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魔力チートな魔女になりました~創造魔法で気ままな異世界生活~  作者: アロハ座長
2章【教会の聖女な魔女】

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10話【教会の浄化魔法】


「ここが教会ね」


 簡素な外見だが、厚めに壁が作られ、庭先もあるために、緊急時の避難場所や仮の診療施設を想定した作りなのかもしれない。

 私は、開け放たれた教会の中に入っていくと、私を転生させた女神・リリエルに似た女性像が置かれている。 

 女神・リリエルは、五大神と呼ばれる女神たちの一柱らしく、地母神や豊穣神の性質を持っているらしい。

 私を転生させた女神と名前と細かな特徴が合致しており、過去に度々地上に降臨して力を行使したり、依代となる人間によって降臨されたなどの逸話がある。

 そんな神像を見上げてると、 奥から一人の初老の神父様が出迎えてくれた。


 アルサスさんのパーティーに居た神父風の冒険者よりも教会の父というような穏やかな表情を浮かべている。


「おや、お客さんですか? ようこそ、いらっしゃいました」

「初めまして、私は冒険者をやっているチセと言います。こっちは、同じパーティーを組んでいるテトと言います」

「よろしくなのです!」


 厳かな雰囲気の教会にテトの明るい声が響き、神父様は目を細めて温かな視線を向けてくれる。


「チセさんにテトさんですね。本日は、どのようなご用件でしょうか?」

「実はダンジョンを探索した際に、呪われた装備を見つけまして。その相談を」

「なるほど。それでは、あちらの部屋で聞きましょう」


 神父様に案内された客間でギルドで聞かれたのと同じ説明をして、実際にマジックバッグから石箱に封印した呪われた装備を取り出す。


「こちらの中に入っています」

「なるほど……呪いの装備としては比較的ありふれたもののようですね。それでどういたしますか? こうした呪いの品は持っていると災いを呼び込む場合があります。教会が処分を引き受けてもおりますが」

「できれば、教会のお力で浄化していただけたらと思います」


 私は、浄化の代金である小金貨3枚を取り出してテーブルに置くと、神父様も頷く。


「分かりました。それでは、行いましょう」


 その場で石箱の蓋を開けて、テーブルの上に儀式に利用する道具を並べていく。


「――《主よ、我が魔力を以って、この世の穢れを浄化したまえ ピュリフィケーション》」


 私には、神を敬う気持ちはあんまりないが、目に魔力を通すことで目の前の浄化の魔法の理はなんとなく理解できた。

 呪われた装備から発せられる黒い魔力。これを仮に悪い魔力として、それを自身の魔力で干渉して解きほぐし、無害な魔力に変えるのだ。

 黒い魔力が解けていく度に、空気中に様々な色の魔力が溶けて消えていく。


(イメージは掴めた。汚れを分解する《クリーン》とは別に、対象の魔力を分解するのが浄化の魔法ね)


 そうこうしているうちに神父様は、浄化を終えた装飾品を確認して、ゆっくりと頷く。


「ちゃんと浄化ができました。こちらはお返しします」

「ありがとうございます。この場で確認してもいいですか?」

「ええ、もちろん。どうぞ」


 私は、鑑定のモノクルを取り出して確かめる。


【危機察知のネックレス】

 このネックレスの宝石が赤く光ると所有者の身に危機が迫っていることを告げる魔導具。


「ありがとうございます。ちゃんと呪いは、解けていました」

「そうですか。後学のために、それはどのような魔導具になったのですか?」

「【危機察知のネックレス】と言います。危険が迫ると宝石が赤く光るらしいのです」


 とは言え、私にはデザインが少し派手すぎるように感じる。

 私は、用件が終わったので優しくアクセサリーを布で包み、マジックバッグに仕舞い、神父様に教会の入口まで案内される。

 その途中で、教会の入口で一人の男の子が立っていた。


「神父様、冒険者の人が来てるって本当か!」

「これこれ、ダン。何をやっているのですか」


 神父様は、優しく諭すように話しかけると、男の子は顔を上げてハッキリと神父様を見つめ返している。


「神父様、ここに来た冒険者ってのは、そこの人たち?」

「ええ、そうですよ。少し用があって来ましたが、今帰りますよ」

「なら、そこの姉ちゃん! 俺も一緒にダンジョンに連れていってくれよ! そっちのちっこい子と同じように」


 テトは、外見的に姉ちゃんで合っているが、何故か私がテトに連れられているように見られた。

 確かに、テトよりも小さいために、テトがリーダーのようにも見えるし、今までだって私がテトに寄生しているようにも思われることが度々ある。


 これでも私はCランク冒険者なのだ。

 やはり幻影魔法を覚えてテトと同年代に見えるようにするか、と内心誓う一方、神父様は優しく少年を止める。


「冒険者の人たちを困らせてはいけませんよ。それに冒険者になるのは危ないこと。ましてダンジョンに行くなど、子どもは許されませんよ」

「なんだよ! ダンジョンに行かなきゃ金稼げねぇだろ!」

「それでも私は、あなたたちの父として危険なことを許すわけにはいきませんよ」


 そう言って毅然とした態度の神父様に諭された男の子は、悔しそうな、悲しそうな顔で教会の裏手に走っていく。


「すみません。ご迷惑をお掛けして」

「いえ。それよりもあの子は?」


 神父自らが父と言うが、優しそうな初老の神父様と子どもたちとでは大分年齢が離れているし、何より神父様と男の子とでは顔立ちがあまり似ていない。

 まぁ、老いてから作った子や母親に似ている場合もあるが……


「教会の裏手にある孤児院の子たちです」

「なるほど。子どもがお金のことを気にしていましたけど、やはり厳しいのですか」

「領主様からの助成金や信者の方々からの寄付などで成り立っておりますが、恥ずかしながら、それでも子どもたちの将来を考えると不安でして……」

「そう、ですか」


 神父様が奮戦している様子はわかる。

 それでも子どもが自らお金を稼ごうと言い出すのだから、孤児院の経営は大変なのかも知れない。


「テト、やらない善よりやる偽善だよね」

「魔女様がやりたいようにやるのです。魔女様は間違っていないです」

「ありがとう、テト……神父様」


 私が声を掛けると、若干孤児院の件で弱気になっていた神父様が顔を上げ、元の穏やかな表情を作る。


「手持ちは少ないですけど、このお金と食料を孤児院で使ってください」

「いいんですか?」


 私は、本日の収入の残り小金貨1枚とマジックバッグの中に死蔵気味な食材を放出する。

 孤児が何人居るか分からないし、足りるかも分からない。

 それでも、私の気持ち的にやりたいと思った。


「ありがとうございます。あなた方二人に女神・リリエルのご加護を」

「それでは、これで失礼します」

「また何かあったら来るのです!」


 神父様に見送られて、教会を後にしアパートに戻ってくる。

 ここ数日の稼ぎをほとんど教会に使ってしまったが、また稼ぎ直せばいいか、という気分で馴染みの食堂で夕食を取り、テトと一緒に同じベッドで眠りに就く。



読んでいただきありがとうございます。

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