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魔力チートな魔女になりました~創造魔法で気ままな異世界生活~  作者: アロハ座長
3章【荒野に住まう魔女と幼女】

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17話【イスチェア王国までの旅路】


「セレネリール様たちは、こちらの馬車をお使いください。ここからイスチェア王国の王都に向かいます」


 準備を整えて、全ての旅支度を整えた私たちは、イスチェア王国から派遣された捜索隊の人が用意した馬車に乗せられる。

 貴人の護衛としては質素な箱馬車だが、カモフラージュにはちょうどいいかもしれない。

 ただ馬車自体の防御能力を疑問に思い、そっと防御魔法を付与して進んでいく。


「お母さん……」

「乗り慣れていないからお尻が痛い? それともお手洗い?」

「揺れて、気持ち悪い……」

「背中さすってあげるから、窓から遠くの景色見ようか。それと少し早めに休憩をお願いしようね」


 セレネの背中を摩りながら、回復魔法と強化魔法の併用で酔いの原因である三半規管を強化する。


 そして旅の途中では――


「セレネ様、我々が料理を!」

「私だって、お母さんと一緒にやってきたから平気!」


 箱馬車の旅では、野営の料理をセレネに手伝ってもらい、それを止めようとする捜査隊の人たちだが、実際に手際の良さに渋々了承してくれる。

 実際、彼らの身分は、騎士で貴族の三男とか四男とかそんな感じなので料理はそれほど得意じゃない。


 それから食料などの補給で途中の町に寄った時は――


「お母さん、あっちにお菓子が売ってるって!」

「人気の豆菓子みたいなのです! 早く買いに行くのです!」

「じゃあ、買いましょうか。それとこの町の本屋も寄りたいから一度冒険者ギルドでお金下ろしてからにしましょう」


 観光気分で訪れた町を色々と見て回ると――


「セレネ様! そのようなところに行ってはいけません! 勝手に出歩かれては困ります!」


 そう言ってセレネの行動を制限しようとするので、私が魔法で軽く眠らせている間に勝手に出かける。

 彼らも道中の護衛に神経を使っているので休息は必要だ、と言い訳しつつ、勝手に出歩いたりする。


 また旅の途中では――


『この先の街道で落石が起きて通行止めだ!』

「この程度――《ブレイクストーン》!」


 石を粉々に粉砕し、運びやすい大きさに変えて道の脇に寄せて動かす。


『街道に盗賊が現れたぞ!』

「このくらいなら――《バインドアース》!」


 地面を操作して、土石で盗賊たちを拘束して、近くの町に捕らえたまま運ぶ。


『この子を、誰かこの子を助けてください!』

「それじゃあ銀貨3枚後払いでね。――《ヒール》!」


 暴走した馬に蹴られた子どもに回復魔法を使う。

 開放骨折に出血多量、内臓破裂、蹴られた後に地面に頭をぶつけたのか脳内出血と、ほぼ死ぬ一歩手前だったが、なんとか間に合って治療できた。


 そうした足止めされそうな問題も魔法の力でちょちょいと解決して進む。

 あと、最初の三日くらいでセレネが馬車の旅に飽きたので、こっそり馬車の中で楽しめるボードゲームを【創造魔法】で創ったり、馬車を引く馬に強化魔法と回復魔法を使ったり、牽く馬車の重量を軽減したり、飲み水にポーションを混ぜたりした。

 馬の移動速度が上がった結果、一週間で国境に辿り着き、更に一週間で王都までやってくることができた。


「あれ? 俺たちあの町に行くまでに一ヶ月掛かったのに、なんで帰りは半分なんだ?」


 セレネ捜査隊の面々は、狐にでも抓まれたような表情をしている。


「それで、これからどうするの? そのままセレネの父親に会えるの?」

「いえ、国王陛下には、ご報告と面会のための予定を決めなければなりません。なので、セレネ様は、母君エリーゼ様が生前所属していた教会施設をご利用していただくことになります」

「お母さんの……」


 そう言って、母親が遺した指輪を強く握るセレネ。

 そして、そのままその王都の女神リリエルたちを祭る大聖堂に向かっていく。

 そこで馬車から降りた私たちは、案内されるままに教会施設に入っていく。


「…………エリーゼ様?」

「はい?」


 セレネが小首を傾げるが、現れた年老いた聖職者は、頭を軽く振って挨拶をする。


「初めまして、私は五大神教の枢機卿のマリウスと申します」

「は、初めまして、セレネと言います!」

「ふふふっ、小さい頃のエリーゼ様にそっくりでした。一瞬、見間違いかと思いましたよ」


 そう言って親しみの籠った挨拶をくれる。

 続いて、私たちの方を見る。


「話は聞き及んでいます。セレネ様を育ててくださり、ありがとうございます。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


 私の外見や年齢などの特徴は既に聞き及んでいるのか、特に驚いた様子はない。


「魔女のチセ。Bランク冒険者よ」

「同じく、剣士のテトなのです!」


 だが、私たちの名前を聞いたマリウス枢機卿は、驚きで表情を崩した。


「チセ殿? まさか、古都アパネミスの孤児院改革の立役者?」

「お母さん、なにかやったの?」


 セレネが不思議そうに尋ねてくる。

 セレネと出会う前は、それほど語る過去もなかったので黙っていたが、特に隠すわけじゃない。


「セレネと会うちょっと前の話よ。知り合った孤児院の子どもたちが自分でお金を稼げるように手伝っただけよ」


 私がなんでも無いように言うが、マリウス枢機卿は、いやいやと大仰に首を振る。


「それだけではありません。チセ様が私財を投じて教えてくださったポーション調合技術と製紙技術の教本は、現在孤児の教育に使われ、紙を使った内職が様々な社会弱者の救済に充てられています! あなたは、多くの人に希望を与えてくださった聖女なのです!」


 聞けば、私の手から離れた後は、ちゃんと維持されているらしい。

 そして、ダンジョン都市の孤児院が各地に同様のシステムを導入するために派遣され、国中の孤児院に広がり、ポーションが増産されたことで王国内の健康事情は向上。更に増産された紙を使った紙袋や封筒作りなどが、夫を失った未亡人や子どもの内職になり始めているのだ。


「そうなんだ。お母さん、凄い……!」


 実の母が様々な地に赴き、人々を治療する救済をして聖女となり、育ての母がそうした社会的な面で人々を救済して聖女扱いされる。

 なんともセレネのイスチェア王国内の教会の立場は、かなりいいかもしれない。


 そして、ここまで護衛してくれたセレネ捜査隊の人々は知らなかったのか、驚いている。

 現在では、廃材から作られる紙は、教会の重要な財源であり国から他国に輸出している交易品でもあるらしい。


「お三方は、この大聖堂の重要なお客様です。どうぞ、我が家だと思って過ごしてください」


 そうして、何人かのシスターを付けられ、大聖堂の奥の客室に案内し、そこで泊まることになる。

 夜は、教会らしく質素だがバランスの取れた食事を食べて、清潔化の魔法で身を清められてから寝間着に着替える。


「お風呂入りたい……」

「そうね。私もお風呂に入りたいから、明日は大浴場でも探しましょうか」

「うん!」


 小さい頃からお風呂に浸かる習慣に慣れたセレネは、そう希望を口にする。

 流石に、ここまで連れてきた捜査隊の人たちの前で服を脱いで、即席風呂に入るには躊躇われるので、毎日クリーンの魔法で済ませていた。

 そうして、夜寝るまでの間ゆっくりしていると、セレネが今度は別の希望を口にする。


「お母さん、テトお姉ちゃん……」

「なに、セレネ?」

「私ね。お母さんがどんなことやっていたのか、知りたいんだ」


 セレネの言うお母さんとは、産みの親である聖女エリーゼさんのことだろう。


「だからね、教会で働いてみたいと思うの」

「そうね。明日、マリウス枢機卿にお願いしましょう」

「うん、ありがとう、お母さん……」


 そう言って、すっと静かな寝息を立て始める。

 私は、そんなセレネを起こさないように部屋の明かりを消して、眠りに就いた。

読んでいただきありがとうございます。

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