお酒がいったい幾らの価値になるのか、どのような味になるのか分からないが、ちょっとした投資のようなものとしてお酒を集めたり、【創造魔法】で創り出している。

 その中から適当に量が多いブランデーをテトに渡すと、ドワーフの店主と一緒に飲み交わし始める。


「このお酒は、テトの目みたいな色して好きなのです~」

「おおっ、こいつはうめぇ! こんな酒があったのか!?」

「私たちは私たちでお話を楽しみましょう。ねぇ、アリム、チセさん」


 テトと店主がお酒を飲み交わす一方、私とアリムちゃん、そして女将さんと共にこの町の話などを聞いたりして夜を過ごす。

 そして、テトが酔い潰れた頃に宿の一室に戻り、お酒の匂いや一日の汚れを消すために清潔化の《クリーン》の魔法を使って私も寝るのだった。


 そして翌朝――


「魔女様! おはようなのです!」


 二日酔いの気配もなく元気に起き上がるテトに苦笑しながら、私も起きる。

 ドワーフの店主も久々に美味しいお酒を飲めて楽しかったのか、朝から上機嫌で朝食を用意している。

 そして、宿の朝食を取った後、いつものように廃坑には向かわず、宿屋のドワーフ夫婦の娘のアリムちゃんと一緒に友達たちに会いに行く。


「チセちゃん、テトお姉ちゃん。私たちにお願いってなに?」


 昨夜のうちに、アリムちゃんに家の手伝いがない子どもたちを紹介してもらえるようにお願いしたのだ。


「実はね。私たちは、生き物を探しているのよ」

「虫とかカエル、ヘビとかの生き物がいたら捕まえてほしいのです!」


 私とテトは、再生しつつある【虚無の荒野】の森林の生態系の一役になる生き物を子どもたちに集めてもらおうと思ったのだ。


「集めてくれた生き物を私たちが買い取りたいのよ」

「そこら辺にいるのに? チセちゃんたち変なの」


 そう言って笑うアリムちゃんたちだが、生き物を捕まえるのに道具がないと大変なので、昨晩の内に【創造魔法】で用意した虫籠と虫取り網を渡す。


「上手く集まったら、明日の朝に持ってきてね。ちょっと良い物と交換してあげるわ」

「わかった! みんな、畑や溜め池に探しに行こう!」

「怪我しないようにね!」


 私は、子どもたちを見送り、いよいよ廃坑探索に向かう。


「そういえば、虫を食べてくれるなら、コウモリも何匹か貰ってもいいわよね」

「何組かの番いで荒野に放せばきっと増えるのです! 捕まえるのは任せるのです!」


 私たちは、昨日の探索の続きをする前に何匹かコウモリを捕まえて、集めたコウモリを【転移門】で運び、ベレッタに預ける。


『この生物たちは、魔力に対する依存度も低いので、【虚無の荒野】でも問題無く活動できるでしょう。それに食虫生物のようなので、森に解放して様子をみようと思います』


 そうベレッタからの報告を受けて、少しずつできることを行いながら、昨日の探索に戻る。

 とは言っても、転移で昨日の場所まで進み、複数の魔法を併用しつつ浄化と虫魔物を退治して進んでいるだけで特に代わり映えはしない。

 奥に行くほど、廃坑の手入れがされておらず、崩落の危険がある場所や、崩落して道が途切れた場所はあるが、その都度、私とテトが土魔法で直して進む。


 今日も廃坑の中層探索が終わり、《アースソナー》の魔法で見つけた僅かに残された鉱脈や掘り返された土石からミスリルを見つけた。

 それを私とテトがかき集めて、魔法で抽出と精錬して小指の先ほどのミスリルを見つけることができたのは、小さな収穫だろう。


 その日も宿屋に帰り、アリムちゃんに今日探した生き物を見せてもらったり、私たちの今までの冒険譚を聞かせて楽しく過ごす。


 そして翌朝、生き物を捕まえるのをお願いした子どもたちは、色々な生き物を私の所に届けてくれ、初日から凄い成果だった。


「チセちゃん! テトお姉ちゃん、どう凄いでしょ!」


 自慢げに胸を張るアリムちゃんたちが集めた生き物は、本当に沢山いた。

 カエル、ヘビ、トカゲ、イモリ、ヤモリ、モグラ、ネズミ、タニシ、沢ガニ、ザリガニ、カメなど様々だ。

 食用に適する野ウサギや土鳩などの生き物は、それぞれの子どもの家庭で消費されるためにいないが、予想以上に廃坑の荒れた禿山の周りにも生き物が沢山隠れているようだ。


「この町から少し離れた林に居るんだよ! 他にも古井戸やため池、川にいたんだ!」

「ええ、予想以上だわ。全部貰っていいの?」

「うん。そのために取ってきたんだよ! だから――」


 そう言って、私が頼んだためにお礼を求めてくる子どもたち。


「ありがとう。それじゃあ、一匹銅貨1枚でいいかしら?」


 捕まえた生き物を1匹につき銅貨1枚を子どもたちに渡していく。

 捕まえ上手な子は、思わぬお小遣いに喜び、あまり上手く捕まえられなかった子も上手な子に羨ましそうに見つめながらも受け取った銅貨を大事そうに抱えている。

 ただ、アリムちゃんだけは少し不満そうだ。


「チセちゃん、チセちゃん。あの甘いやつは?」

「えっ? 飴の方がよかった?」

「うん! 甘いやつ!」


 アリムちゃんが言うので、子どもたちの興味は、銅貨よりも以前アリムちゃんにあげた飴の方に興味が向き、以前アリムちゃんに見せた飴玉が突然現れる手品――【創造魔法】なのだが――で、子どもたちを喜ばせ、飴玉をお礼に渡していく。


 そしたら、翌日からは、銅貨よりも飴玉の方を求められ、生き物一匹につき、飴玉1個というルールになった。


「そういえば、チセちゃんたち廃坑にその生き物を持っていってるけど、何に使っているの?」


 突然、生き物を集め出して、そして廃坑に連れていく私とテトを見て、そう疑問を抱くアリムちゃんたち子どもたちだが――


「…………廃坑の虫魔物を誘き寄せる餌にしているのよ」


【虚無の荒野】で繁殖させるために集めたとは言えないために、そう言うしかないのが心苦しかった。

 折角、捕まえた生き物を魔物を誘き寄せる餌にする。

 子どもたちから『可哀想』と非難の言葉を向けられないか不安になるが――


「まぁ、仕方がないよね。チセちゃん、冒険者だもんね。頑張って」

「まぁ、僕らも川で魚釣る時に虫とか餌にするし、蟹とかザリガニ美味しいよね」

「畑に出てくるモグラって、毛皮は小さいけど、手触りがいいから冬前に行商のおじさんに売るといいお金になるんだよね」


 若干、現代日本の生物愛護的な傲慢な考えが出ていたのかも知れない。

 子どもたちにとっては、身近な生き物は愛玩や興味の対象だけではなく、生活の糧の一部らしい。

 転生して28年目の新たな発見に、新鮮さを感じたりした。


 そんなこんなの廃坑の町での人々の逞しさに触れながら、廃坑探索は進む。


魔力チートな魔女になりました1巻は、GCノベルズ様より12月26日発売となります。

イラストレーターは、てつぶた様が担当し、とても可愛らしくも大人びたチセが表紙を飾っております。

書店購入特典には――


ゲーマーズ様より、SSペーパー

虎の穴様より、SSイラストカード

TSUTAYA様より、SSイラストカード

メロンブックス様より、SSイラストカード


――以上の書店で配布予定となっております。

また書籍のアンケートにお答え頂くと書き下ろしSSを読むことができます。

ぜひ、よろしくお願いします。

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GCノベルズより『魔力チートな魔女になりました』7巻9月30日発売。
イラストレーターは、てつぶた様です。
作画、春原シン様によるコミカライズが決定。

魔力チートな魔女になりました 魔力チートな魔女コミック

ファンタジア文庫より『オンリーセンス・オンライン』発売中。
イラストレーターは、mmu様、キャラ原案は、ゆきさん様です。
コミカライズ作画は、羽仁倉雲先生です。

オンリーセンス・オンライン オンリーセンス・オンライン

ファンタジア文庫より『モンスター・ファクトリー』シリーズ発売中。
イラストレーターは、夜ノみつき様です。

モンスター・ファクトリー
― 新着の感想 ―
[良い点] 話の展開が早いのにとても面白いので読んでても飽きないのでとても好きな作品です。 [一言] とても面白い作品なので一気に読んじゃいました。これからも投稿頑張ってください。ブックマークしました…
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