29話【新たな旅立ちの目的は手探りで】
冬が終わり、春になれば私の歳がまた一つ増えて81歳になった。
「みんな、行ってくるわね」
「お土産楽しみにするのです!」
16歳の姿に変化した私は、テトと一緒にリーベル辺境伯領と交易するグリフォンやペガサスたちの背に乗せてもらい、ダリルの町までやってきた。
見送りに来てくれたベレッタたちに声を掛ければ、皆、恭しく頭を下げてくる。
『ご主人様、いってらっしゃいませ。その間、この土地の管理はお任せ下さい』
「そんなに仰々しい見送りは必要ないのに。こっちは、もっと気軽に帰ってくるつもりよ。それと、何かあったら連絡ちょうだいね」
マジックバッグに収納してある【転移門】で、簡単に【創造の魔女の森】に戻って来られるので、あまり重く考えてもいないのだ。
「それじゃあ、テト行きましょうか」
「はいなのです!」
今回の旅の目的は、まずは【暁の剣】のアルサスさん、次にイスチェア王国の王都にあるセレネの父であるアルバード先王、最後にガルド獣人国のギュントン公と、三人のお墓を順番にお参りする予定だ。
アルバード先王やギュントン公は、王族や貴族の墓に収まっているために直接の墓参りはできないだろうが、王族やその土地を治める貴族を讃える石碑などがあるために、それに軽く祈りを捧げることでお墓参りするつもりだ。
「魔女様、お墓には【転移魔法】で向かうのですか?」
「そうね。三箇所とも行ったことあるから、そこまでは転移で行って、その先はどうしようかしら」
折角、ギルド公認のCランクの偽装カードを手に入れて、16歳に変化して旅に出たのだ。
わざわざ、私たちのパーティーの代名詞にもなった【空飛ぶ絨毯】に乗って目立つこともない。
だからと言って、変化の魔法を丸一日維持するのは難しいために、他者と行動を共にする乗合い馬車や護衛依頼などで移動するのも難しい。
「魔女様、魔女様。急ぐ旅じゃないのです! 歩いたり、杖で飛んだりすればいいのです!」
「そうね。まぁ、その時が来たら考えましょうか。まずは、ダンジョン都市・アパネミスへ。――《テレポート》!」
私とテトは、ダンジョン都市に向けて転移魔法を発動させる。
その後、テトと共に知人たちのお墓参りをしながら、廃墟で見つけた旅行記を開いて二人で行きたい場所などを話し合う。
そして、最後のギュントン公のお墓参りを終えた私は、南を見つめる。
「よし、次は南に行きましょう。昔の転生者の逸話とか探しながら、ぐるっと行ったことのない西の方を巡りましょう」
「美味しい物、沢山見つかると嬉しいのです!」
私とテトは、ガルド獣人国を南に抜けて、昔の転生者・日野隆也さんが興した国――サンフィールド皇国を目指して、テトと進んでいくのだった。
これにて魔力チートな魔女の7章は終わりとなりました。
毎日投稿にお付き合い頂き、ありがとうございます。
魔力チートな魔女のWEb版に関しまして、今後の予定は未定となります。
理由の一つは、作者の執筆速度の低下があり、中々書籍と平行してWeb版の執筆ができない点にあります。
もう一つの理由としましては、書籍版の今後の展開が一部Web版と乖離した内容になる予定です。
そのため、Web版に反映させる手間や再度Webから書籍での修正に多大な労力が掛かると思われるために、今後の更新は未定となります。
そのため長編プロットの執筆はなく、今後ファンサービス的な短編の不定期更新に変わる予定です。
どうか、ご理解のほどをよろしくお願いします。
8月30日にGCノベルズ様より『魔力チートな魔女になりました』5巻が発売されました。
また現在、ガンガンONLINEにて『魔力チートな魔女になりました』のコミカライズが掲載されて、下記のURLから読むことができます。
https://www.ganganonline.com/title/1069
作画の春原シン様の可愛らしいチセとテトのやり取りをお楽しみ下さい。
それでは、引き続きよろしくお願いします。









