1話【異世界に転生した日、創造魔法を手に入れました】
死んだ。
病死か、事故死か、過労死か、老衰か。
どんな死に方をしたか記憶も無い。
前世が男なのか、女なのか、その記憶も無い。
『あなたを私の世界に招待したいと思います』
「……あなたは、だれ? なぜ、私を呼ぶの?」
記憶があやふやなまま、美しい女性に目を向ける。
『私は異世界の神・リリエル。あなたは、ただ生きてくれればいい。それが私の世界の利益に繋がるのです』
なんとも不気味な提案だ。
だが、死んだ私がもう一度、人生を得られるのだ、拒否する理由はなかった。
「そう、それで私はすぐに転生を?」
『いえ、なるべく長く転生者には生きて貰うためにスキルを選んでもらいます』
空間に現れたタブレットを手に取り、スキルなるものを選ぶ。
ふむふむ、【聖剣所持】とか、【剣術】スキルとかか。転生者に与えられたポイントの範囲内なら自由に取れるようだ。
そして私が、全スキルポイントを使い選んだのは――【創造魔法】だ。
相応の魔力を消費して、物を生み出す【創造魔法】スキル。
『それでは、私たちの世界を存分に楽しんでください』
「ええ。とりあえず、生き残ることを優先にするわ」
スキルを選んだ私は、リリエルと名乗る異世界の女神に見送られて、適当な平原の真ん中に放り出される。
…………
……
…
「……この体は、女の子か。ってことは私の前世は女だったのかな」
生前の記憶は朧気だが、多分そうなのだろう。
服装は、普通の麻のシャツとズボン、腰にはポーチがあり、それは中に当面の必要なものが入ったマジックバッグになっているようだ。
辺りを見回しても魔物らしき生物は存在しない。
「さて【創造魔法】は、どんなものかな? ――《クリエイション》!」
レベルとステータスがある世界らしく転生したばかりの私の魔力量は、50だ。
転生時に女神・リリエルに与えられた知識としては、一般人としては標準的であり、魔法使いとしては圧倒的に少ない。
そんな魔力量で作れるものを確かめるために、ある物を生み出した。
「――【炎弾の杖】、完成っと」
感覚的に魔力量の8割、40ほど使って生み出したアイテムは、火魔法を発動させる消費型アイテムだ。
消費魔力量40で作った【炎弾の杖】を持ち、周囲を歩き始める。
そして、地面をぽよぽよと動いているスライムを見つけた。
「――《ファイアー・ボール》!」
少し恥ずかしいが、杖を掲げて、呪文を唱えないとこの杖から魔法は放たれないようだ。
そして、炎の玉がスライムに当たると地面に焦げ跡を残してスライムが蒸発する。
その後、同じようにスライムを見つけて、魔法を放っていき、大体3発撃ったところで、杖から魔法が打ち止めになった。
「【ファイアー・ボール】の魔法は、魔力量10前後って感じかな?」
杖自体を生み出すのに魔力量10、ストックされているファイアー・ボール3発分で魔力量30の、合計魔力量40ということだろうか。
そして、使い捨ての道具らしく、使い終わったら普通の杖か薪の材料になる。
【創造魔法】は、燃費がいいとは思っていない。
だが、当面の攻撃手段を作り出せるのはありがたい。
そして、スライムを倒して経験値を集めていくと、レベルが上がったようだ。
体感的に魔力量の上限が増えたのを感じた。
ただ、レベルアップの瞬間にステータス全回復とかはなさそうだ。
「【炎弾の杖】を創造する時に使う魔力が半分くらいになったかな?」
使い捨ての【炎弾の杖】の創造に必要な魔力量40、魔力上限の8割ぐらいだったのが4割ぐらいに感じるので、現在の魔力残量は60くらいだろうか。
とりあえず、そうやって魔物を倒して進んでいくが、人里の気配はない。
そうして三日、周囲を歩き回り、町を探すがなく、スライム以外の魔物も倒して、レベルも5まで上がった。
途中、スライムは【炎弾の杖】のファイアー・ボールで倒すより、使い終わった杖で叩いて倒す方が効率がいいことに気付いた。
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