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魔力チートな魔女になりました~創造魔法で気ままな異世界生活~  作者: アロハ座長
4章【掘り起こされた機械侍女と女神の依頼】

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14話【廃坑の探索と虚無の荒野への一時帰宅】


 ドワーフの廃坑を探索して二日目――


 宿屋で目覚めて朝食を食べ終わる頃に、廃坑に入って密かに設置した【転移門】で【虚無の荒野】に一時帰還する。


『お帰りなさいませ、ご主人様』

「ただいま、ベレッタ。魔物を大量に倒したから魔石を抜き取ってくれる? 死骸は、燃やして灰にして森にでも撒いてもらえるかな」

『了解しました。奉仕人形一同、協力して魔石を取り出します』


 ベレッタは、恭しく頭を下げるので、【虚無の荒野】でもまだ植樹のされていない荒れ地まで移動して、そこに200匹を超える虫魔物の死骸を放出する。

 私やテトは慣れたし、ベレッタも冷静にその死体の山を見ているが、手伝いに来た奉仕人形の中には、何人か表情が引き攣っているように見える。


「ざっと214匹ね。まぁ全部FかEランクの魔物だけど、流石に虫魔物は繁殖力が凄いわね。それじゃあ、お願いね。帰りに一度寄るから」

『はい、お任せください』


 そう言って、【転移門】から廃坑に戻ろうとすると、奉仕人形たちが絶望のような表情を浮かべている。

 そして、私とテトは、あっと小さく呟き足を止めると、救いが現れたように目に光が戻り――


「廃坑には沢山の魔物が住み着いているから、明日以降もお願いね」


 そう言うと再び絶望の底に突き落とされたように目から光を失う奉仕人形たちに、ごめんなさい、と内心謝る。

 虫魔物の死骸から得られる有機質は欲しいが、明日以降は、ドワーフの町の住人にも解体を頼もうか、と思う。

 そうすれば、廃坑になって貧しい町に少しでも仕事が生まれ、奉仕人形たちの負担も減らせる。

 そんなことを考えながら、昨日探索を中断した場所まで転移して鉱山の奥地を目指す。


 それから一週間――廃坑の崩壊に繋がる可能性があるので、大規模な殲滅魔法は使えず、1体ずつ倒していくが、倒した魔物の数が1000体を超えた。


「数が多くて困ったわね」

「奥に進むほど、ちょっとずつ強くなるのです」


 顎に手を当てて、効率的な討伐方法を考える。


「魔女様、どうするのですか?」

「一気に生命力の強い虫を倒すには……殺虫剤でも撒く?」


 いや、そもそも魔物を殺す殺虫剤を廃坑全体に撒いたら、周辺の土壌や周囲の土地の益虫まで殺してしまう。

 また、それほど強力な薬品は、人体にも悪影響を与えてしまうので、その考えを振り払うように頭を振るう。


「うーん。困ったわね」

「魔女様、魔女様……地道に進めるのです」

「そうよね。数は確実に減っているし、倒しましょう」


 本来、爆発的に増える虫魔物だが、この廃坑には多種多様な虫魔物がおり、繁殖しても虫魔物同士で食い合い・共食いがあるのか、廃坑内部の魔物の数は一定だった。

 それを私とテトが退治しているので、着実に減っている。

 そうして、一ヶ月掛けて、廃坑の上層部にいる虫魔物を潰して回り、魔物が地上に上がってこないように要所要所で魔物避けと結界魔法を使っていく。


「さて、そろそろ中層ね」

「あんまり気持ちがいい場所じゃないのです」


 上層部の魔物の駆逐が完了して、《アースソナー》では残り5000体ほどだ。

 ここ一ヶ月で集まった虫魔物の魔石をポリポリと食べるテトは、私と一緒に中層部に足を踏み入れる。


「空気の性質が一気に変わった」

「空気と言うより、魔力が重いのです」


 もうこの段階になってくると空気の淀みだけではなく、廃坑の奥から沸き立つ澱んだ魔力――瘴気を感じることができる。


「とりあえず――《ピュリフィケーション》!」

「おおっ、魔力が元に戻ったのです」


 浄化の魔法は、とても便利だ。

 対魔力災害や邪悪な魔力生命体に対して有効な魔法である。

 それに――


「私が考える最悪の状態が、この廃坑の奥地で発生してなきゃいいわね」

「最悪の状態ってなんなのですか?」

「蠱毒の壺、って状態のことよ」


 テトは、小首を傾げるために、テトにも分かりやすいように説明する。

蠱毒こどく】もしくは【蠱毒の壺】とは、古くから存在する呪術の一つである。

 一つの小さな壺の中に大量の毒虫を閉じ込めて、互いに共食いさせ、最後に残った強力な毒を持つ毒虫を使役して、対象を呪い殺す魔法の一種だ。


「地脈から溢れる魔力を浴びて活性化した虫魔物が繁殖。そして、共食いからの進化や変異、大量の魔物が死んだことによる呪いの蓄積なんかしてたら……」


 最悪、国を一つ滅ぼす巨大魔物が誕生するか、それとも廃坑の奥から人の住めない土地にしてしまう瘴気が溢れる可能性がある。


「女神直々に神託で頼んできた依頼ね。テト、道はこっちで合ってるかしら?」

「魔女様、大丈夫なのです。ただ、魔物が多いし、魔女様の負担が多いのです!」


 廃坑の中層部は、光源の《ライト》に、澱んだ魔力の浄化の《ピュリフィケーション》、更に空気を確保するための結界の《バリア》と《エアコントロール》。更に、攻撃では《ウィンド・カッター》の連打など複数の魔法を発動させているので、私の魔力消費は激しい。


「この探索のペースだと、6時間が限界ね」


 私の魔力は、毎日【不思議な木の実】を食べ続けて、魔力量は伸び続けている。

 現在では、30万を少し超えたくらいだが、魔法的な技量は火力よりも制御方面を伸ばしている。

 そのために、こうして5種類以上の魔法を同時に使用できるようになった。

 それでも複数魔法を同時に継続的に使用し続ければ、それなりに魔力消費量は大きいが、あくまでそれなりだ。

 ただ――


「最近働き過ぎだし、お昼まで頑張ったら、一度帰るのです!」

「ええ、そうね。ついでに、ベレッタの様子を見に行きましょうか」


 既に中層から現れる虫魔物の強さは、Cランク相当の魔物がチラホラと現れ始めた。

 もちろん、私たちの敵ではないので、サクっと倒していき、澱んだ魔力が更に広がらないように浄化して、探索の最前線に結界魔導具を設置する。

 そして、廃坑の入口付近に作ったセーフティーポイントまで転移魔法で戻り、そこから【転移門】で【虚無の荒野】の屋敷に戻る。


『ご主人様、テト様、お帰りなさいませ』

「ベレッタ、ただいま」

「ただいまなのです!」


 私たちが帰ってくるとすぐにやってくるベレッタに常に待機していたのか、と思うが、どうやら外に作った家庭菜園で色々と作業していたようだ。

 食べ頃の野菜を収穫して保存したり、それで食べ物を作っていたようだ。


『ご主人様。昼食はもう終えましたでしょうか? 必要なら、今から準備いたします』

「そうね。それじゃあ、お願いするわ」

「ベレッタの料理、楽しみなのです!」


 そうして私とテトは、奉仕人形のベレッタの料理を待つ。

 食材などは、外の家庭菜園で作った野菜や町で購入した食材、討伐した魔物の解体した食用部位、【創造魔法】で作り置きした調味料などを入れた【貯蔵庫】――保冷・時間停止効果付き――があるので、そこから食材を取り出して用意してくれる。


『ご主人様。本日は様々な味を楽しんでいただけるようにプレートメニューでございます』


 そうして出されたのは、小さく山形に盛られたチキンライスとミートスパゲティー、唐揚げが2個とミニハンバーグ。それにサラダとスープ、デザートにはプリンだ。


「これは……お子様ランチね」

「美味しそうなのです! いただきます、なのです!」


 早速嬉しそうに食べ始めるテトに対して私は、若干表情を引き攣らせながらもスプーンを手に取る。

 まさか、異世界に転生して、アラフォー超えているのに、この年でお子様ランチを食べることになるのか、と思う。

 だが一品一品は、普通に食べられるものだし、実際に一口ずつ食べれば、普通に美味しい。


「ベレッタ、美味しいわね」

『お褒めに預かり光栄です。ご主人様は、小柄で小食なので、一度に様々な味を楽しんでいただこうと工夫をいたしました』

「美味しいのです! また食べたいのです!」


 テトがリクエストするが、私としては、この年でお子様ランチを食べるのは、なにか……そう、負けたような気がするのだ。


「わ、私としては、少量ずつ作るのはベレッタの負担になるし、この食事量だとテトは少し足りないんじゃないかな」

「むぅ、そう言われると、ちょっと足りない気がするのです」

『私どもに気を使っていただきありがとうございます。ですが、そうした意見があることを失念しておりました。今後はそのように作ります』


 よし、なんとか今後の定番としてお子様ランチは回避できた、と内心小さく拳を作る。

 だが、本当に美味しいし、ちょっとずつ食べるのは贅沢だ。


「けど、たまにはこういうのも悪くはないかな」


 大人の精神が拒否感を覚えるのに、地球に近い食事が出たからだろうか、ちょっとだけ郷愁の念にかられる。

 その後、ベレッタから食後のお茶を貰い、互いの近状の話をする。

 ベレッタは、現在この家しか活動範囲はないが、家の管理と家庭菜園、そして私が各地で集めた蔵書を読むだけでもそこそこ楽しめているようだ。

 それに最近では私が頼んでいる魔物の死骸の解体作業。


『ご主人様、この本は本当に素晴らしいですね』


 ベレッタが目を輝かせて読むのは、私が【創造魔法】で作り出した書籍だ。

 異世界言語に翻訳されたそれは、様々な料理のレシピ本だったり、家庭菜園や家庭で育てる草花の育て方だったり、家事仕事をする時の得技テクニックなどの本だ。


『春には、この野菜を育てたいと思います。また、この花も育てたいので、ご主人様。どうか種子を頂けないでしょうか』

「わかったわ。と、いうか、ベレッタが楽しそうにしていて嬉しいわ」


 私は苦笑を浮かべながら、差し出された本のページに写る花や野菜の種子を【創造魔法】で生み出す。

 他にもベレッタに預けた部下の奉仕人形たちは、相変わらず魔導具としての機能の枠組みを超えずにベレッタの指示で屋敷の管理をしている。

 ただ、一個体だけ、なんだか少し不器用な奉仕人形がおり、その個体が魂を持つことに少し期待しているとのことだ。


『ご主人様、色々とありがとうございます。それから一つご主人様にご相談を』

「なにかしら?」

『現在、徐々に再生しつつあるこの土地ですが、虫の生息数が増えています。そろそろ次の段階かと』


 虫が増えたことで、ついにその段階まで来たかと思い、これまでの再生の道筋を思い返し、嬉しさと共に小さく頷く。


「わかったわ。そっちの方は、私が考えるわ」

「魔女様? 虫が増えたら、いけないのですか?」


 テトが小首を傾げながら聞いてくるために、私は説明する。


「食物連鎖の下層ができて、虫の数が増えてきたからそろそろ虫を食べる生き物を【虚無の荒野】に連れてこようと思うのよ」


 腐葉土やテトの体内で熟成された土やそれに混じる微生物や小さな虫が増え、【虚無の荒野】各所では、昆虫の楽園になっている。

 植物の落ち葉や生き物の死骸を食べて分解するアリやミミズなどの――【分解者】。

 樹木の葉っぱを食べて成長する虫である草食性の昆虫などの――【消費者】。

 それらが成長しつつある中、次はそうした生き物を食べる肉食性の昆虫や虫や木の実を食べる雑食性の動物を放とうと考えている。


「なるほど。それで何かいいことがあるのですか?」

「将来的には、その肉食性の昆虫を食べに来た鳥が森に巣を作れば、卵を産むし、狩ればお肉になるわね」

『現在は、応急的に家畜として持ち込んだ鶏を増やして、一部を野に放とうと計画しておりますが、それでは自然の多様性が生まれません』

「それはとても重要なのです! 食べ物の種類はとても大事なのです!」


 基本、食べ物のことで理解するテトに苦笑を浮かべるが、私たちはそんな自然の食物連鎖の一部を分けてもらっているに過ぎない。


「とりあえず、昔リリエルに神託で植え付けられた知識があるから、荒野の再生に問題無い生物を探してみるわ」

『ご主人様、よろしくお願いします』


 そうして、私たちの廃坑の町の様子や泊まっている宿屋のドワーフ親子のことを話してから、夕暮れになる前に、【転移門】を潜って帰るのだった。

魔力チートな魔女になりました1巻は、GCノベルズ様より12月26日発売となります。

イラストレーターは、てつぶた様が担当し、とても可愛らしくも大人びたチセが表紙を飾っております。

書店購入特典には――


ゲーマーズ様より、SSペーパー

虎の穴様より、SSイラストカード

TSUTAYA様より、SSイラストカード

メロンブックス様より、SSイラストカード


――以上の書店で配布予定となっております。

また書籍のアンケートにお答え頂くと書き下ろしSSを読むことができます。

ぜひ、よろしくお願いします。

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GCノベルズより『魔力チートな魔女になりました』7巻9月30日発売。
イラストレーターは、てつぶた様です。
作画、春原シン様によるコミカライズが決定。

魔力チートな魔女になりました 魔力チートな魔女コミック

ファンタジア文庫より『オンリーセンス・オンライン』発売中。
イラストレーターは、mmu様、キャラ原案は、ゆきさん様です。
コミカライズ作画は、羽仁倉雲先生です。

オンリーセンス・オンライン オンリーセンス・オンライン

ファンタジア文庫より『モンスター・ファクトリー』シリーズ発売中。
イラストレーターは、夜ノみつき様です。

モンスター・ファクトリー
― 新着の感想 ―
[一言] 旗が立っていなければお子様ランチじゃない! ダイジョウブ!
[一言] お子様ランチだと思うからいけない 仕切りのついた重箱を用意して次からは洋風松花堂弁当だと言いはるんだ
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