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12話【冒険者ギルドに辿り着きました。ギルドは意外と優しいようです】


 依頼を終えた人で賑わう冒険者ギルドに、私はライルさんたちと共に入っていく。

 真っ直ぐと迷いなく進むライルさんたちだが、町の外に出る時の荷物はなく、ボロボロになっているジョンさんを見て、周りの冒険者たちがざわめく。


「ライルさん、お帰りなさい。その様子だと、無事とは言えないようですが、どうされました? それとそちらのお嬢さん方は?」


 ギルドの受付嬢。年齢は18前後だろうか、可愛らしい顔立ちをしており、リスのようにクリッとした目が不思議そうに私とテトを見る。


「依頼の報告をしたい。それと彼女たちは、依頼の途中で助けてくれた恩人だ」

「わかりました。それでは報告は別室で受け付けます。そちらのお嬢さんたちは……」

「とりあえず、ギルドに加入して身分証明が欲しいわね。あと、手持ちの物を換金したいわ」

「では、別室でギルドの加入と品物の換金を受け付けます」


 そこで私とテトは、ライルさんと分かれて、別室に案内された。

 新人冒険者よりも依頼を終えた現役冒険者の方が優先されるのか、扱いは雑だ。

 夕方に近づいてきているので、どこかで宿を取って、久しぶりにベッドで寝たい。

 待っている間は、テトも私に甘えるようにじゃれてくるが、背中に押し当てられるおっぱいの柔らかさとテトのいい匂いに私自身も癒やされた。

 そして、別室のソファーが気持ちよくて、私はそのままテトに寄り掛かるように寝てしまった。


「あれれ? 魔女様、お休みなのですか? じゃあ、テトが守るのですよ」


 そんな声が聞こえた気がする。



 SIDE:冒険者三人組



「そうか、オーク・キングの存在を確認したか」

「はい。その偵察の際に、一度交戦し、二度目の交戦でジョンは負傷し、チセの嬢ちゃんたちに助けられてここまで帰ってこられたんだ」


 依頼主であるギルドマスターが俺たちの話を聞き、思案げな表情でいる。


「オーク・キングの討伐にはBランク。それに集落の方には上位種の混じるオークの集団が200か。過去の状況と照らし合わせて、Bランクを主力にCとDランクパーティーを中心に依頼を出す。その時は、お前たちにもしっかりと働いてもらう。それまでに体を休め、装備を整えろ」


 怖面のギルドマスターが、俺たちにもオークの集団の討伐命令を出してくるので、こくりと頷く。

 そうして長い報告が終わり、ふぅと一息吐いたギルドマスターが尋ねてきた。


「ところでお前たちを助けた少女たち、というのは、どのような存在なんだ? 報告によれば、水魔法でジョンを治療し、風魔法でオーク・ウィザードを討伐した魔法使いに、オーク・ウォーリアーの脳天を一撃で叩き割り、土魔法も使える剣士など単独でDランク。場合によってはCランク相当の実力者じゃないのか?」


 真っ先にオーク・ウィザードを狙う判断を見るからに、以前交戦しているか知識として厄介だと知っているかだ。

 それに加えて、稀少なマジックバッグも所持しているので、それだけでも冒険者の目から見て二人の有用性は高い。


「俺たちとしては、嬢ちゃんたち……魔法使いのチセは、帝国の政変で逃げ出した貴族令嬢って感じですね。ただテトの嬢ちゃんは、なんて言うか、騎士らしくもないしメイドらしくもない。なんて言えばいいのか難しいな。けど、悪い子じゃない」

「なんと言うか、世間知らずって感じでした。魔法の腕は高いのに、大銅貨すら知らない。それに見ず知らずの俺に治療をして色々と気を回してくれた優しい子だ。それも森の中での治療費なのに食費含めてたったの銀貨4枚だった。あの傷だと普通に神官に回復魔法を頼むとしたら、それだけで銀貨10枚以上は取られることもある」

「自分たちだって辛いだろうに、優しい子たちだよな」


 そう言って、報告するライルとジョンの兄弟冒険者の言葉にギルドマスターも考える。


「政変で逃げ出したのならば、元貴族でも扱いは平民だ。だが、家から持ち出した物が盗品でないなら買い取るし、実力があろうと女子どもだ。安全性の高い宿を勧めよう」

「ギルマス。助かります」


 俺は、頭を下げるが、ギルドマスターは、ふんと鼻を鳴らす。

 怖面のギルドマスターだが、実は女子どもに優しいのである。



 SIDE:魔女


 気付けば、夕方頃になっていた。

 途中で男性のギルド職員がやってきたが、疲れているだろうからと起こさなかったそうだ。

 そして、流石にそろそろ起こした方がいいと感じたテトによって揺り起こされた。


「魔女様~、起きるのです。魔女様~」

「うん……テト、あと5分~」

「あの人、困っているのですよ~」


 そう言って、私は眠い目を擦りながら目を覚ます。

 どうやら、気付かぬうちに精神的に疲れていたようだ。

 寝ぼけ眼でギルド職員の青年を見る。


「こんにちは。ギルドの登録をしに来たようだけど、大丈夫かい?」


 柔和な男性に対して、ボーッとした頭で頷く。


「……はい、お願いします」


 被りっぱなしのフードを外して、ぺこりと頭を下げると、驚いたように目を見開き、微笑みを浮かべる。


「それじゃあ、ギルドの説明をするね――」


 そうしてギルドの説明だが、簡単に言うとなんでも屋であること。

 ランクが上はSから下はGまであること。

 殺人や暴行、詐欺、恐喝など社会通念的に罪であることをしないこと。

 また罪を犯したら、ギルドの罪業判定の宝玉で調べられるとのことらしい。


「じゃあ、まずはこの書類を書いてね」

「はい」


 書く内容は、名前と得意なことくらいだ。

 そう言えば、初めてこの世界の文字を見るが、なんとなく読み書きができる。

 ただテトは、ペンを持ったまま固まっている。

 ダンジョンコアに囚われた精霊の力を吸収して、言語能力を獲得したが、文字などは習得していないのだ。


「テトの分も私が書くわ……そういえば、ギルドって加入できない種族とか居るの?」

「エルフやドワーフ、ドラゴニュート、獣人とかの種族は、登録できるよ。ただ、そうだねぇ、魔族って呼ばれている種族は、人々に敵対しているから加入は難しいかなぁ」


 人々に敵対しているために、殺人や暴行、恐喝などの先程説明された社会通念的な罪を犯したりするために討伐対象とされることが多い。


「まぁ、人類と共存した魔族はいたりするけど、それは極々少数なんだ。もしかして、彼女は、魔族?」

「分からないわ。ただ、精霊に関する種族というくらいしか分かっていないわ」


 どうやってテトの種族であるアースノイドという新種族を誤魔化すか、場合によってはテトは加入させないという方向を取ろうか、と考えているが、ギルド職員の青年は朗らかに笑う。


「それなら大丈夫だね。エルフは水や風、光の精霊が起源と言われているし、ドワーフは火や土が起源ってされている。ドラゴニュートも人とドラゴンが愛し合った末裔とか言われているから、精霊が起源の珍しい種族やハーフと言われても気にしないよ」


 そう言われて私は、ホッとするが、一変してギルド職員は、テトを気遣うように声のトーンを落とす。


「ただ、人間至上主義の考えが強い地域や国もある。そういうところでは、そうしたことを隠した方が円滑に物事が進むよ」

「……ええ、肝に銘じておくわ」


 私は、神妙に頷き、登録のための用紙を提出する。


「それじゃあ、登録料の銀貨3枚を払えば、ギルドカードを渡すよ」

「すみません。お金は今、無いんです」


 ジョンさんの治療で得た報酬の残りは、銀貨3枚と大銅貨8枚。

 私の分の登録料しかない。


「売りたい物があるらしいから、先に登録して、あとで差し引こうか。それで登録料が払いきれなかったら、ギルドからの貸し付けにしておくね」

「お願いします」

「じゃあ、先に二人にカードを渡すね。カードに魔力を通せば、登録は完了だよ」


 そう説明されて、私とテトは順番に宝玉に手を翳すが、特に罪となることはしていないので青色判定が出る。

 なので、登録料の銀貨3枚を払い、渡されたカードに魔力を通すと、自身の名前が記されたギルドカードとステータスを確認できる。


 名前:チセ(転生者)

 Lv37

 体力420/420

 魔力2815/2815


 スキル【杖術Lv1】【原初魔法Lv3】その他、色々……

 ユニークスキル【創造魔法】


 だいたいこんな感じのシンプルなやつだ。

 そして、隠したい項目を指で擦りながら、隠れろと念じると消えるので、【転生者】という種族項目とユニークスキルの所を消す。


 続いてテトのステータスも同様だが、ゴーレムの核の魔力が体力と魔力量を共存しているので、名前と剣術などの当たり障りのないスキルだけ表示する。


 これで私とテトは、冒険者という身分を手に入れた。

読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
冒険者なんて身分が低い人が登録する割には登録料が銀貨3枚は高い気がする
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