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12話【取り込む素材と増える設置物】


 泉系の設置物に【炭酸泉】が追加されているのを見た私だが、それはあくまで解禁されただけで、今すぐ設置することはできない。


「炭酸水が10万リットルと300万魔力かぁ……」


 炭酸が無限に湧き出る泉を作るには、そもそもの素材である炭酸水が大量に必要なようだ。


「魔女様、下の方に何か光っているのです」


 灰褐色に暗転し、作成が不可能である、と現わしている炭酸泉の表示の下に明滅する項目があった。


「――【素材変換】ねぇ。魔力を素材に、素材を魔力に変換するみたいね」


 例えば、1リットルの炭酸水を作るには、ダンジョンコアに蓄えられている30魔力を消費して、素材を創造する必要があるようだ。

 そして、ストックされた素材と魔力により創り出すことができるようだ。


「炭酸1リットルで30魔力かぁ。――《クリエイション》炭酸水。……大体、創造のコストは一緒かぁ」


 炭酸飲料の砂糖とかと容器のペットボトル、飲料ができるまでの過程のコストを抜きにすれば、【創造魔法】での炭酸水の創造コストは同じだ。


「素材の用意に300万。設置にも300万ねぇ」

「魔女様の魔力量なら、創れるのです!」


【創造魔法】で産み出した炭酸水がダンジョンに取り込まれるのを見ながら、私が呟き、テトがそう言ってくれる。

 ダンジョンコアの魔力保有上限は、3000万とかなりの魔力を蓄えられる。

 確かに、魔力量的に言えば、私の魔力を使えば創り出せるが、まだまだ検証しなければならないことが多い。


「逆に、素材も魔力に変換することもできるのね」


 私の【創造魔法】にはないダンジョンとしての機能だろう。

 魔力という資源を様々な物に変換し、逆に取り込んだ物を分解して利用したり、魔力資源にする。

 ダンジョンに不要な物を廃棄しすぎた結果、ダンジョンの怒りを買いスタンピードで滅んだなどの逸話が昔からあるくらいだ。

 捨てた物を魔力に変換した結果、魔力を周囲に拡散するために魔物を大量に生み出すと言うのは、あながち間違いではないのだろう。

 そして、素材を魔力に変換する際の効率は創造よりも悪いらしく、更に設置物を消滅させる時にも多くの魔力を消費する。


「――創造と破壊ね。しかも壊したり消滅させる方がコストが掛かるってことは、安易に作って壊すを繰り返せない。確かに、世界管理のバランス感覚と慎重さを養うにはちょうど良いかもしれないわね」


 それにダンジョンの機能では作れない物も、リリエルたち神々自身の力で創造した道具をダンジョンに取り込ませることで、それを設置したのかもしれない。


「魔女様、次は何をするのですか?」

「もう少し検証が必要ね――《クリエイション》鉄インゴット!」


 次に、【創造魔法】で鉄の塊をダンジョンの床に落としていき、それをダンジョンに取り込ませると今度は新たな項目が出現する。

 それは、鉄製の武器の項目が数種類。そして、更に鉄鉱脈という設置物だ。


「こっちも同じように一定の資材と魔力ね」


 一定の素材と魔力、そしてランニングコストの魔力さえあれば、尽きない鉱脈が手に入る。

 そこでふと思い付く。


「世界って少しずつ大きくなっていないかしら」

「ん? 魔女様、どういうことなのですか?」

「いえ、こうやって私の【創造魔法】やダンジョンの機能で魔力から物や魔物を生み出したとする。そうなるとその分だけ世界の質量は多くなるわよね」

「それの何が問題なのですか?」


 私の小難しい話にテトが首を傾げて、逆に聞き返してくる。

 確かに、大した問題では無いかもしれない。

 だが――


「魔力って何なのかしらね? 物質に変換でき、自然現象を引き起こし、それを消費する生命体が居て、そして消滅していく」


 この世界には魔力は必要不可欠だ。

 星や人間、動植物や魔物たちが生態活動と共に発し、消費している魔力とは、本当になんなのだろう?

 自然放出される魔力が気体のように拡散し、 魔法薬などに注ぎ込まれた魔力には水溶性の性質があるとも言え、金属を伝い、蓄えられる性質はまるで熱量のようでもあり、魔物の体内では凝固した魔力が魔石という固体の形を取る。


 前世の私から引き継ぐ知識には物理学などの専門的な知識はないために、具体的な仮説は立てられないが、それでも不思議に思わずには居られなかった。


「うーん。やっぱり、テトも分からないのです! でも、魔女様の魔力は美味しいのです!」

「魔力には味や好みがある、ってのも不思議な性質よね」


 とにかく魔力は不思議なことで一杯である。


 だが私は、哲学者のようにいつまでも考え続ける性質ではないために、不思議だなと、頭の端で思いつつもテトと共に検証のために、あらゆる物を【創造魔法】で創り出してダンジョンに取り込ませていく。


「とりあえず――《クリエイション》」


 思い付く限り、様々な物質や物を生み出して取り込ませる。

 金属鉱石から始まり、砂や砂岩、岩石、宝石、赤土、腐葉土など様々な土地を構成する物質を創造魔法で創り出し、取り込ませていく。

 特に、ミスリルやアダマンタイト、オリハルコンなどの魔法金属や魔晶石、浮遊石などの魔法鉱物を取り込んだ結果、それらの鉱脈を創り出すことができた。

 だが、希少な魔法鉱物の鉱脈の設置には、膨大な魔力が必要となり、ダンジョンコアが蓄えられる魔力保有上限の3000万を軽く超えていた。


 様々な植物の種子とその実物を丸々生み出し、先ほど創り出した惣菜パンの残りやマジックバッグに入っている魔物の死体などを床に置いて、取り込ませれば、設置できる植物が増えて、ダンジョンの階層タイプに草原や森林エリアが追加される。

 ただ、何事も例外があり、試しに世界樹の種や枝葉も取り込ませたが、設置可能なオブジェクトは出現しなかった。

 むしろ、ダンジョンに取り込ませた世界樹の苗木をそのままダンジョンに設置できた。


 この場合は、ダンジョンの力で再生可能なオブジェクトではなくダンジョン内で成長する成育物として存在するようだ。


 また、そのまま素材として利用できない物は、それを分解して別の素材に還元するみたいだ。

 魔物の死体も血と肉と骨に分離でき、その遺伝情報を元に召喚可能な魔物の種類が増えていた。


「もしもダンジョンで死んだ人間が取り込まれた場合は、素材に使われるのかしらね」


 骨を使った魔物には、スケルトンがいるので死体もダンジョンを運用する資源なのかもしれないが、あまり気持ちのいい物ではない。

 その後、テトと共にダンジョンの機能を確認していくが、途中で飽き始めたテトのために、ダンジョンの設置物である大岩を生み出して、剣の試し切りをさせる。


 泥の繭に包まれて進化したテトは、自身の能力だけでなく持っていた魔剣も更に強化されたために、岩石の塊もまるでバターのように切り裂いていく。


「それでも、テトの力じゃ、ダンジョンのこの部屋は壊せないのね」


 ダンジョンコアのある部屋には、一切の傷が付かない様子を見ると、不壊の性質が施されているみたいだ。

 色々とダンジョンについての検証と考察を重ねている内に、とある項目を見つけた。


「【ダンジョンシード】――作成コストは、3億魔力。アホみたいに高いわね」


 どうやら、種のようなアイテムで植えた場所にダンジョンを生み出すことができるアイテムらしい。

 あまりの桁数に思わず数え間違えではないかと思うが、間違いはなかった。


「3億魔力で作れる物だったのね。でも、そんな魔力の余裕なんてないし、ダンジョンも増やすつもりもないからいいか」


 ある意味、ダンジョン作成の最終目的を提示するために、こうして交換できないものが表示されているのかもしれない。

 それか、古代魔法文明が滅ぶ以前の魔力の潤沢な世界ならば、作りやすかったのだろうか。

 それこそ、神々が人間に与える試練としてダンジョンを作ったり、古竜の大爺様や一部の人間たちが自らダンジョンマスターになれた……そんな時代があったのかもしれない。


8月30日にGCノベルズ様より『魔力チートな魔女になりました』5巻が発売されました。

また現在、ガンガンONLINEにて『魔力チートな魔女になりました』のコミカライズが掲載されて、下記のURLから読むことができます。

https://www.ganganonline.com/title/1069

作画の春原シン様の可愛らしいチセとテトのやり取りをお楽しみ下さい。

それでは、引き続きよろしくお願いします。

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GCノベルズより『魔力チートな魔女になりました』7巻9月30日発売。
イラストレーターは、てつぶた様です。
作画、春原シン様によるコミカライズが決定。

魔力チートな魔女になりました 魔力チートな魔女コミック

ファンタジア文庫より『オンリーセンス・オンライン』発売中。
イラストレーターは、mmu様、キャラ原案は、ゆきさん様です。
コミカライズ作画は、羽仁倉雲先生です。

オンリーセンス・オンライン オンリーセンス・オンライン

ファンタジア文庫より『モンスター・ファクトリー』シリーズ発売中。
イラストレーターは、夜ノみつき様です。

モンスター・ファクトリー
― 新着の感想 ―
[気になる点] 素材は300万ではないですか
[一言] 海水や海産物は取り込ませなかったのかな。
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