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魔力チートな魔女になりました~創造魔法で気ままな異世界生活~  作者: アロハ座長
2章【教会の聖女な魔女】

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17話【孤児誘拐】


 Bランク昇格試験の日程が決まるまでの間、ダンジョンに日帰りで挑み、地図の作成を中心に過ごしていた。

 また週に2回は、孤児院に顔を出して子どもたちの仕事ぶりを見たり、それよりも低い年齢の子どもたちを相手にお菓子の材料を持ち込み、一緒にクッキーなどを作ったりして過ごした。


 それから2週間ほど経ち、23階層まで辿り着く頃――


「チセさん、テトさん。Bランクの昇格試験の日取りが決まりました」

「本当?」

「はい。二週間後にアルサスさんのパーティー【暁の剣】と合同でダンジョンの21階層以上の泊まり込みの探索になります。期間は、三日です」

「分かったわ。ダンジョンの泊まり込みで計画性を見るのね」


 その日からBランク昇格試験のためにダンジョンに挑む頻度を減らし、ダンジョン宿泊の準備をして過ごす。

 まぁ、準備は【創造魔法】で用意したり、町で購入してマジックバッグに収納すればすぐに終わるので余った時間は、ほとんど孤児院に費やしていた。

 そして、Bランク昇格試験の当日にギルドに行けば、試験官を務めてくれるアルサスさんのパーティーが待っていた。


「アルサスさん。今日から三日間、Bランクの昇格試験お願いします」

「お願いするのです!」

「おう、それじゃあ早速話し合いをするか」


 そうしてアルサスさんたちのパーティーから昇格試験の内容を聞かされる。

 ダンジョンで三日間泊まり込みで探索して、その様子を見るとのことだ。


 ダンジョンの、特に洞窟型のような閉鎖空間では精神に異常を起こしやすい。

 なので、疲労などを管理できるのか、ちゃんと休憩を取れるのか、ダンジョン内での探索の様子など、個人の技量以外の総合的な能力と想定できる問題の事前対処能力などを実地試験するようだ。


 二つのパーティーが互いに想定しうる問題などを話し合う中、ギルドの入口から見覚えのある子どもが慌ててギルドに駆け込んでくる。


「姉ちゃん、チセ姉ちゃん! 助けて!」

「あなたは……孤児院の? どうしたの、何があったの?」

「兄ちゃんが、ダン兄ちゃんが攫われた!」


 私は、努めて冷静に少年からの話を聞き出す。

 日用品の買い物に出たポーション調合組の何人かが大人たちに、裏路地に連れ込まれて攫われたらしい。

 ダン少年を含む数人が抵抗して、その隙をついて年下の少年が逃げ出し、ギルドに助けを求めてきたようだ。

 ギルドと領主側で子どもたちを守ってもらえるように相談していたが、それでは不十分だったようだ。


「わかったわ。任せなさい」

「嬢ちゃん、行くのか? Bランクの昇格試験は、どうするんだ?」


 こちらを試すように聞いてくるアルサスさん。

 Bランクの昇格試験は、AランクやBランクの冒険者が試験に加わるために頻繁には行えない。

 今回を逃すと次は、二ヶ月後か三ヶ月後に延期される可能性がある。


 それに対して私は、鼻で笑う。


「そんなものは、どうでもいいわよ。子どもたちの速やかな安全確保が大事よ」


 たとえ、昇格試験が遅れたり、これでBランクへの昇格が断たれても構わない。

 そう思って、アルサスさんを見つめ返すと、ふっと面白そうに笑う。


「おい、ラフィリア! お前の魔法で子どもたちを探せねぇか!」

「全く、人使いが荒いんだから――【精霊よ、子どもたちの軌跡を辿り、我らを導け】!」


 エルフのラフィリアさんが風精霊に願い、子どもたちの攫われた先を辿ってくれるらしい。


「風の流れがある場所なら、探してあげるわ。この町くらいならすぐに見つかるはずよ」

「ありがとう。でも、いいの?」


 Bランクの昇格試験すら蹴ろうとした私に対して、アルサスさんは、ニッと力強い笑みを浮かべる。


「うちの聖職者は、教会の孤児院の出身だからな。他人事じゃねぇんだよ」


 そう言って、親指で指差す先のアルサスさんのパーティーメンバーの聖職者風の男性は、感情を抑えるように無表情になっている。


「それに、将来性のあるチセとテトの嬢ちゃんたちに貸しを作ることにするわ」

「そう、なら、早くに返せるように頑張るわ」


 そう短く互いに納得する私たちは、すぐにラフィリアさんの精霊魔法で子どもたちが攫われた場所を見つけたようだ。

 ギルドに駆け込んだ孤児院の子どもは、ギルドの職員に見てもらい、他にも何組かの冒険者には他の子どもたちが更に誘拐されないように派遣を頼む。


「これ、冒険者とか動かす時に必要な経費だったら、好きに使って良いから」

「ちょ、チセさん! ギルドカードを置いていくんですか! って好きに引き出すって、どんだけ貯め込んでいるんですか!」


 緊急時のために依頼料は私のギルドカードから出すようにギルド職員に言い渡した私たちは、子どもたちを助けるためにギルドを出る。

 アルサスさんたちやテトが走る速度に子どもの私の歩幅だと、身体強化しても少し辛いために、町中で飛翔魔法を使って付いていく。


「それで、子どもたちが居る場所ってどこなの?」

「多分、あっちよ!」


 エルフのラフィリアを先頭に追い掛けていく先では、この町外れの倉庫街だ。


「ここに子どもたちが……っ!? この距離ならダン少年の魔力が分かる!」


 倉庫街に近づけば、私の魔力感知で見知った相手の居場所を見つけることができる。

 辺りを見回すように探れば、一際大きな倉庫があり、その地下からダン少年を含む子どもたちの魔力を感じた。


「そこね!」

「魔女様、先に進むと危ないのです!」

「おい、嬢ちゃん!」


 飛翔魔法を維持したまま、低空で倉庫に飛び込む。


「なんだ、てめぇは!」

「邪魔よ! ――《スタン》!」

『『『うぎゃぁぁっ!』』』


 倉庫の中に降り立つと柄の悪そうな連中が武器を構えてきたので私は、広範囲に対人無力化のために威力を落とした雷魔法を使えば、男たちは悲鳴を上げながら地面に倒れる。


「子どもたちはどこ? 吐きなさい!」


 私は、【身体強化】で強めた腕力で倒れた男の胸倉を掴み上げる。


「……し、しりゃねぇな」


 体の自由は奪い、呂律は回らないが、それでも答えることはしない。


「お、おりぇたちに、てぇだしぃて、タダですむとおもうなよ……」


 陳腐な脅し文句を口にする相手に対して、今度は、魔力を放出する威圧を行なう。


「もう一度言うわ、子どもたちは、どこ!」


 魔力量1万超えの人間が発する魔力放出の威圧に男たちは、ガタガタと震え出す。


「い、いう、いうから、いのちだけは、たすけて。おれたちゃ、雇われただけだ」


 私の威圧を受けて命乞いをする荒くれ者たちから話を聞き出そうとする頃、テトやアルサスさんたちが追い付いてきた。


「嬢ちゃん、先行するな! って……もう制圧してるな」

「おい、こいつらガスの連中だぞ!」

「【暁の剣】も来たのか……もう、お終いだ」


 追い付いてきたアルサスさんたちを見て、威圧で心が折れた荒くれ者たちも更に降伏する。

 流石、Aランクパーティーのネームブランドだろうか。


「……それで、子どもたちはどこ?」

「子どもたちは地下にいる。だけど、魔導具の扉を開ける鍵がないんだ。旦那が全部管理してる! 俺たちは、飢えさせねぇように小窓から食べ物と水を与えてるだけだ」


 アルサスさんたちがロープで男たちを捕縛し、子どもたちの居場所を聞けば、その言葉が返ってくる。

 そして、これだけの至近距離から風魔法の《ウィスパー》で子どもたちの声が耳に届く。


 子どもの不安と恐怖に押し殺したような啜り泣く声、励まし合う声などが耳に届く。

 あの明るく、優しい子どもたちを、そんな状況に追いやったこいつらに強い怒りを感じる。


「あっ、魔女様、結構怒っているのです」

「ええ、今すぐに消し炭にしてやりたいほど、ムカついているわ」


 私の体から再び放出される魔力に、拘束された男たちが怯えるが、そんな姿を見ればすぐに興味も失う。


「地下に居て、入口が開いてないなら別の入口を作るだけよ。――《ウィスパー》」


 風が通り、地下の子どもたちの声が聞こえるなら、こちらの声も届けることができる。


「ああ、マイクテス、マイクテス。ダン少年聞こえる?」

『チセ姉ぇ!? どこ? どこにいるんだ?』

「あなたたちがいる地下室の真上よ。すぐに助けてあげるから部屋の隅のほうに移動してくれる?」

『わ、わかった!』


 地下に魔力の波動を送り込む魔法アースソナーで地下室の構造と人の動きは把握した。

 子どもたちも部屋の隅に固まっているので、これなら大丈夫そうだ。


「それじゃあ、テト。いくわよ」

「はいなのです!」

「おい、嬢ちゃんたち、何を――《《ホール》》!」


 私とテトは、同時に倉庫の床に手を押し付けて地面の構造を変える。

 ボゴンという異音が起こり、子どもたちの居る部屋に直接降りられるような大穴を私とテトで創り出す。


「それじゃあ、行ってくるわ。その男たちのことよろしくね!」

「一緒に行くのです!」

「ちょ、マジか!?」


 私は、アルサスさんたちに荒くれ者たちを任せて、テトと手を繋いで創ったばかりの大穴から飛び降りる。

 飛翔魔法による落下でゆっくりと降りた先には薄暗い、労働設備の整った独房のようだ。


「ダン少年、助けに来たわ」

「迎えに来たのです! みんな心配する前に帰るのです!」

「チセ姉ぇ、テト姉ぇ……」


 薄暗い部屋の中で突然天井が空き、空から光が差す中で、子どもたちは私の指示で部屋の隅に身を寄せていた。

 そして、その大穴から降り立った人物が私だと気付き、子どもたちの緊張が解れたのか、私たちに駆け寄ってくる。


 今まで恐怖を抑えるように啜り泣いていた子どもたちは、絶対庇護者の私とテトが現れたことで安心から泣き始める。

 攫われた子どもは、調合と製紙ができる子どもが五人と更に年下の子が三人だった。

 私とテトは安心させるように一人ずつ抱き締めて宥める。

 荒くれ者たちに攫われた際の抵抗で怪我した子には、一人ずつ回復魔法で傷を治していく。


 そして、しばらくして落ち着いたところで私が脱出を提案する。


「それじゃあ、孤児院に帰りましょう」

「チセ姉ぇ、待って。俺たちの他にも捕まってる人が居るみたいなんだ。助けてあげて」


 ダン少年にそう言われた私は、少し悩む。

 既に子どもが攫われて、冒険者のアルサスさんたちも上を制圧している。

 その内、兵士や他の冒険者たちも応援に集まり、誘拐事件の収拾をするだろう。

 そうなれば、自然と助けられるだろう。

 だが――


「分かったわ。けど、絶対に私から離れちゃ駄目よ」


 そう言って、私は部屋の構造を確認する。

 魔導具の扉は内側から開けられず、地下室の壁は分厚いが、それでも壊せないことはない。


「――《ホール》!」


 私は、次々と地下室の扉を無視して壁に穴を開けていく。

 そして、それぞれの独房には色んな人が攫われていたらしく、子どもから成人した人まで幅広く捕まっており、彼らを解放していく。


「それじゃあ、上に上がるわ」


 総勢20人の捕まった人を引き連れて、地上に上がれば、倉庫の中には、衛兵や冒険者ギルドのギルドマスター、その他色々な人が集まっており、今回の誘拐事件の後処理を任せて、子どもたちを孤児院に連れ帰った。



読んでいただきありがとうございます。

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