13話【ある日の虚無の荒野での一日:Sideテト】
テトの一日は、魔女様と一緒に始まるのです。
「おはよう、テト」
「ふへへっ、魔女様、おはようなのです」
魔女様を抱き抱えるようにしてベッドで寝て、目が覚めれば魔女様が優しく腕の中で見上げてくれるのです。
それから魔女様と一緒にベレッタたちの作ってくれたご飯を食べたら、一日が始まるのです。
「テトは、今日はなにをして過ごすの?」
「魔女様は、なにするのですか?」
「そうね。今日は、研究塔の方で調合をしようかと思っているわ」
まだ試していない組み合わせの調合や配分があるのよ、と言う魔女様。
魔女様は、いつも難しいことを考えているのです。
テトは、あんまりよく分からないけど、お手伝いする時、分量を計るのは得意でいつも魔女様に褒められるのです。
その時のことを思い出すだけで、テトは幸せな気分になれるのです。
「魔女様! テトも手伝うのです!」
「えっ? 今回は、ちょっと特殊な素材だから、テトは手伝えないわねぇ。ごめんね」
お手伝いできないと言われて、ちょっと悲しくなるテトに魔女様は、そうだ、と言ってお手伝いを用意してくれるのです。
「昨日、作ったポーションを各村々に届けてくれるかしら? そろそろ、古いポーションとの交換時期だから、補充した方がいいと思うのよ」
ポーションの配達、手伝ってくれる? と魔女様に聞かれたテトは、顔を上げて首を何度も縦に振る。
「テト、頑張るのです!」
「それじゃあ、お願いね」
テトは、魔女様から受け取ったポーションをマジックバッグに入れると、魔女様やベレッタたちメイドさんたちに見送られて【転移門】から大爺様のいる村に行く。
「こんにちはー、なのです!」
「あら、テト様! どうされたんですか?」
「魔女様のお遣いで、ポーション届けに来たのです!」
【転移門】から大爺様のいる村に行けば、天使の子がテトに挨拶をくれる。
「テト様、届けてくださりありがとうございます。それでは、保管場所に案内しますね」
「ありがとうなのです!」
テトは、天使の子に案内されて、竜の村長さんのお家にお邪魔するのです。
「おお、これはテト殿、どうされましたか? 魔女様とは一緒ではないのですかな?」
「魔女様のお遣いなのです!」
元気よく答えると、村長さんはニコニコと嬉しそうにしながら、話を聞いてくれた。
ポーションも受け取ってくれて、お茶と干し芋をくれたので、食べたのです。
竜の村長さんの干し芋は、甘くてモチャモチャしていて美味しいのです。
魔女様がみんなに配ったサツマイモさんから作ったらしいのです。
とても美味しくて全部食べた後に、魔女様の分も食べちゃったことに気づいて、ちょっと悲しい気持ちになったのです。
「テト様が気に入ってくださったみたいですからお土産に少し包みましょう」
「ありがとうなのです!」
お土産の干し芋を貰って、狩りの村の方にも向かう。
ただ、天気も良くて急ぐ必要もないので、【転移門】じゃなくて、歩いて進んでいく。
「こんにちはー、なのです!」
森の中を歩けば、幻獣たちがテトの近くにやってくるのです。
「競争するのですか? それとも力比べなのですか?」
お馬さんの幻獣さんたちとは、森の中で駆けっこを良くするのです。
牛さんの幻獣さんたちとは、真っ直ぐにぶつかり合って、力比べするのです。
その時、前に魔女様がそれを見た時――『まるで金太郎ね。相手は牛だけど』とか『相撲みたいね』とか言っていたのです。
魔女様は、沢山本を読むから、テトが知らないことをいっぱい知っていて凄いのです。
テトは、難しい本を読むと、頭が疲れるのです。
でも、魔女様が声に出して読んでくれる本は大好きなのです。
そんな風に、幻獣さんたちと森でお散歩をしていると、農耕の村にポーションを届け、最後に狩りの村に辿り着く。
「ん? テトじゃないか? 魔女はどうしたんだ? 一緒じゃないのか?」
「今日は、お遣いなのです!」
天使の子のシャエルがテトに話し掛けてきたのです。
前は、魔女様にトゲトゲしていや~な感じだったけど、今はふにゃふにゃになったのです。
魔女様が言うには、丸くなったのです。
太ってないのに、丸くなったって不思議なのです。
「また後で、竜の戦士たちと一緒に手合わせしてくれないか? やっぱり、テトほどの実力者がいると張り合いがあるからな」
「うーん、分かったのです。ポーション置いたらやるのです!」
この村の村長さんにポーションを届けた後、シャエルたちと一緒に訓練する。
テトは、体を動かすのが好きなのでシャエルたちとこうやって打ち合いするの楽しいのです。
天使の子たちは、背中の羽で少し浮いたり、早くなったりするので、一気に近づいてきたり、離れたりして面白い動きをするのです。
「むぅ、空に飛ばれると剣が届かないのですよ~」
「これがあたしたちのアドバンテージだからな。テトも飛べばいいだろ! そら!」
そう言って意地悪なことを言うシャエルだけど、模擬戦にはテトが勝ったのです。
でも、やっぱり空を飛べるのは羨ましいと思うのです。
「次は、某との手合わせをお願いする」
「来るのです!」
竜の人たちは、力が強くて体力も多いので長く打ち合いができて、尻尾を使っての攻撃もあるから、たまにビックリするのです。
「はぁはぁはぁ……やっぱりテトは強い! どうやったらそんなに強くなれるんだ!」
疲れたシャエルが、地面に倒れて何度も呼吸を繰り返す。
他の竜の人たちも同じように思っているのか、テトを見てくる。
だから――
「よく寝て、よく食べるのです! 好き嫌いしないのです!」
胸を張ってそう答えると、それだけか、という目で見られる。
魔女様が言うから間違いないのです!
実際、テトは魔石を沢山食べて強くなっているのです。
「そう言えば、そろそろお昼だけど良いのか?」
「あっ、魔女様とお昼食べるのです! それじゃあ帰るのです!」
テトは、そのまま魔女様のいるお屋敷に走って帰ろうとした時、ここの村の【転移門】を守っているメイドさんに止められて、【転移門】から帰ることになった。
『お帰りなさいませ、テト様』
「ただいまなのです! お腹空いたのです!」
テトがただいまの挨拶をして、食堂に向かおうとすると、門の前に居たメイドさんたちに通せんぼされるのです。
『綺麗好きのご主人様の前に、その恰好のまま出るのは承服しかねます』
「えー、魔女様に綺麗にしてもらうのです~」
『その前に、こちらで着替えとお風呂を』
確かに、みんなと訓練したり、幻獣さんたちと森の中を走ったから色々と汚れているのです。
メイドさん三人に囲まれたテトは、そのままお風呂に連れていかれたのです。
テトなら振り切れるはずなのに、メイドさんたちの熱意が怖くてお風呂で綺麗にされるまで大人しくしているのです。
『ついでに、こちらのお召し物は如何でしょうか?』
「えー、いつもの服でいいのです~」
『先ほど洗濯に出しましたので、これしかありません』
メイドさんたちに着せられたのは、ひらひらのお洋服で慣れないのです。
「むぅ、キックしにくいのです。キックするとパンツが見えて魔女様に怒られるのです」
『テト様、その恰好ではキックは行ないません。お淑やかに過ごすのです』
いつもと違う服に、混乱するテトにメイドさんが色々と教えてくれる。
『テト様。ご主人様の可愛い姿を拝見したいと思いませんか?』
「思うのです!」
『ですが、ご主人様はいつも頑なに我らの服を着用しないのです。ですが、ご主人様の隣に立つテト様が率先して可愛らしいお洋服を身につければ、ご主人様も着替えてくれるはずです』
「そーなのですか?」
『はい。こちら、テト様の服に合わせたペアルックも用意しております。テト様が着ている服とお揃いならば、ご主人様も着てくださるはずです』
「それは、いいことなのです!」
でも、なんだか乗せられているような気がするけど、凄いいいことなのです!
そして、テトは、あることを思いつく。
「テトも着てみたいお洋服があるのです!」
『テト様のリクエストですか? 今後の参考のために伺いましょう』
「前に魔女様と一緒に話したのです。みんなのメイド服が可愛いから着てみたいのです!」
テトがそう言うと、正面にいたメイドさんがその場で膝を突いた。
『ガハッ、無邪気可愛さのテト様が私たちと同じメイド服を所望……尊い』
『更に、ご主人様もメイド服を着ることを同意。これは、ご主人様、テト様、ベレッタ様の三人がメイド服姿で並ぶお姿を見ることができるかもしれません。……耐えるのです、今は耐えるのです』
『お見苦しいお姿をお見せしました。テト様、お昼のご用意はできております』
よく分からないけど、メイドさんたちに案内されて食堂に行ったら、魔女様がテトのお洋服を褒めてくれたのです。
それに、ポーションの配達のお遣いもちゃんとできて、お昼のデザートに美味しい干し芋を魔女様と食べられて沢山の幸せがあった一日なのです。
8月31日に、GCノベルズ様より『魔力チートな魔女になりました3巻が発売されました。
それに合わせてWeb版の魔力チートな魔女になりました6章を毎日投稿したいと思います。
『魔力チートな魔女になりました』は、コミカライズが決定しました。
作画は春原シン様、掲載はガンガン・オンラインの予定となっております。